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『特別な人』105

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「お待たせしました、掛居です」

「休日でお休みのところ、ごめんなさいね」



「いえ、大丈夫です。自宅訪問の件ですが行けます。
 伺う時間とサポート内容、場所、それから滞在時間の目安など
教えていただけますか」




「有難いわ、助かります。
 詳細は後からメールで送るわね。

 掛居さんに担当してもらうのは相原さんなの。
 場所は……」



 私は『相原』という名前を聞いた途端、頭やら耳の機能が
停止してしまったようで、芦田さんの話してる言葉が何も入って来なかった。



 いゃあ~、人を差別するというか、この場合自分の好き嫌いで選別しては
いけないこととは分かっているものの、先月の彼とのエレベーターでの出来事を
思えば、どんな顔をしてサポートに入れるというのだ。



「もしもし?」



「あの、芦田さん、できれば他の人と……つまり芦田さんが訪問する
予定のお宅と替わっていただけないでしょうか」

「……」




「掛居さんは私が受け持つ人とは面識がないし、というのもあるし、
ちょっと恥ずかしいんだけど言っちゃうわね。

 私、独身でしょ、だから男性のお宅へ伺ってサポートっていうのは
恥ずかしくて」




 それを言うなら私も独身、しかも花も恥じらう? まだ20代ですってば。





「あ、掛居さんも独身だけど相馬さんとも親しくしているって聞いてるし、
男性に耐性あるんじゃないかと思って」



 そんなこと誰に聞いたんですかぁ~、保育所勤務なのにぃ~、
噂って怖いぃ~。




「付き合ってるのよね?」


「いえ、付き合ってません」


 えっ、私ってばそんなことになってるの、知らなかったー。
 相馬さんは知ってるのかしら。




「でも親しくしてるのはほんとよね?」



「個人的に親しくしてないつもりですが……。
 そうですね、彼の仕事を手伝ってるので職場では親しくさせて
もらってます」


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