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『特別な人』95

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 相馬は日々案件があり多忙を極めているのだが、花自体はようよう
諸々の事務作業が一段落ついたところでもあり、久しぶりに定時で
帰ることができそうで心は少しウキウキランラン。



 花は声を掛けた相馬から
『お疲れぇ~』
と返され、所属している部署フロアーを出てエレベーターへと向かう。



 自社ビルの1階に降り立ち出入り口に向かうも、昼食時には立ち寄れなかった
チビっ子の顔でも見てから帰ろうと保育所に向かった。


 チビっ子たちは3人わちゃわちゃしながら親を待っていた。

 その側で疲れ気味な芦田が無表情な佇まいでぼーっと座っている。



 私を視界に入れるとほっとしたような困ったような複雑な表情を
醸し出した。




「芦田さん、どうかされました?」

「昼間はぜんぜん大丈夫だったのに、夜間保育に入ってから体調がすぐれなくて……」


「辛そうですね。私仕事終わりなので少し子供たちみてましょうか?
 その間少し横になられてたらどうでしょう」




「ありがとう、そう言っていただけると助かるわぁ~。
厚かましいですけどすみません、ちょっと横にならせてもらいますね。

 あと1時間もするとまみちゃんとななちゃんのママたちのお迎えがあるので
もし起きられなければ子供たちの引き渡しお願いしてもいいかしら」




「わかりました。大丈夫ですよ。

 ただ子供たちをママたちにお渡しするだけで他に申し渡しておく伝言などは
特にないのでしょうか?」




「今回はないわね」


「はい、OKです。ささっ、横になっててください」


「助かります。じゃぁ宜しくお願いします」




 3才4才のお喋りな子供たちと積み木をして待っているとほどなくして
まみちゃんとななちゃんのママたちが迎えに来て、私は彼女たちを見送った。

 残ったのは1才児のかわゆい凛ちゃんだった。


 え~っと、この子のママはもう1時間後になるんだ。



「凛ちゃん何して遊ぼうか……」
 凛ちゃんが私の膝の上にちょこんと座った。



 私はお腹に腕を回して膝を上下に揺らして振動を作り凛ちゃんをあやした。


 遊び相手もみんな居なくなって寂しいよねー。



「絵本読む? 読むんだったら絵本を花ちゃんに持ってきて~」



 私がそう言うと、膝から立ち上がり……なんと、絵本を持って来たよ。

 あなどれんな1才児。
 ……感動した。



 また私の膝にちょこんと腰かけた凛ちゃんを前に絵本を広げ
読み始めようと……。


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