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『特別な人』70

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◇槇村笙子の心情 …… 片思い

 登録している派遣会社からここ建築関係の企業に派遣されてきた
29才という中途半端な年齢の槇村笙子まきむらしょうこが、
どのような経緯でここに流れついたのか。


大学の単位不足が原因で留年してしまい、上手く就活に乗れず、
派遣社員として働いてきた。

 これまで正規雇用の仕事も何度か面接にトライしてきたものの、
採用までには至らず。

 三居建設(株)に入社する前の勤務先は居心地がよくて7年勤めた。

 そちらは周りの男性たちがほとんど既婚者ばかりで出会いもなく
結婚の予定もないという状況で、あと1年もすれば30の大台に乗りそうな
勢いに焦りを持ち始めた頃、ちょうどよかったと言うべきか
なんと言うべきか、親切でやさしくしてくれた上司が異動になってしまい、
新しい上司がやってきた。


 その上司とあとひとり、隣の課工営二課の臨時社員のおばさまが
自分のいる工営一課に異動になった。


 上司とは何気に反りが合わず冷たくされ、二回りは離れていそうな
臨時社員おばさま、森悦子女子とは別々の課だった時には良好な関係だったのに
同じ課になった途端、自分に冷たい態度をとるようになり、彼女は新しく
異動で来た上司とすぐに懇意になった……いや、取り入ったというべきか! 



 私はそれまで課に一人しかいない女性ということで周囲から
甘やかされていたのだけれど、それは異動でいなくなった上司が可愛がって
くれていたからなんだと後から思い知った。


 新しくきた上司が私に冷たいとそれまでやさしかった周囲が同じように
よそよそしくなっていくのが手にとるように分かったからだ。


 だって、私は皆に何もしてない、今まで通り。


 ただ上司に可愛がられなくなっただけ。
 人間不信に陥りそうだった。


 それですっぱりとその住宅サービス(株)を辞めることにした。



 するとすぐに派遣会社から三居建設(株)を紹介され
『こちらの会社は将来正規雇用の道もあるので槇原さんどうでしょうか、
いいと思いますよ』
と勧められたのをきっかけにこちらに転職したのだった。

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