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Chapter14*オオカミなんて怖くない!ドラトラだってどんと来い!(※個人の見解です)
オオカミなんて怖くない!ドラトラだっ(以下略)[1]ー⑦
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「音信不通の理由、分かってくれた?」
「うん……」
「訊きたいことは以上ってことでいい?」
「うん……」
「じゃあ、吉野は僕の恋人――てことでいい?」
「………うん」
小さく頷いた瞬間、突然体がふわりと宙に浮いた。
「きゃっ、」
思わず目の前にあるものにしがみ付いた。それが彼の頭だということにすぐに気付いて離れようとしたけれど、わたしを抱えたまま彼がくるくると回り始める。
「うわっ、ア、アキっ…!」
「良かった…!!」
最高に嬉しそうに破顔したアキ。そのまま彼はワルツのステップを踏むように、軽やかな足取りで部屋中を歩き回る。
小さなこどものように抱えられたわたしの目に、部屋の真ん中に置かれた豪華な応接セットや、壁際のシェルフ、大きな全面ガラス窓――エグゼクティブルームに相応しい落ち着いた色合いの立派な調度品が、入れ代わり立ち代わり目に入っては出て行く。
「アキ止まって! 目が回っちゃう!」
アキの回転がピタリと止まった。だけどわたしの視界はまだ止まらない。
ぎゅっと目をつぶって三半規管の機能が回復するのを待っていると、わたしを抱えたままアキがどこかに足を向けたのが分かった。
彼がピタリと止まり、次にふわりとどこかに下ろされる。お尻に冷たく平らな感触がして、ゆっくりと目を開いてみた。
「なっ!」
絶句した。
よもやわたしが尻に敷いているのが、執務机だとは!
「大丈夫?静さん」
言いながらわたしの顔をのぞき込んでくるアキ。
「こ、こ、こ、ここ……」
「ん? ……ニワトリかな?」
――んなわけあるか!
「ここっ! デスクじゃない!」
「そうだけど?」
まったく悪びれずにそう言ったアキに、余計ムキになる。
「お仕事をする大事なデスクの上じゃないの!」
うちの職場では、工場長室でしか見たことのないほど立派なデスクに座っちゃうなんて申し訳なさすぎる! しかも最高マーケティング責任者用なのよ!?
そんなところにお尻をつけるなんて、社畜失格じゃないか!
左右に顔を動かしてよく見てみると、両手を広げてもまったく届きそうにないくらい大きなデスクの天板にあるのは、ラップトップのパソコンとスマホ、内線用電話機とデスクスタンドだけ。他には何もない。
そう言えばわたしが入室した時、彼は『このあと一刻も早く行きたいところがある』と言っていたっけ……。
そのことを思い出して、二重の意味でこんなところに座っている場合じゃないと慌てた。
「わたしもう帰るね! お仕事の邪魔してごめんなさい!」
早口で言いながらデスクから降りようとすると、体の両サイドにアキの手が「タン」と音を立てて突かれた。
「のわっ!」
ちょうどデスクから降りようと前傾姿勢になったところだったから、顔面が彼の胸板にぶつかる形になる。
「イタっ……、てアキ、なにすんの、」
「なんで帰るの?」
「なんでって、それは、」
『お仕事の邪魔になるから』と続けようとしたのに――。
「やっと逢えたんだ。もう少しそばに居て欲しい」
『もう少しそばに』――そのストレートな言葉に胸がキュンと甘く鳴る。
「えっと……」
言うべき言葉をうっかり飲み込んだけれど、ここに座っているのはやっぱりどうかと思う。
座るにしてもすぐそこに立派な専用品がある。それなのにわざわざ彼の仕事机に乗るなんて、まるで「仕事なんてしないでわたしを見て!」と言っているみたいじゃないか。
そういえば、うちのハルもよく家族が読んでいる新聞紙の上や、パソコンキーボードの上にどで~んと寝そべっていたな。
猫なら可愛いけど、ヒト科の女はそれじゃダメ。
恋人のお仕事の邪魔するなんて、女として、いや社会人としてどうかと思う。
とにかく仕事机からすぐに退かねば!
