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『特別な人』38
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「お姉ちゃんの知ってる人だよ」
「そんな人いる?」
私は誰よぉ~と頭の中で年頃の男子を思い浮かべたけれど
自分の恋人しか出てこなかった。
従兄たちを思い浮かべてもそもそも皆遠方だし、ご近所さんを探しても
付き合うような人は見当たらない。
「高校か大学の友だち?」とは口にしたものの、私は妹の女友だちの
2人くらいなら見知ってるけど、男友だちがいるのかどうかも
知らないのだから……違うでしょ。
いろいろ考えて一周して私は恐ろしいことに気が付いてしまった。
両親が纏うドヨンとした空気、結婚もしていないのにあっけらかんとして
妊娠しているかもしれないと話す妹の空気感。
「お姉ちゃん、信也さんは私のだからね。
このお腹の中の子の父親は彼だから。
お姉ちゃんがどんなに頑張っても信也さんはお姉ちゃんのものには
ならないの。分かった?」
自分の言いたいことだけを話すと、妹は部屋を出て行った。
あまりのことに私は頭の中が真っ白でしばらく思考停止してしまった。
何がなにやら訳が分からない。
だって信也を自宅に招いたのは2回しかなくて、どこでどうやったら
あの子が妊娠するっていうの!
「まだ蘭子も若いし、それからいくらでも出会いあるわよ。
ねぇ、あなた」
「そうだな、子供ができちゃったならどうにもならんしな」
ねぇ、私の親たちは何を言ってンの?
玲子を叱ることもせず私の恋人を妹に譲るのが当たり前のように
言ったりしておかしくない?
しようがない?
しようがないで済ますつもりなんだ。
最近あまりデートに誘われなくなって距離が……距離感が遠くなったように
感じてたんだけども、こういうことだったのね。
腑に落ちた瞬間だった。
「お父さん、お母さん、今の私の気持ちが分かる?
って訊いても無駄だよね。
分かってるなら絶対私にそんな発言できないよね。
一言では語りつくせない言いたいことはたくさんあるけどひと言だけ……。
玲子は勿論だけど、あなたたちには失望した。
同じ血を分けた娘なのに妹には寛容で私には随分と無慈悲なことを
言うんだね。
もしかして私って橋の下で拾われた子だったりして」
「お姉ちゃんの知ってる人だよ」
「そんな人いる?」
私は誰よぉ~と頭の中で年頃の男子を思い浮かべたけれど
自分の恋人しか出てこなかった。
従兄たちを思い浮かべてもそもそも皆遠方だし、ご近所さんを探しても
付き合うような人は見当たらない。
「高校か大学の友だち?」とは口にしたものの、私は妹の女友だちの
2人くらいなら見知ってるけど、男友だちがいるのかどうかも
知らないのだから……違うでしょ。
いろいろ考えて一周して私は恐ろしいことに気が付いてしまった。
両親が纏うドヨンとした空気、結婚もしていないのにあっけらかんとして
妊娠しているかもしれないと話す妹の空気感。
「お姉ちゃん、信也さんは私のだからね。
このお腹の中の子の父親は彼だから。
お姉ちゃんがどんなに頑張っても信也さんはお姉ちゃんのものには
ならないの。分かった?」
自分の言いたいことだけを話すと、妹は部屋を出て行った。
あまりのことに私は頭の中が真っ白でしばらく思考停止してしまった。
何がなにやら訳が分からない。
だって信也を自宅に招いたのは2回しかなくて、どこでどうやったら
あの子が妊娠するっていうの!
「まだ蘭子も若いし、それからいくらでも出会いあるわよ。
ねぇ、あなた」
「そうだな、子供ができちゃったならどうにもならんしな」
ねぇ、私の親たちは何を言ってンの?
玲子を叱ることもせず私の恋人を妹に譲るのが当たり前のように
言ったりしておかしくない?
しようがない?
しようがないで済ますつもりなんだ。
最近あまりデートに誘われなくなって距離が……距離感が遠くなったように
感じてたんだけども、こういうことだったのね。
腑に落ちた瞬間だった。
「お父さん、お母さん、今の私の気持ちが分かる?
って訊いても無駄だよね。
分かってるなら絶対私にそんな発言できないよね。
一言では語りつくせない言いたいことはたくさんあるけどひと言だけ……。
玲子は勿論だけど、あなたたちには失望した。
同じ血を分けた娘なのに妹には寛容で私には随分と無慈悲なことを
言うんだね。
もしかして私って橋の下で拾われた子だったりして」
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