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12歳《中等部》
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しおりを挟むグンっと近くなる魔力。経験だけで顔の前に剣を差し込んで柄を握り込んだところに衝撃が来た。テオ様が加速で近接戦に持ち込んできたんだろう。本当に力技。テオ様らしくて少しだけ笑みが漏れる。
ちょっと行儀が悪いけど左蹴りでテオ様の鳩尾に1発。お腹をかがめた所に首目掛けて剣を振り下ろそうとした。
けどテオ様の反射神経良すぎだよね。テオ様は避けちゃった。
けどお腹痛いだろうに僕に向かって1歩踏み込んでくる。僕ももちろん迎え撃つ。むしろそっちに持ち込みたい。テオ様の魔力を減らさないと。
右、左、右上とテオ様の猛撃。僕の避ける技を使わせない気か。
あーヤダヤダ。手がしびれてきた。せめて鍔迫り合いに…ダメだ。テオ様それ避けてるんだった。本気でテオ様は力任せすぎる。手が痛い。もし変な受け方したらそのまま剣を落としそうなくらいに勢いがある。
僕が押されたように少し下がる。そしたらもちろんテオ様は足を踏み出してくる。そこを狙って魔法でテオ様の足をかけた。踏ん張りが効かなくなったテオ様の腕を切り落とした。利き手の右を狙ったのに左腕で庇われたけど。
テオ様は聖魔法も光魔法も適正がないから治す方法もないはず。それに痛みは集中力を削ぐからね。1番だよ。
テオ様の首元に剣を向けるようにもう一度だけ剣を振る。
―――勝った
……そう思ったのになぁ。
テオ様は止血すらせずに右手で剣を握り直して僕の剣を弾いた。
カンっと金属音が離れたところで鳴った。
柄は僕がちゃんと握ってる。剣先が折られたってことだ。
そんな弾く程度で折れるような紛い物を僕は持ってない。
テオ様の魔力は底を尽きかけてる。
魔法でも剣の質でもない。
それ以外で有り得ることは…剣技だけ。
ゲームより剣技を使えるようになるの早いんだけど??
距離を。
距離を取らないと。
…無理だ。剣技は剣を極めた者が使える神の御業。魔法が使えない代わりに身体能力も格段に上がる。身体能力強化の魔法じゃ同等以下だ。
現にさっきまであった影の落とし穴が無くなってるし。テオ様自身も意識してないんだろう。
剣技に対抗できるのなんて同じくらい極めた魔法だけ。
まだ僕はそこまで極めてない。
それならゲームのクラウスがしたように魔法と剣術の掛け合わせで対抗するしか…。精密な魔法操作と剣技を得る寸前までの剣術技術が必要になる。
僕にできる?クラウスだって今から数年後やっと完成させたんだよ。
やるしかないのは分かってるんだけどさ。
大規模魔法の準備しながら持ちこたえるしか勝ち目ないよね。
折れた剣は手放して魔法で剣を作り出す。これもゲームのクラウスがしてたことだ。
テオ様はまだ剣技を使いこなせてない。無意識なんだろう。ならそこしか対処法はない。空からの魔法戦に持ち込んだって剣技で叩き落とされるのが目に見えてるしな。分が悪いよ。
右から左。左から右。テオ様の猛攻を魔法の剣と最高まで集中して高めた身体強化魔法で捌く。そりゃあ剣技を魔法ありとはいえ捌き切るなんて無理だからかすり傷は増えてくよ。光魔法で治す余力もないからめっちゃ痛い。
やっとこさ作った隙。
テオ様の剣術をこの戦いのうちに理解して、僕のできる限りの剣術と魔法でやっと作り出せた一瞬の隙。
剣を滑らせ地面に落とす。足裏を強化、防御して剣を折った。
テオ様も驚いたのか動きが止まる。
その隙に身体強化魔法をこれでもかと注いだ蹴りをテオ様の鳩尾に決め込んだ。
やっと離れた体。息を整えるまもなく生死を決めるための魔法の詠唱を勧めてく。
覚悟をきめろ
油断をするな
絶対に間違えられない詠唱だ
これでテオ様を殺す
揺れる肩を息を吐ききることでどうにか抑える。
《この世のありとあらゆる物質を無へ帰せ
最後の魔法名を言いたいのに声が出ない。
はくはくと動いてる口から出るのは荒い息遣いだけ。
言って
言ってよ
覚悟なんてとうに決めたはずじゃない
お願い
口動いてよ
どんどんテオ様は近ずいてくる。
死に物狂いでとった距離すらひとっ飛び。
動け。
覚悟を決めろ
左手で照準を合わせろ
今勝たないと
今殺さないとテオ様は生き返らないかもしれない
今ならテオ様と幸せな生活を繰り返せる
―――クラウスならできるはず
――――――覚悟を決めろ、僕
《―――アクテ
僕の首の動脈の近くにテオ様の折れた剣が勢いよく振り抜かれた。
ぐるっと視界が反転する。
上に見える血まみれのテオ様と首のない僕のからだ。
僕の負け…か。
覚悟が足りなかったのは僕みたい。
ルディ、光魔法で治してくれるかな。
やってくれなきゃ死ぬんだけど。
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