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第三章 前日譚
スイレン
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スイレン…どこかで聞いたことがあるような気がする。会ったことあったかな?でもスイレン君は俺を知らないみたいだ。
「えぇと、……スイレン、君?」
俺がそう問いかけると、スイレン君はニカッと笑って握手をしてきた。
「うん!俺のことはスイレンでも君付けでも好きなように呼んでくれたまえ。
あとあと俺、平民だから家名ありましぇん!どぞどぞ、よろぴくー。」
なんだか個性的で面白い子だなーと思って俺も手を握り返し、握手をする。
こちらこそよろしくね、と返事をするとスイレン君が何かに気がついたように、ん?と首を傾げた。すると、大変なことに気づいたかのような顔になっている。
「ん?ちょっ、ちょっと待ちたまえ!?」
どうしたのだろうか。さっきまで元気いっぱいだったはずのスイレン君がどんどん顔色が悪くなってきている。その顔色は、死刑宣告をされたかのようだ。
「平民の俺様と同室ということは、チ、チミは貴族サマなのか!?な、なんてこった!!!!俺打首!?」
悲鳴をあげるかのように俺を涙目で見てくるスイレン君。その顔は、本当に罰せられると思っているのかもしれない、真っ青だ。
「───···ぶっ!」
あまりの変わりぶりに思わず吹き出してしまった。ひとりコントみたいだとなんだか面白くなってしまう。だってさっきまであんなに喜色満面だったのに今ではこの世の終わりみたいな顔をしている。
だ、ダメだ本人は至って真剣なんだぞ。笑ってはいけない。笑っては、、、
「ふ、あはは!!!スイレン君、気づくの遅すぎだよ!俺が危険な人だったらどうするの!それに、俺が貴族って気づいたのに口調が面白いままだよ、ふふっ」
我慢しようとしたが、無理だった。なんだかスイレン君が面白くて笑いが止まらない。笑うのを我慢しようとすればするほど笑いは溢れてくる。
「き、貴族サマなのに、俺のこと罰しないのか?」
スイレン君はプルプル震えながらこちらを伺っている。
俺はふぅーっと息をして己を落ち着かせる。
スイレン君、まるで猫に怯える鼠のようだな。いや、さっきの元気さを加味すると鼠って言うよりポメラニアンとか犬っぽいな。なんて考えたらなんだか撫でてあげたくなってしまった。 どちらにせよ小動物だな。
「ふふ、大丈夫だよ。俺はそんなことで罰したりしないよ。」
なでなでなで。和むなー。
と、スイレン君の頭を撫でた所でハッと気がつく。
しょ、初対面の子の頭を撫でてしまった!
「わ、わわごめん!つい撫でちゃった!」
俺の反応を見たスイレン君は撫でるのをやめたのを見て急にしょぼくれてしまった。こちらをキュルキュルの瞳で見つめてくる。
も、もっとってことかな?
なでなでなでなで。
「……へへ、なんか落ち着くな。なんか兄貴に撫でられてるみたいだ。兄貴いないけど。」
いやいないんかい。
スイレン君の言葉にまた吹き出しそうになる。本当にスイレン君は面白いなあ、なんて思っていたら、頭を撫でられているスイレン君にものすごい既視感を感じた。
「いやー、せっかく隣人ができたんだから面白いやつ貫いてこーと思ったんだけどな。なんか頭撫でられちゃったら鍍金が剥がれちゃったよ」
そう言って照れ笑いするスイレン君。やっぱりポメラニアンだなあ、と思ったらスイレン君はイタズラがバレた子供のように笑いこう言った。
「あーあ、バレちったな。」
この言葉、どこかで──···
頭が、一瞬真っ白になり、バチッと音がしたような感覚がした。
『あーあ、バレちったな。』
そう言って"俺"を見下ろす男。その顔は逆行でよく見えない。 だが、その声色から笑っているのだと分かる。
その瞬間、思い出した。スイレン君との記憶を。いや、一方的に俺が知ってるだけなんだけど。そう、これは前世の記憶だろう。乙女ゲームの記憶だ。
……そうだ。スイレン君は、
「あ!そういえば君の名前を聞いてなかった!うっかりうっかり。」
そう言って笑うスイレン君は、とても悪そうには見えない。悪そうには……
だってそれは未来の話だ。今の彼は何も悪くないんだから当然だ。
