悪役ですが、死にたくないので死ぬ気で頑張ります!!!

モツシャケ太郎

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第三章 前日譚

隣人

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カワイイ
……可愛い!?誰が!? 

「あはは。シェフレラ君も、サザンカのこと可愛いって思ってたんだ。奇遇だね?」 

シェフレラ君のことを見て笑顔で話しているキールだが、なんだか声のトーンが低い。 

ていうか可愛いって俺のことか!?話の流れ的にそうかなとは思ったけど、まさか本当に俺のことだったとは。
可愛い…そうか今のが可愛いのか…

…でも可愛いのは俺っていうより、 

「キールの方が可愛いと思うけどなあ」 


キラキラと輝く太陽のように優しい金髪も、菫のように可愛らしい紫色の瞳も、何より俺の事を見つめる表情が。

少し顔を赤くしてボソッとそう言った。その呟きを聞き逃さなかったキールは、先程までシェフレラ君の方を見ていたが、勢いよくこちらを向いた。ぐわんっと効果音が着きそうなほどに勢いが凄かった。 

「サ、サザンカ…そんな可愛い顔でかっこいいこと言うのやめて。」 

そう言ってジト目でこちらを見るキールは、やはり俺なんかよりも可愛い。 

「ふふっ。キール、照れてるの?やっぱり可愛いなあ。」 

なんだかほのぼのとした気持ちになって思わずニコニコしてしまう。 

「サザンカは自分の可愛さをわかってるのか?」 

俺のニコニコ顔を見てキールは何か呟いていたけど、よく聞き取れなかった。その後も不満そうに口篭っているキールを俺は生暖かい目で見つめていた。 

弟に対して持つ感情とは似ているようで違う、この庇護欲をそそる感じ。学校の後輩とかともなんか違うな。 

「ゴホン。2人とも、寮が見えてきたぞ。」 

シェフレラ君が咳払いをしてそう教えてくれた。ちなみにシェフレラ君はキールから君とは仲良くなれそうな気がするよ、と敬語は取り外されてしまったのだ。 

まあゲームではキールとシェフレラ君は側近と主という関係だったし、仲良くなるのも分かる。 

だけど、その言葉を聞いて、なんだか胸の奥の方が重くなった気がした。俺の友達が俺の友達を取ったみたいで嫌だったのだろうか?それとも、ゲームの2人に近づいているみたいで不安になったのだろうか。自分でもよく分からないけれど。 

そんなこんなで考えているうちに、2つの洋館に到着した。1つは全体的に赤色の洋館で、もう1つは全体的に青色の洋館だった。 

寮は、男子寮と女子寮で建物が分けられている。2つの建物の距離は遠くない。
貴族の男女は近すぎる関係は婚姻前交渉とみなされ、世間からの評判は当然ながら悪くなる。だが、学校では将来の婿や嫁を探す者も少なくない。貴族だけではなく平民も入学できるので、学校ではごく稀に身分差の恋愛もあるそうだ。身分差の恋は兎も角、優秀な者を嫁や婿にするためにこの学校に入学する生徒も珍しくないので、"学校側の配慮"で、男女の寮は距離が遠すぎない場所にある。
"学校側の配慮"というものの中には、所謂お見合いというのものもある。婚約者が居ない生徒達で花開く会バッズ・スウェルというお茶会が3ヶ月に1度催される。 

そこでふと、俺の将来について考える。ゲームのサザンカの最期は、明るいものではなかった。だから、今までは結婚なんて全く眼中になかった。でも、ストーリーを変えられる可能性が出てきた。


俺も、一人の人間として誰かを愛し、そして愛される未来を考えてもいいのだろうか。前世は恋人なんていなかったから、今世は絶対作ってやろう。 


そう決意をした俺は、2人と別れ、自分の部屋に向かった。今朝、自分の荷物をこの部屋に運んだ時には既に隣人の姿はなかったため、まだ隣人の姿は見ていない。 

恐らく努力家な人なのだろう。隣人のベッドには剣が置かれていた。朝から鍛錬でもしていたのかもしれない。


いい人だといいなあ。と期待に胸を膨らませながら部屋をノックする。



………返事がない。
仕方なく扉を開ける。 

「し、失礼します。」


恐る恐る中に入る。入ってすぐに共有スペースがあり、その奥にベッドスペースがある。そして手前にはユニットバスがある。辺りを見渡すが、人の気配はない。
誰もいないみた───··

と、思っていたらパァン!と横から大きな音がした。


「わあ!!!びっくりしたか!?初めまして!!!俺、スイレンって言うんだ!よろしくな!!!」 

扉の裏から、クラッカーを持った少年が俺の目の前に現れた。
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