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Encore*玉手箱はお受けいたしかねま…す?
玉手箱はお受けいたしかねま…す?[2]ー②
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***
【串富】から帰宅した後の攻防は、結果から言うとわたしが勝率を下げることとなった。
――のだけど。
帰宅直後にベッドでじっくりと愛されて、そのあとは約束通りバスルームで念入りに洗われて。
我が家のバスルームはホテルのようなユニットバスではないものの、アキのマンションの半分以下だし壁も薄い。それを考慮してくれたのか、流石の彼もご無体は働かなかったのは良かったけど……。
狭い湯船の中で背中からぴったりと密着して、いたずらするのはやめて欲しい。あと少しでのぼせるところだったから…!
なんとか無事にお風呂から脱出し、水分補給のために二人でペリエを飲みながら留守中にあった出来事の話をしたりしながら、やっとホッと一息。
そんなまったりとした雰囲気の中、アキが唐突に言った。
「明日、行きたいところがあるんだ」
「明日……?」
「うん。出来たら早く出かけたいと思う」
「そう、なんだ……」
視察かな、それとも出張?
アキは相変わらず忙しくしていて、毎週のようにあちこちに行っている。関西支部に詰めている日の方が少ないんじゃないかな。
本社から戻って来たばかりなのにまたほかのところに行くのかと思ったら、やっぱりちょっと寂しい。今日明日は、少しでも一緒に居る時間を増やしたかったけど、お仕事なら致し方ない。
胸の奥がしゅんと萎まったけれど、それはおくびにも出さない。
「遠いの?何時に出る?」
「すごく遠いってほどではないけど……出来たら五時前には出たいかな。いい?」
「う、うん……」
明日はまだ、平日折り返しの水曜日。けれどわたしは公休日なので、いつもよりはのんびりと一緒に朝を迎えられるかな、とこっそり期待していたのだけど――。
そんなに上手くはいかないかぁ……。時期的に忙しいから仕方がないよね。
そう自分に言い聞かせながら、何気ない顔を装って「朝ごはん軽くてもいい?」と訊いてみる。すると「朝食は出先にしようか」と返ってきた。
なぁんだ、朝ごはんも一緒に食べられないのか……。
早く帰ってきてね。――そう言いたい気持ちをグッと堪え、努めて明るい声を出す。
「大変ね。いつ帰ってくる?」
「……ん? 明日中には帰ってくるけど?」
「そうなの?」
朝早い日帰り出張なのね。近日中にはまた会えるのだと思ったら、気持ちと一緒に声も明るくなった。
「じゃあ、明日はアキの部屋で待ってるね」
笑顔でそう言ったら、アキが「えっ!?」とものすごく驚いた顔をした。
てっきり喜んでくれるかと思ったのに、アキの反応が思っていたものと違って焦る。
「あ、えっと……、アキ、忙しいでしょ? わたしなら明日はお休みだし、その方がアキも楽かなと思っただけで……」
ダメならいいの―――そう言おうと思った時、アキがキョトンとした顔で言った。
「なに言ってんの、それじゃ意味がないだろ?」
「は?」
ふたつの目とひとつの口をぽかんと開けたわたしに、彼は至極当然という顔で「静さんも一緒に行くんだよ」と言った。
【串富】から帰宅した後の攻防は、結果から言うとわたしが勝率を下げることとなった。
――のだけど。
帰宅直後にベッドでじっくりと愛されて、そのあとは約束通りバスルームで念入りに洗われて。
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狭い湯船の中で背中からぴったりと密着して、いたずらするのはやめて欲しい。あと少しでのぼせるところだったから…!
なんとか無事にお風呂から脱出し、水分補給のために二人でペリエを飲みながら留守中にあった出来事の話をしたりしながら、やっとホッと一息。
そんなまったりとした雰囲気の中、アキが唐突に言った。
「明日、行きたいところがあるんだ」
「明日……?」
「うん。出来たら早く出かけたいと思う」
「そう、なんだ……」
視察かな、それとも出張?
アキは相変わらず忙しくしていて、毎週のようにあちこちに行っている。関西支部に詰めている日の方が少ないんじゃないかな。
本社から戻って来たばかりなのにまたほかのところに行くのかと思ったら、やっぱりちょっと寂しい。今日明日は、少しでも一緒に居る時間を増やしたかったけど、お仕事なら致し方ない。
胸の奥がしゅんと萎まったけれど、それはおくびにも出さない。
「遠いの?何時に出る?」
「すごく遠いってほどではないけど……出来たら五時前には出たいかな。いい?」
「う、うん……」
明日はまだ、平日折り返しの水曜日。けれどわたしは公休日なので、いつもよりはのんびりと一緒に朝を迎えられるかな、とこっそり期待していたのだけど――。
そんなに上手くはいかないかぁ……。時期的に忙しいから仕方がないよね。
そう自分に言い聞かせながら、何気ない顔を装って「朝ごはん軽くてもいい?」と訊いてみる。すると「朝食は出先にしようか」と返ってきた。
なぁんだ、朝ごはんも一緒に食べられないのか……。
早く帰ってきてね。――そう言いたい気持ちをグッと堪え、努めて明るい声を出す。
「大変ね。いつ帰ってくる?」
「……ん? 明日中には帰ってくるけど?」
「そうなの?」
朝早い日帰り出張なのね。近日中にはまた会えるのだと思ったら、気持ちと一緒に声も明るくなった。
「じゃあ、明日はアキの部屋で待ってるね」
笑顔でそう言ったら、アキが「えっ!?」とものすごく驚いた顔をした。
てっきり喜んでくれるかと思ったのに、アキの反応が思っていたものと違って焦る。
「あ、えっと……、アキ、忙しいでしょ? わたしなら明日はお休みだし、その方がアキも楽かなと思っただけで……」
ダメならいいの―――そう言おうと思った時、アキがキョトンとした顔で言った。
「なに言ってんの、それじゃ意味がないだろ?」
「は?」
ふたつの目とひとつの口をぽかんと開けたわたしに、彼は至極当然という顔で「静さんも一緒に行くんだよ」と言った。
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