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『特別な人』99

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◇天敵現る

 仕事も順調に多忙を極める中、相方という言い方は不遜かもしれないけど
仕事上のパートナーにも恵まれ仕事そのもの以外のところで
悩まされることなく働けて、仕事大好きな私は充足感に包まれていた。


 そんな状況の中でのこと。

 ちょうど週末に夜間保育を頼まれた日から2週間目の週末のことになる。


 小一時間ほど残業をこなして仕事を終え、1階に降りて来てビルの出入り口に
向かう途中で声を掛けられた。


「掛居さぁ~ん、ちょっとお話させてもらってもいいかしら……」


 誰かと思えば芦田さんだ。

「はい、いいですよ」


 私たちは保育所内で話をした。

 話の内容は、私自身の仕事が残業などなく早めに切り上げられる日があれば
その時に夜間保育のラスト一時間でもいいから保育の仕事を手伝って
もらえないだろうかというものだった。


 週に2回とか1回でも構わないからと。

 芦田さんは最近ホルモンのバランスが崩れるといわれる更年期障害に
悩まされており、特に夕方になると身体が辛くなるとのこと。


 例え、週に一度一時間だけでも(いいから)とお願いされると、とても
断ることなどできなかったし、芦田さんが万が一倒れでもして
夜間保育ができなくなると、子供を預けることができなくて困る人たちが
いるわけで。


 小さなチビっ子たちはどの子も可愛いくて、私は戸惑いながらも
『週一でよければ』と返事をした。


 更年期と戦いながら働き続ける人を少しでも助けることができれば
いいなぁと思った。


 週一の、それも二時間の夜間保育だけじゃ大した助けにもならないと
思うのに芦田さんは喜んでくれた。


 ほんとは今の自分の状況だと週三くらいは可能かもしれない。



 とは言え、最初から頑張り過ぎて続かなくなるっていうのは非常にまずい
悪手になると思うのでまずは週一からと決めた。


 相馬さんにも相談をしてこの先の仕事を微調整しつつ
将来的には週三くらいにできればと考えている。


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