そう思って、「とりあえずここから降りるから手を退けて」と目の前に迫るアキの上半身を押してみたけれど。
「ダメ」
腕をわたしの両側についたまま、耳元でそうひと言。
好みど真ん中な中低音に鼓膜を直に震わされて、首筋がぞくりと痺れる。
何を考えたのか、アキはそのままわたしの耳垂をペロリと舐めた。
「ひゃっ! ちょ、ちょっとなにす、」
「やっぱり甘いな」
「は?」
「静さんが一番甘い」
アキは何かに得心するかのように呟いたあと、わたしの首筋に顔を埋めてくる。
「ちょっ、」
「静さんの匂いだ」
すんすんと鼻を動かされ、くすぐったさに「ひゃっ」と首を竦ませると、今度はそこをペロリと舐められた。
「やっ、」
背中に甘い痺れが走って、一瞬で体から力が抜ける。それを狙ったかのようにグッと体を押され、後ろに倒れかけた。
なんとか両肘をついて頭までべったりと仰向けになることは防いだけれど、圧し掛かるようにわたしの上にいるこの大型ドラネコのせいで、それも時間の問題かもしれない。
くぅ~っ、この甘え上手のドラトラめっ!
「ちょっとアキ、退いてってば」
体勢を保つために両肘をついているから、彼を手で押し返すのは無理。
なんとかこのドラトラ御曹司の暴走を止めないと……こんな超エグゼクティブな机の上に寝っ転がるなんて冗談じゃない…!
ジタバタと足を動かしてみるも効果なし。それどころか、わたしが手を使えないのを良いことに、彼の手がブラウスのボタンをはずし始めた。
「ちょっ、なに、……ん、やっ、」
襟元をくつろげながら、喉元に吸い付かれる。舌を這わせながら彼の唇が下りてくる。
ど、ど、ど、どぉしよっ!!
わたし、この猛獣モードにスイッチ入ったドラネコを、これまで一度だって止められたことがない!
や、やばい……エグゼクティブデスクがどうのこうの言うてる場合ちゃいますぅっ――て、森になってる場合でもない!
えっと、えっと……いったいどうしたらいいの……!
頭の中で絶叫した瞬間、アキの動きがピタリと止まった。
よ、良かった、止まってくれた…!
そうよね。さすがにアキだって、ここがどこだか分かっているはず。
いくらここが自分の部屋だからって、会社でそんなご無体をするはずがない。
ホッと胸を撫で下ろしたとき。
「これ……つけてくれてるんだな」
「え?」
「ネックレス」
指先がくつろげられたブラウスの襟の間をちょんと触れる。
そこには、あの日アキに貰ったネックレスがあった。
「うん……」
「訊きたいことは以上ってことでいい?」
「うん……」
「じゃあ、吉野は僕の恋人――てことでいい?」
「………うん」
小さく頷いた瞬間、突然体がふわりと宙に浮いた。
「きゃっ、」
思わず目の前にあるものにしがみ付いた。それが彼の頭だということにすぐに気付いて離れようとしたけれど、わたしを抱えたまま彼がくるくると回り始める。
「うわっ、ア、アキっ…!」
「良かった…!!」
最高に嬉しそうに破顔したアキ。そのまま彼はワルツのステップを踏むように、軽やかな足取りで部屋中を歩き回る。
小さなこどものように抱えられたわたしの目に、部屋の真ん中に置かれた豪華な応接セットや、壁際のシェルフ、大きな全面ガラス窓――エグゼクティブルームに相応しい落ち着いた色合いの立派な調度品が、入れ代わり立ち代わり目に入っては出て行く。
「アキ止まって! 目が回っちゃう!」
アキの回転がピタリと止まった。だけどわたしの視界はまだ止まらない。
ぎゅっと目をつぶって三半規管の機能が回復するのを待っていると、わたしを抱えたままアキがどこかに足を向けたのが分かった。
彼がピタリと止まり、次にふわりとどこかに下ろされる。お尻に冷たく平らな感触がして、ゆっくりと目を開いてみた。
「なっ!」
絶句した。
よもやわたしが尻に敷いているのが、執務机だとは!
「大丈夫?静さん」
言いながらわたしの顔をのぞき込んでくるアキ。
「こ、こ、こ、ここ……」
「ん? ……ニワトリかな?」
――んなわけあるか!
「ここっ! デスクじゃない!」
「そうだけど?」
まったく悪びれずにそう言ったアキに、余計ムキになる。
「お仕事をする大事なデスクの上じゃないの!」
うちの職場では、工場長室でしか見たことのないほど立派なデスクに座っちゃうなんて申し訳なさすぎる! しかも最高マーケティング責任者用なのよ!?
そんなところにお尻をつけるなんて、社畜失格じゃないか!
