あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお断りいたします。

汐埼ゆたか

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Chapter14*オオカミなんて怖くない!ドラトラだってどんと来い!(※個人の見解です)

オオカミなんて怖くない!ドラトラだっ(以下略)[1]ー③

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「ごめん……またしてもカッとなってちゃんと確認もせず決めつけて……あなたのことになると、僕は途端に冷静さを失ってしまう……自分がこんなに狭量ダメヤツだったなんて……」

自分の顔を片手で覆って、そう言ったアキ。あまりの意気消沈ぶりに、見ているこっちも申し訳なくなってきた。

「わたしだって、きみが森とバレンタイン一晩過ごしたって勝手に勘違いして、話も聞かずに逃げ出してごめんなさい。あの時ちゃんと話を聞いていたらこんなことにならなかったのにって、ずっと後悔してた。今度こそちゃんとそれを謝って、アキにもう一度わたしのことを見て欲しいって……そう言いにきたの」

「僕たち、同じように勘違いしていた?」
「うん……そういうことになる……わよね」
「前にもこういうことあったよな……」
「………」

鉄板焼きを食べたあの日、お互いの勘違いをひとつひとつ解いていった時のことを思い出した。

まったくもってその通り。またしてもお互いの勘違いからすれ違って喧嘩をするなんて、進歩がないにもほどがあるでしょ。
そう思ったら我ながらおかしくて、「ふふっ」と笑い声が漏れた。

「吉野」

急に名前を呼ばれて、ドキッと胸が跳ねた。見上げるとアキが真剣な表情でわたしを見下ろしている。
彼は片手をわたしの頬に当てた。もう片方の手はずっと腰に回されたままだ。

「じゃあ、あなたはまだ僕の恋人?」

小首を傾げて顔をのぞき込まれて、頬がにわかに紅潮する。うつむきたくても頬に添えられた手が許してくれない。視線をさ迷わせたわたしは、覚悟を決めてアキを見上げた。

「まだ話は残ってる……全部ハッキリしないとアキとは一緒にいられない」
「……どういうこと」

不機嫌な低い声。きっと『一緒にいられない』というわたしの言葉に反応したのだろう。自分でも厳しい言い方だとは分かっていた。

でもわたしは最初から、『アキに会えたらこうしよう』と考えていたことがある。

まずは謝罪。自分が悪かったことをきちんと謝ること。許してもらえるかどうかは分からないけれど、それだけはしないといけないと思っていた。

その次に、どうしても頭の中から追い出すことのできない疑念を本人に直接訊くこと。

それは元カレの斎藤の時にわたしがやらなかったこと。自分が傷つくことが怖くて、物わかりの良いふりをして逃げ出した。その結果、長い間失恋を引きずることになってしまったのだと思う。

だから今度こそ、全部を知ったうえで別れを受け入れたい。

たとえボロボロになっても粉々に砕け散ったとしても――。

わたしはグッと歯を食いしばり、眉をひそめているアキの瞳をしっかりと見つめて口を開いた。

「アキに訊きたいことはふたつ。まず、あの日――バレンタインの前日の夜。森と過ごしたんじゃなかったら、いったいどこにいたの…? わたし、アキのホテルの部屋で待っている時、きみに何かあったのかもってずいぶん心配したのよ?」
「それは……」

さっきとは打って変わって、何か言いづらそうに言い淀んだ彼に、わたしの頭にひとつの考えが湧き上がった。
それはこの一週間、何度も考えては打ち消していた予感。

「………なの?」
「え、なに……」
「本当は……アキにはわたしとは別に…特別なひとがいるんじゃない……? その人から先にバレンタインを貰ったんじゃ……」
「え……?」
「きみほどの立場の人なら、婚約者や許婚が居ても全然おかしくない……わたしとはほんの一時いっときのアバンチュールなのかもって、」
「そんなわけないだろ……」

怒りを滲ませた声に、思わずピクリと肩が跳ねる。

「そんないい加減な気持ちであなたと付き合ったつもりはない! 仮に婚約者がいたとして、それで別の女性に手を出すような男だと……僕はあなたにそんなふうに思われてたのか……」
「ちがっ……、」

わたしだって、そんなふうに考えたくなんてなかった!

アキのこと、不誠実な人だなんて思えないし思いたくない。
自分が好きになった相手ひとのこと、本当は最後まで信じたいの…!

だけど――。

「だけどじゃあどうして…!? どうしてバレンタインの前の夜、帰ってこなかったの!? この一週間……アキと連絡が取れなくなってから、その時のことばかり考えてた。あの夜、アキはいったいどこにいたのかなって……」

わたしが訊きたかったことのひとつ。それは“バレンタイン前夜イブの不在”だ。

アキは、本来ならわたしと付き合うなんてありえない雲の上――いやそれより遥か彼方、月の人だ。
月にかえるかぐや姫を引き留めるのは帝でも不可能だったのに、わたしなんかがそれを出来るはずがない。

たとえ彼がどんなに誠実な人であろうとも。

『いつかその日が訪れる』

彼と付き合い始めてから、その考えはどんなに振り払おうとしても、頭の片隅にこびりついたみたいに離れなかった。

「婚約者はいなくても、アキはいつかわたしよりもっと素敵な人と出会ってそのひとのところに行ってしまうかもって、それが今なんじゃないかって…!」
「そんなことは――」
「じゃあ、あの日、いったいどこに居たの!? 教えてよアキ!」

返答次第では、森ちゃんにお世話になってやるんだから……!

まさかあの手のかかる後輩に、自分の方が手間をかける日が来るかもしれないなんて!(世も末すぎる)

だけど彼女の存在がこんなにも心強いと思ったことは、今まで一度だってない。(大分失礼)

それまで眉間をきつく寄せて不機嫌そうな顔をしていた彼は、わたしが喋り終える頃には驚いた顔になり、そして今はなんだか気まずそうに目を泳がせている。わたしはそれをじっと黙って見つめていた。

「………ごめん」

その小さなつぶやきに、大きな衝撃が走った。
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