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Chapter14*オオカミなんて怖くない!ドラトラだってどんと来い!(※個人の見解です)
オオカミなんて怖くない!ドラトラだっ(以下略)[1]ー⑤
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「さすがに僕も『そんなことしません』って怒ってさ。そしたら『じゃあどんな女性なんだ、おまえの相手は』と父が言うから、」
「言うから!?」
「説明した」
「へ……?」
「僕の好きな人がどんなに素晴らしい人かってこと」
「え……、ま、まさか……その人って……」
「吉野のことだけど?」
「はぁぁぁああっ!!」
クレッシェンドになったわたしの叫び声に、彼はきょとんと丸めた瞳を瞬かせた。小首を傾げて「他に誰がいるの?」と言う。
「ア、アキ……まさかわたしの名前とか所属とかって……」
「もちろん言ったよ。ていうかあの親父、結構しつこくて……あれこれ訊かれて答えているうちに新幹線の最終の時刻が過ぎていて……」
「…………」
「翌朝始発の新幹線でそっちに戻った足で、あなたの家に寄ったんだけど……」と情けなさそうに言うアキに、わたしはしばし絶句。
そしてそのあと全力で脱力した。腰に回るアキの腕が無ければ、その場にへなへなと座り込んでいたと思う。
それならそうと最初に言っておいてよっ!
あの日、あとから見たスマホのメッセージには、十四日の早朝に[今から行ってもいい?]とか[今家の前なんだ]とか[まだ寝てる?]とか[電話に出られない?]とか[今どこ]とかが連発して入っていただけで、前夜の連絡は一切なかった。
だからてっきり、その晩は誰かと一緒に過ごしたと思い込んだのだ。
よもやそれがお父上だったとは…!
まさか、シスコン重傷者の親子喧嘩に巻き込まれていたなんてっ…!
同じようなことを思った記憶がある。あれっていつのことだったっけ……。
でもそんなことより、当麻CEOにわたしのことを知られていたことに驚愕だ。
あれれ……? てことは―――。
「あの時、わたしだってバレてたってこと!?」
またしても叫んだわたしに、アキが「あの時?」と首を傾げる。
「プレゼンの表彰式っ! わたしっ…特別賞を頂いてっ……それでCEOから賞を頂いて……って!」
「どうしたの?」
「もしかしてわたしが特別賞を貰えたのってそのせい……?」
アキの交際相手を見たかったCEOが、その為にわたしに賞を……?
そんな疑念は一瞬にしてアキの言葉で打ち消された。
「それはない。父は――当麻CEOは父親としては全然だけど、経営者としては一流だ。仕事に私情は挟まない」
キッパリと強い口調で言い切ったアキに、ホッと胸を撫でおろす。
そう言えば同じことをアキにも言われたな。きっとプライドを持って責務に当たるところは、父親似なんだな。そう思ったら自然と頬がゆるんでしまう。
「僕も審査の場に居たからそれは間違いないよ」
「……アキも居たの?」
「ああ。静さんのプレゼンもちゃんと聞いてた。関西支部で見た時よりも、更に良くなっていたし、静さんらしく“ビール愛”が聞いているこっちまですごく伝わってきたよ」
「アキ……あの場に居たんだ………」
「ああ。遅くなったけど、“特別CEO賞”おめでとう」
「あ、ありがとう……」
思いがけずアキに褒められて、照れくささからじわっと頬が熱くなる。
朱く染まっているであろう頬を隠そうと下を向こうとした時、あごを掴まれ掬い上げられた。
鼻先が触れ合いそうなほどの距離。目の前にある榛色の虹彩に宿る熱。
ごくりと喉が鳴った。
「僕があなた以外の人を見るなんてあり得ない。それでも信じられないって言うなら、今すぐCEOのところに連れていくけど」
「っ、」
「父に直接訊いたらいい。僕がどんなにあなたのことを好、」
「分かった!分かったからっ!!」
わたしがそう叫ぶと、アキが「それなら良かった」と瞳をゆるめる。つられてわたしも顔をゆるめかけたが、ハッと我に返った。
まだ気をゆるめちゃダメ。
ちゃんと訊こうと決めていたことが、あとひとつ残っている。
「それならどうして、この一週間わたしの電話とメッセを無視したの……? アキと連絡が取れなくなって、わたしがどれだけ……」
思い出すだけで声が湿ってくる。
目頭が熱くなってくるのを堪えようとした唇を噛むと、アキが恐る恐る、というふうに言った。
「ちゃんと説明するけど、信じてもらえるか分からない……」
「は…?」
わざわざそんな前置きをする理由っていったいなに!?