左右に顔を動かしてよく見てみると、両手を広げてもまったく届きそうにないくらい大きなデスクの天板にあるのは、ラップトップのパソコンとスマホ、内線用電話機とデスクスタンドだけ。他には何もない。
そう言えばわたしが入室した時、彼は『このあと一刻も早く行きたいところがある』と言っていたっけ……。
そのことを思い出して、二重の意味でこんなところに座っている場合じゃないと慌てた。
「わたしもう帰るね! お仕事の邪魔してごめんなさい!」
早口で言いながらデスクから降りようとすると、体の両サイドにアキの手が「タン」と音を立てて突かれた。
「のわっ!」
ちょうどデスクから降りようと前傾姿勢になったところだったから、顔面が彼の胸板にぶつかる形になる。
「イタっ……、てアキ、なにすんの、」
「なんで帰るの?」
「なんでって、それは、」
『お仕事の邪魔になるから』と続けようとしたのに――。
「やっと逢えたんだ。もう少しそばに居て欲しい」
『もう少しそばに』――そのストレートな言葉に胸がキュンと甘く鳴る。
「えっと……」
言うべき言葉をうっかり飲み込んだけれど、ここに座っているのはやっぱりどうかと思う。
座るにしてもすぐそこに立派な専用品がある。それなのにわざわざ彼の仕事机に乗るなんて、まるで「仕事なんてしないでわたしを見て!」と言っているみたいじゃないか。
そういえば、うちのハルもよく家族が読んでいる新聞紙の上や、パソコンキーボードの上にどで~んと寝そべっていたな。
猫なら可愛いけど、ヒト科の女はそれじゃダメ。
恋人のお仕事の邪魔するなんて、女として、いや社会人としてどうかと思う。
とにかく仕事机からすぐに退かねば!
そう思って、「とりあえずここから降りるから手を退けて」と目の前に迫るアキの上半身を押してみたけれど。
「ダメ」
腕をわたしの両側についたまま、耳元でそうひと言。
好みど真ん中な中低音に鼓膜を直に震わされて、首筋がぞくりと痺れる。
何を考えたのか、アキはそのままわたしの耳垂をペロリと舐めた。
「ひゃっ! ちょ、ちょっとなにす、」
「やっぱり甘いな」
「は?」
「静さんが一番甘い」
アキは何かに得心するかのように呟いたあと、わたしの首筋に顔を埋めてくる。
「ちょっ、」
「静さんの匂いだ」
すんすんと鼻を動かされ、くすぐったさに「ひゃっ」と首を竦ませると、今度はそこをペロリと舐められた。
「やっ、」
背中に甘い痺れが走って、一瞬で体から力が抜ける。それを狙ったかのようにグッと体を押され、後ろに倒れかけた。
なんとか両肘をついて頭までべったりと仰向けになることは防いだけれど、圧し掛かるようにわたしの上にいるこの大型ドラネコのせいで、それも時間の問題かもしれない。
くぅ~っ、この甘え上手のドラトラめっ!
「ちょっとアキ、退いてってば」
体勢を保つために両肘をついているから、彼を手で押し返すのは無理。
なんとかこのドラトラ御曹司の暴走を止めないと……こんな超エグゼクティブな机の上に寝っ転がるなんて冗談じゃない…!
ジタバタと足を動かしてみるも効果なし。それどころか、わたしが手を使えないのを良いことに、彼の手がブラウスのボタンをはずし始めた。
「ちょっ、なに、……ん、やっ、」
襟元をくつろげながら、喉元に吸い付かれる。舌を這わせながら彼の唇が下りてくる。
ど、ど、ど、どぉしよっ!!
わたし、この猛獣モードにスイッチ入ったドラネコを、これまで一度だって止められたことがない!
や、やばい……エグゼクティブデスクがどうのこうの言うてる場合ちゃいますぅっ――て、森になってる場合でもない!
えっと、えっと……いったいどうしたらいいの……!
頭の中で絶叫した瞬間、アキの動きがピタリと止まった。
よ、良かった、止まってくれた…!
そうよね。さすがにアキだって、ここがどこだか分かっているはず。
いくらここが自分の部屋だからって、会社でそんなご無体をするはずがない。
ホッと胸を撫で下ろしたとき。
「これ……つけてくれてるんだな」
「え?」
「ネックレス」
指先がくつろげられたブラウスの襟の間をちょんと触れる。
そこには、あの日アキに貰ったネックレスがあった。
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