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Chapter14*オオカミなんて怖くない!ドラトラだってどんと来い!(※個人の見解です)
オオカミなんて怖くない!ドラトラだっ(以下略)[1]ー④
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そっか…やっぱりそうだったんだ……。
アキは決して不誠実な人ではない。だからわたしとのことも最初から「遊びのつもり」だったとは思えないし、彼が口にする甘い言葉も本心からだと信じたかった。
だけど恋愛と結婚は別もの。特に彼のような上流社会に生きている人なら尚更。
仮に婚約者なんていないとしても、いずれ同じような上流階級の女性と政略結婚をすることになるのかもしれない。現に、彼の妹さんだって二十一歳という若さで嫁いだのだと言っていたじゃないか。
アキを見つめる瞳がじわりと熱くなる。
彼から一ミリも目を離さないわたしとは逆に、彼はこちらを見ようともしない。
『ごめん』と口にしたきり、黙ったままのアキ。こちらを見ようともしないその態度に、悲しいを通り越して段々と腹が立ってきた。
「もうっ、なんなの!? 他のひとと一緒に居たなら居たってハッキリ言ってよっ!」
「……っかだ」
「なに!? 聞こえない!」
「実家にいた」
「は!?」
「バレンタインの前の日、僕は実家に泊ってた」
「……うそ。言いにくいからってそんな見え透いた嘘をつかれくらいなら、本当のことを言ってもらった方が何倍もマシだわっ…!」
わたしは嘘をつかれることが何より嫌い。
「嘘じゃない」
そう言いながらわたしの方へ顔を戻したアキの表情は、ちょっとひと言では表せない不思議なものだった。
怒っているようでもあり、嬉しそうでもあり、情けなさそうでもあり。
複雑すぎて全然表情から気持ちが読み取れない。
わたしが眉間にシワを寄せると、アキはしぶしぶ口を開いた。
「バレンタインの前日……昼間に突然妹からメッセージが来て……お菓子を作ったから実家に送っても良いかって……」
よその家に嫁いでいる妹さんが、バレンタインのお菓子を作ったから送りたい。うん。そういうことは普通にあることよね。
「……それで実家に?」
「……うん。その日の午後からの会議をフルモードで終わらせて、夜の予定をリスケして、夕方の新幹線に飛び乗った」
「夜からの予定……」
「関酒連の会長代行と事務局長との飲み」
「ぶっ……、飲みっていうか接待でしょそれ! ドタキャンなんてして大丈夫だったの!?」
『これだから御曹司は!』とか思われて軋轢が生じて、今後の会社の先行きが不安になったりしないものだろうか……。
「大丈夫。相手は昔から顔見知りのおっさんたちで、まるっきり知らない相手というわけじゃなかったし。それに、連絡したら向こうもちょうど都合が悪くて別の日に変えて欲しいってさ。でも正直、おっさんたちと飲む酒より、美寧の作ったチョコマフィンの方が絶対いいに決まってる」
どうやら妹さんがくれたのは、チョコマフィンのようだ。
「……で? 新幹線に飛び乗った、と」
「う、うん……妹から父の分も受け取ったからついでに家に届けて……そのあと新幹線でその日のうちに戻ってくる予定だったんだけど……」
「だったんだけど…?」
「父と言い合いになって……」
「は……?」
「『突然三日も休暇を取って私に仕事を押しつけたんだから、その分の成果は上げてきたのだろうな』って言われて……」
「……アキ、CEOに仕事押し付けて休んだの?」
「……まぁそれは……結果としてそういうことになったかな」
「それで怒られて喧嘩に?」
「いや、別にそのことは嫌味を言われただけで何も」
「じゃあいったいなんで……」
アキだって人の子。そりゃ親子喧嘩くらいするかもしれないけれど、基本的に “優等生”然とした彼が、いったいどうしてCEOと喧嘩だなんて――。
じっと見つめていると、アキは片手で自分の口元を覆って、言いづらそうにしながらもおずおずと口を開いた。
「僕が黙ったままでいたら、『おまえあての釣り書きがあるから目を通しておきなさい』と言われて」
「えっ…!」
“釣り書き”ってことは、お見合い!?
アキはお見合いをすることになったってこと!?
