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『特別な人』49

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 この後自分はどんな風に生きていけばいいのだろう。


 これからの身の振り方を考えて数日過ごした後のこと、気晴らしに
電車に揺られて海浜公園にある堤防に来ていた玲子はじっとその場に佇み、
今までのことこれからのことを考えていた。 


 ふと気が付くと考え事をしていたせいか堤防を離れ海浜公園の中程に
戻っていた。

 こんな暑い中を意味もなく歩き回ったりして、いつもの自分らしくない
ことに気付き嫌になった。

 自分らしくいられないものの正体をぼんやりとではあるが
気付き始めていた。

 向阪のアドバイス通り弁護士を介してお詫び行脚もしたけれど、
何とも言えない不安が胸の奥からせり上がってくるのを止められず、
いてもたってもいられない気持が消えないのだ。

「こんなところに一人で、難しい顔をしてどうした?」


 玲子は見ず知らずの男にいきなり声を掛けられてビクっとしつつ、
その男の方へ視線を向ける……と同時に視界に入ってきた周りの風景は、
日没時になったのか太陽がオレンジ色の輝きを放ち地平線の下に
沈み始めているのが見えた。


 そして再度男に視線を戻すと……
「私でよければ話を聞いてやろう」
と声を掛けられた。


 ここはそもそもお弁当を持って来るような場所で周辺には飲食店もなく、
自販機くらいはだだっ広い敷地のどこかにはあるのだろうけれど見渡す限り、
自分たちの視界には見当たらなかった。

 そんなことを考えたのは喉の渇きを覚えたからで、これから
しゃべるのなら、何か飲み物が欲しいと思ったのだ。


 私と見た目40代くらいの男性とは、すぐ側にある石でできた長イスに

少しだけ距離を置いて座り、私は取り繕ったりせずに自分がしてきた

残念なこと、そのせいで何倍にもしてやり返されたこと、相手が

とんでもなく力のある権力者で今頃になって怖くなり正式に謝罪したこと、

けれど『許す』と言われてないことからこの先まだまだ嫌がらせが

続くようなら……『死んだら楽になれるのかな』などと思いながら

海を見ていたのだと告白した。



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