「ていうか……自分でも信じられないんだ……こんなことってあるのかって……そんなことを自分がするなんて……」
アレコレと言い訳を口にするだけで、中々肝心なことを言わないアキに、わたしはしびれを切らした。アキのネクタイを掴み、グイっと引く。
「なんでもいいからさっさとお言い!」
「……落としたんだ」
「は、」
「スマホを落とした」
「はあぁぁぁぁああっ!?」
「言うから!?」
「説明した」
「へ……?」
「僕の好きな人がどんなに素晴らしい人かってこと」
「え……、ま、まさか……その人って……」
「吉野のことだけど?」
「はぁぁぁああっ!!」
クレッシェンドになったわたしの叫び声に、彼はきょとんと丸めた瞳を瞬かせた。小首を傾げて「他に誰がいるの?」と言う。
「ア、アキ……まさかわたしの名前とか所属とかって……」
「もちろん言ったよ。ていうかあの親父、結構しつこくて……あれこれ訊かれて答えているうちに新幹線の最終の時刻が過ぎていて……」
「…………」
「翌朝始発の新幹線でそっちに戻った足で、あなたの家に寄ったんだけど……」と情けなさそうに言うアキに、わたしはしばし絶句。
そしてそのあと全力で脱力した。腰に回るアキの腕が無ければ、その場にへなへなと座り込んでいたと思う。
それならそうと最初に言っておいてよっ!
あの日、あとから見たスマホのメッセージには、十四日の早朝に[今から行ってもいい?]とか[今家の前なんだ]とか[まだ寝てる?]とか[電話に出られない?]とか[今どこ]とかが連発して入っていただけで、前夜の連絡は一切なかった。
だからてっきり、その晩は誰かと一緒に過ごしたと思い込んだのだ。
よもやそれがお父上だったとは…!
まさか、シスコン重傷者の親子喧嘩に巻き込まれていたなんてっ…!
同じようなことを思った記憶がある。あれっていつのことだったっけ……。
でもそんなことより、当麻CEOにわたしのことを知られていたことに驚愕だ。
あれれ……? てことは―――。
「あの時、わたしだってバレてたってこと!?」
またしても叫んだわたしに、アキが「あの時?」と首を傾げる。
「プレゼンの表彰式っ! わたしっ…特別賞を頂いてっ……それでCEOから賞を頂いて……って!」
「どうしたの?」
「もしかしてわたしが特別賞を貰えたのってそのせい……?」
アキの交際相手を見たかったCEOが、その為にわたしに賞を……?
そんな疑念は一瞬にしてアキの言葉で打ち消された。
「それはない。父は――当麻CEOは父親としては全然だけど、経営者としては一流だ。仕事に私情は挟まない」
キッパリと強い口調で言い切ったアキに、ホッと胸を撫でおろす。
そう言えば同じことをアキにも言われたな。きっとプライドを持って責務に当たるところは、父親似なんだな。そう思ったら自然と頬がゆるんでしまう。
「僕も審査の場に居たからそれは間違いないよ」
「……アキも居たの?」
「ああ。静さんのプレゼンもちゃんと聞いてた。関西支部で見た時よりも、更に良くなっていたし、静さんらしく“ビール愛”が聞いているこっちまですごく伝わってきたよ」
「アキ……あの場に居たんだ………」
「ああ。遅くなったけど、“特別CEO賞”おめでとう」
「あ、ありがとう……」
思いがけずアキに褒められて、照れくささからじわっと頬が熱くなる。
朱く染まっているであろう頬を隠そうと下を向こうとした時、あごを掴まれ掬い上げられた。
鼻先が触れ合いそうなほどの距離。目の前にある榛色の虹彩に宿る熱。
ごくりと喉が鳴った。
「僕があなた以外の人を見るなんてあり得ない。それでも信じられないって言うなら、今すぐCEOのところに連れていくけど」
「っ、」
「父に直接訊いたらいい。僕がどんなにあなたのことを好、」
「分かった!分かったからっ!!」
わたしがそう叫ぶと、アキが「それなら良かった」と瞳をゆるめる。つられてわたしも顔をゆるめかけたが、ハッと我に返った。
まだ気をゆるめちゃダメ。
ちゃんと訊こうと決めていたことが、あとひとつ残っている。
「それならどうして、この一週間わたしの電話とメッセを無視したの……? アキと連絡が取れなくなって、わたしがどれだけ……」
思い出すだけで声が湿ってくる。
目頭が熱くなってくるのを堪えようとした唇を噛むと、アキが恐る恐る、というふうに言った。
「ちゃんと説明するけど、信じてもらえるか分からない……」
「は…?」
わざわざそんな前置きをする理由っていったいなに!?
「ていうか……自分でも信じられないんだ……こんなことってあるのかって……そんなことを自分がするなんて……」
アレコレと言い訳を口にするだけで、中々肝心なことを言わないアキに、わたしはしびれを切らした。アキのネクタイを掴み、グイっと引く。
「なんでもいいからさっさとお言い!」
「……落としたんだ」
「は、」
「スマホを落とした」
「はあぁぁぁぁああっ!?」
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