これ以上ないくらい両目を見開いて固まるわたしを見て、背中に回る腕にぎゅっと力が込められる。
「『釣り書きには目どころかいっさい手を触れることもしません。申し訳ありませんが父さんからお相手にお返し願います』……そう言った僕に、父は『じゃあ、おまえが自分で相手を見つけてきたのか』と」
「え、」
「僕が『はい』と言ったら、『それが本当ならすぐに連れて来なさい』って、」
「えぇっ!!」
「父は僕がお見合いをしたくないから適当なことを言っていると思ったんだろう。そのことが分かり過ぎるくらい分かったから、僕も少しムキになってしまって……」
「ど、どうしたの……?」
「『相手の方にも都合というものがありますので、いきなり「今すぐに」なんて言っても無理でしょう』って返したんだ。そしたら……」
「そしたら!?」
「父は『見合いを断るために適当に相手を見繕ってもダメだからな』って」
「わぁ……」
確かにアキならそれくらいやりそうな気がする。品行方正な御曹司の顔の下に、結構腹黒い策士な部分を隠し持っている。それをCEOはちゃんと分かっているということ。やっぱり父親なんだなぁとも思う。
アキは決して不誠実な人ではない。だからわたしとのことも最初から「遊びのつもり」だったとは思えないし、彼が口にする甘い言葉も本心からだと信じたかった。
だけど恋愛と結婚は別もの。特に彼のような上流社会に生きている人なら尚更。
仮に婚約者なんていないとしても、いずれ同じような上流階級の女性と政略結婚をすることになるのかもしれない。現に、彼の妹さんだって二十一歳という若さで嫁いだのだと言っていたじゃないか。
アキを見つめる瞳がじわりと熱くなる。
彼から一ミリも目を離さないわたしとは逆に、彼はこちらを見ようともしない。
『ごめん』と口にしたきり、黙ったままのアキ。こちらを見ようともしないその態度に、悲しいを通り越して段々と腹が立ってきた。
「もうっ、なんなの!? 他のひとと一緒に居たなら居たってハッキリ言ってよっ!」
「……っかだ」
「なに!? 聞こえない!」
「実家にいた」
「は!?」
「バレンタインの前の日、僕は実家に泊ってた」
「……うそ。言いにくいからってそんな見え透いた嘘をつかれくらいなら、本当のことを言ってもらった方が何倍もマシだわっ…!」
わたしは嘘をつかれることが何より嫌い。
「嘘じゃない」
そう言いながらわたしの方へ顔を戻したアキの表情は、ちょっとひと言では表せない不思議なものだった。
怒っているようでもあり、嬉しそうでもあり、情けなさそうでもあり。
複雑すぎて全然表情から気持ちが読み取れない。
わたしが眉間にシワを寄せると、アキはしぶしぶ口を開いた。
「バレンタインの前日……昼間に突然妹からメッセージが来て……お菓子を作ったから実家に送っても良いかって……」
よその家に嫁いでいる妹さんが、バレンタインのお菓子を作ったから送りたい。うん。そういうことは普通にあることよね。
「……それで実家に?」
「……うん。その日の午後からの会議をフルモードで終わらせて、夜の予定をリスケして、夕方の新幹線に飛び乗った」
「夜からの予定……」
「関酒連の会長代行と事務局長との飲み」
「ぶっ……、飲みっていうか接待でしょそれ! ドタキャンなんてして大丈夫だったの!?」
『これだから御曹司は!』とか思われて軋轢が生じて、今後の会社の先行きが不安になったりしないものだろうか……。
「大丈夫。相手は昔から顔見知りのおっさんたちで、まるっきり知らない相手というわけじゃなかったし。それに、連絡したら向こうもちょうど都合が悪くて別の日に変えて欲しいってさ。でも正直、おっさんたちと飲む酒より、美寧の作ったチョコマフィンの方が絶対いいに決まってる」
どうやら妹さんがくれたのは、チョコマフィンのようだ。
「……で? 新幹線に飛び乗った、と」
「う、うん……妹から父の分も受け取ったからついでに家に届けて……そのあと新幹線でその日のうちに戻ってくる予定だったんだけど……」
「だったんだけど…?」
「父と言い合いになって……」
「は……?」
「『突然三日も休暇を取って私に仕事を押しつけたんだから、その分の成果は上げてきたのだろうな』って言われて……」
「……アキ、CEOに仕事押し付けて休んだの?」
「……まぁそれは……結果としてそういうことになったかな」
「それで怒られて喧嘩に?」
「いや、別にそのことは嫌味を言われただけで何も」
「じゃあいったいなんで……」
アキだって人の子。そりゃ親子喧嘩くらいするかもしれないけれど、基本的に “優等生”然とした彼が、いったいどうしてCEOと喧嘩だなんて――。
じっと見つめていると、アキは片手で自分の口元を覆って、言いづらそうにしながらもおずおずと口を開いた。
「僕が黙ったままでいたら、『おまえあての釣り書きがあるから目を通しておきなさい』と言われて」
「えっ…!」
“釣り書き”ってことは、お見合い!?
アキはお見合いをすることになったってこと!?
これ以上ないくらい両目を見開いて固まるわたしを見て、背中に回る腕にぎゅっと力が込められる。
「『釣り書きには目どころかいっさい手を触れることもしません。申し訳ありませんが父さんからお相手にお返し願います』……そう言った僕に、父は『じゃあ、おまえが自分で相手を見つけてきたのか』と」
「え、」
「僕が『はい』と言ったら、『それが本当ならすぐに連れて来なさい』って、」
「えぇっ!!」
「父は僕がお見合いをしたくないから適当なことを言っていると思ったんだろう。そのことが分かり過ぎるくらい分かったから、僕も少しムキになってしまって……」
「ど、どうしたの……?」
「『相手の方にも都合というものがありますので、いきなり「今すぐに」なんて言っても無理でしょう』って返したんだ。そしたら……」
「そしたら!?」
「父は『見合いを断るために適当に相手を見繕ってもダメだからな』って」
「わぁ……」
確かにアキならそれくらいやりそうな気がする。品行方正な御曹司の顔の下に、結構腹黒い策士な部分を隠し持っている。それをCEOはちゃんと分かっているということ。やっぱり父親なんだなぁとも思う。
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