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第三章 前日譚
御守りのピアス
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キールの言葉を聞いて、俺は反省してキールに謝った。
ごめんね、と言ったら謝らないでありがとうって言って欲しいなと言われ、また胸の当たりがキュンとした。
キュン?
不整脈かな?俺は不思議に思いつつも、シェフレラ君とキールと一緒に帰路を辿っていた。
俺たちが今住んでいるのは、精霊魔術総合学校付属の寮だ。キールが普段住んでいた王宮も、俺が寝泊まりさせてもらっていた騎士団の訓練場も、王都にある。精霊魔術総合学校が位置しているのは王都から遠く離れた場所なので、寮に入ることにしたのだ。
シェフレラ君の家、エンゼルランプ家もどうやら王都にあるらしいので彼も寮通いだ。
俺とキールは途中入学だが、同じ部屋にはならなかった。学校の方針で、高位貴族同士で同じ部屋ではなく、下級貴族と同室になるようになっているからだ。
平等を謳っているこの学校では、皇族も寮に入ったら学校の方針に従い下級貴族と同室になるのだ。警護の心配もあるので、皇族は大体が防御魔法が付与されているアクセサリーなどを身につけて生活しているらしい。
俺の耳に着いているアメジストのピアスに触れる。これは、俺たちが入学準備をする時にキールが贈ってくれたものだ。そして、俺だけ貰うのも申し訳ないので、キールの耳にも俺からのサファイアのピアスがはめられている。
本当は今朝の暴力沙汰になった時でもピアスの効果が発動するはずだったのだが、俺はつけていなかった。
「そういえばサザンカ、俺があげたピアスさ、剣の訓練中につけてなかったの?あれがあれば怪我なんてしないよね?」
キールには、俺が怪我をしたのは剣の訓練中の事故だということにしている。俺のせいで、要らぬ心配をかけたくないからだ。
「……もしかして、あれ、気に入らなかった?」
キールが思いもよらないことを口にしたので慌てて弁明する。
「違うよキール!気に入らなかったんじゃないんだ。寧ろ、…寧ろ逆でほんとに嬉しかったんだ。」
人にプレゼントを贈られることがこんなに幸せなことだと知らなかった。前世では、弟妹達には俺がクリスマスにプレゼントをあげて、貰ったことはなかった。それが不満なんてことはなかったけど、俺もプレゼントを贈られることに、どこか憧れていたのかもしれない。
「そうなんだ。良かった、気に入らなかった訳じゃないんだね。じゃあ、なんでピアスをつけていなかったの?」
…やっぱり聞かれるよな。本当はあまりこの理由を言いたくない。だってこの理由が、なんだか遠足に行く前日に眠れなくなってしまう幼児みたいな理由だから…
「ぇっと、……恥ずかしい限りなんだけど、…実は貰ったプレゼントがほんとに嬉しくてね。汚したくなくて、今日はつけてなかったんだ。…キールが贈ってくれたあのピアスは、御守りとしてちゃんと鞄の中には入ってたよ。
ま、まあつけてなかったせいで怪我しちゃったんだからほんとにお馬鹿なことしちゃったよね…」
恥ずかしくて口篭りながら吐露する。今、俺の顔は真っ赤だろう。うぅ、絶対笑われるよな。でも言わなきゃ。
「だ、だから今は付けてるよ!つけなきゃ意味ないってわかったしね!?あはは!」
半ば強引に話を終わらせる。キールとシェフレラ君の反応が怖いぃ。
何か言うなら早く行ってくれえ…
「…可愛い」
キールとシェフレラ君の声が重なった。
…カワイイ?
ごめんね、と言ったら謝らないでありがとうって言って欲しいなと言われ、また胸の当たりがキュンとした。
キュン?
不整脈かな?俺は不思議に思いつつも、シェフレラ君とキールと一緒に帰路を辿っていた。
俺たちが今住んでいるのは、精霊魔術総合学校付属の寮だ。キールが普段住んでいた王宮も、俺が寝泊まりさせてもらっていた騎士団の訓練場も、王都にある。精霊魔術総合学校が位置しているのは王都から遠く離れた場所なので、寮に入ることにしたのだ。
シェフレラ君の家、エンゼルランプ家もどうやら王都にあるらしいので彼も寮通いだ。
俺とキールは途中入学だが、同じ部屋にはならなかった。学校の方針で、高位貴族同士で同じ部屋ではなく、下級貴族と同室になるようになっているからだ。
平等を謳っているこの学校では、皇族も寮に入ったら学校の方針に従い下級貴族と同室になるのだ。警護の心配もあるので、皇族は大体が防御魔法が付与されているアクセサリーなどを身につけて生活しているらしい。
俺の耳に着いているアメジストのピアスに触れる。これは、俺たちが入学準備をする時にキールが贈ってくれたものだ。そして、俺だけ貰うのも申し訳ないので、キールの耳にも俺からのサファイアのピアスがはめられている。
本当は今朝の暴力沙汰になった時でもピアスの効果が発動するはずだったのだが、俺はつけていなかった。
「そういえばサザンカ、俺があげたピアスさ、剣の訓練中につけてなかったの?あれがあれば怪我なんてしないよね?」
キールには、俺が怪我をしたのは剣の訓練中の事故だということにしている。俺のせいで、要らぬ心配をかけたくないからだ。
「……もしかして、あれ、気に入らなかった?」
キールが思いもよらないことを口にしたので慌てて弁明する。
「違うよキール!気に入らなかったんじゃないんだ。寧ろ、…寧ろ逆でほんとに嬉しかったんだ。」
人にプレゼントを贈られることがこんなに幸せなことだと知らなかった。前世では、弟妹達には俺がクリスマスにプレゼントをあげて、貰ったことはなかった。それが不満なんてことはなかったけど、俺もプレゼントを贈られることに、どこか憧れていたのかもしれない。
「そうなんだ。良かった、気に入らなかった訳じゃないんだね。じゃあ、なんでピアスをつけていなかったの?」
…やっぱり聞かれるよな。本当はあまりこの理由を言いたくない。だってこの理由が、なんだか遠足に行く前日に眠れなくなってしまう幼児みたいな理由だから…
「ぇっと、……恥ずかしい限りなんだけど、…実は貰ったプレゼントがほんとに嬉しくてね。汚したくなくて、今日はつけてなかったんだ。…キールが贈ってくれたあのピアスは、御守りとしてちゃんと鞄の中には入ってたよ。
ま、まあつけてなかったせいで怪我しちゃったんだからほんとにお馬鹿なことしちゃったよね…」
恥ずかしくて口篭りながら吐露する。今、俺の顔は真っ赤だろう。うぅ、絶対笑われるよな。でも言わなきゃ。
「だ、だから今は付けてるよ!つけなきゃ意味ないってわかったしね!?あはは!」
半ば強引に話を終わらせる。キールとシェフレラ君の反応が怖いぃ。
何か言うなら早く行ってくれえ…
「…可愛い」
キールとシェフレラ君の声が重なった。
…カワイイ?
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