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『特別な人』61

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 花はその日の夜、今回の件で祖父の家を訪ねた。

「私という逸材を一日何もさせず会社から給料を支給させている
今の上司の方針をどう思う? おじいちゃん。

 たぶん普通は長い物には巻かれろで黙っているしかないと思うけど、
経営者一族の端くれとして、こんな悪習はなくした方がいいと
思うんだけど……」


「よう言うた。花の言う通りだ。

 会社の人件費を無駄にしておるな。

 ひとまず今の部署の担当が辞めるまでその忙しい部署の事務補佐として
部署替えをさせようかな。

 花の今の上司は次の異動でどこぞの閑職に飛ばそう。

 まぁ我が社に閑職などあってはならないんだがね。
 下請けにでも飛ばすか! はははっ……。

 今夜中に現場の部署の上に連絡をして、明日からはそこに花の席を
作ってもらうことにしよう。

 花が仕事熱心で儂もうれしいよ。

 花のような頼もしい身内がいておじいちゃんも将来が楽しみだ」


「おじいちゃん、私の話をちゃんと親身になって聞いてくれて
ありがとうございました。私、仕事頑張るわ」



 次の日花が出社すると、すでに現場監督が数名が居並ぶ場所のほど良い場所に
花のデスクが運ばれていた。


 時間外? 朝早くにこの机を運んで移動させてくれた人に
花はちょっぴり申し訳ない気持ちになるのだった。


 それにしても祖父の力が絶大だということを改めて知る花なのだった。


 初めて使った伝家の宝刀は思った以上に強力だった。


 折角貰ったチャ~ンス、おじいちゃん、自分の為一族の為……
仕事頑張るからね。


 その日新しい上司に挨拶をし現場監督をしている社員にも次々と挨拶を
済ませ、花は仕事に取り掛かった。


 この部署の事務仕事は次から次へと休む暇もないぐらい有り、
やりがいのあるものだった。


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