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『特別な人』113

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 相原さんとの初デートは音楽と美味しい食事、そして語らえる相手もいて
思っていた以上に楽しい時間を過ごすことができた。



 こんなに近距離で長時間、洒落た時間を共有したことがなかったので、
朗らかに活き活きと話をする相原さんを見ていて不思議な感覚にとらわれた。



 私はこれまで交際していない男性と一緒に食事をするという経験がなく、
世の中には恋人ではない異性の同僚と一緒に食事をするという経験のある人って
どのくらい居るのだろう? なんて考えたりした。




 もちろん相手のことが好きでデートするっていうのは分かるんだけどね。


 まだまだ相原さんのことは知らないことだらけだけど、彼と話すのは楽しい。


 彼を恋愛対象として見た場合、凛ちゃんのことはさして気にならない……かな。



 だけど凛ちゃんママの関係はかなり気にしちゃうかなぁ~などと、少し後から
オーダーしたワインをチビチビ飲みながらほろ酔い気分でそんなことを考えたりして、
一生懸命話しかけてくれている相原さんの話を途中からスルーしていた。




笑って相槌打ってごまかした。



『ごめんなさぁ~い』



「明日も仕事だから名残惜しいけどお開きとしますか!」



「そうですね。今日は心地よい音楽に触れながら美味しいものをいただいて、
ふふっ……相原さんのお話も聞けて楽しかったです」



「そりゃあ良かった」


 支払いを終え、私たちは店の外へ出た。



「今日はご馳走さまでした。
 でも休日のサポートは仕事なので次があるかは分かりませんけど、
もう今日みたいな気遣いはなしでお願いします」




「分かった。
 休日サポートのお礼は今回だけにするよ。
 さてと、家まで送って行くよ」



「えっ、でもすぐなので」



「一応、夜道で心配だから送らせてよ」



「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて」



「俺たちってさ、お互いの家が近いみたいだし、月に一~二回、
週末に食事しようよ。

 俺、子持ちだからさ、普段飲みに行ったりできないからさ、
可愛そうな奴だと思って誘われてやってくれない?」



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