でも、彼は、サザンカに罪を擦り付け、サザンカを殺す人物。
そして、
この世界の攻略対象で、ラスボスだ。
「えぇと、……スイレン、君?」
俺がそう問いかけると、スイレン君はニカッと笑って握手をしてきた。
「うん!俺のことはスイレンでも君付けでも好きなように呼んでくれたまえ。
あとあと俺、平民だから家名ありましぇん!どぞどぞ、よろぴくー。」
なんだか個性的で面白い子だなーと思って俺も手を握り返し、握手をする。
こちらこそよろしくね、と返事をするとスイレン君が何かに気がついたように、ん?と首を傾げた。すると、大変なことに気づいたかのような顔になっている。
「ん?ちょっ、ちょっと待ちたまえ!?」
どうしたのだろうか。さっきまで元気いっぱいだったはずのスイレン君がどんどん顔色が悪くなってきている。その顔色は、死刑宣告をされたかのようだ。
「平民の俺様と同室ということは、チ、チミは貴族サマなのか!?な、なんてこった!!!!俺打首!?」
悲鳴をあげるかのように俺を涙目で見てくるスイレン君。その顔は、本当に罰せられると思っているのかもしれない、真っ青だ。
「───···ぶっ!」
あまりの変わりぶりに思わず吹き出してしまった。ひとりコントみたいだとなんだか面白くなってしまう。だってさっきまであんなに喜色満面だったのに今ではこの世の終わりみたいな顔をしている。
だ、ダメだ本人は至って真剣なんだぞ。笑ってはいけない。笑っては、、、
「ふ、あはは!!!スイレン君、気づくの遅すぎだよ!俺が危険な人だったらどうするの!それに、俺が貴族って気づいたのに口調が面白いままだよ、ふふっ」
我慢しようとしたが、無理だった。なんだかスイレン君が面白くて笑いが止まらない。笑うのを我慢しようとすればするほど笑いは溢れてくる。
「き、貴族サマなのに、俺のこと罰しないのか?」
スイレン君はプルプル震えながらこちらを伺っている。
俺はふぅーっと息をして己を落ち着かせる。
スイレン君、まるで猫に怯える鼠のようだな。いや、さっきの元気さを加味すると鼠って言うよりポメラニアンとか犬っぽいな。なんて考えたらなんだか撫でてあげたくなってしまった。 どちらにせよ小動物だな。
「ふふ、大丈夫だよ。俺はそんなことで罰したりしないよ。」
なでなでなで。和むなー。
と、スイレン君の頭を撫でた所でハッと気がつく。
しょ、初対面の子の頭を撫でてしまった!
「わ、わわごめん!つい撫でちゃった!」
俺の反応を見たスイレン君は撫でるのをやめたのを見て急にしょぼくれてしまった。こちらをキュルキュルの瞳で見つめてくる。
も、もっとってことかな?
なでなでなでなで。
「……へへ、なんか落ち着くな。なんか兄貴に撫でられてるみたいだ。兄貴いないけど。」
いやいないんかい。
スイレン君の言葉にまた吹き出しそうになる。本当にスイレン君は面白いなあ、なんて思っていたら、頭を撫でられているスイレン君にものすごい既視感を感じた。
「いやー、せっかく隣人ができたんだから面白いやつ貫いてこーと思ったんだけどな。なんか頭撫でられちゃったら鍍金が剥がれちゃったよ」
そう言って照れ笑いするスイレン君。やっぱりポメラニアンだなあ、と思ったらスイレン君はイタズラがバレた子供のように笑いこう言った。
「あーあ、バレちったな。」
この言葉、どこかで──···
頭が、一瞬真っ白になり、バチッと音がしたような感覚がした。
『あーあ、バレちったな。』
そう言って"俺"を見下ろす男。その顔は逆行でよく見えない。 だが、その声色から笑っているのだと分かる。
その瞬間、思い出した。スイレン君との記憶を。いや、一方的に俺が知ってるだけなんだけど。そう、これは前世の記憶だろう。乙女ゲームの記憶だ。
……そうだ。スイレン君は、
「あ!そういえば君の名前を聞いてなかった!うっかりうっかり。」
そう言って笑うスイレン君は、とても悪そうには見えない。悪そうには……
だってそれは未来の話だ。今の彼は何も悪くないんだから当然だ。
でも、彼は、サザンカに罪を擦り付け、サザンカを殺す人物。
そして、
この世界の攻略対象で、ラスボスだ。
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