推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

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12歳《中等部》

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あー負けた。
煌びやかな天井を見ながら心の中で愚痴る。

…皇宮かなぁ。皇宮だろうな。

「よぉ。起きたかよ?」

少し横を向いたらルディが本を読みながら僕を見てた。
相変わらず髪も目もキラキラしてて目に悪い。


「大会は?」

「テオの優勝。でもあいつもお前が死んだあとぶっ倒れたから報奨は個人で渡すことになった。」


そっか。
テオ様もギリギリだったのか。あと少しだったのになぁ。僕に覚悟が足りてれば。

終わったことにグダグダ言っても仕方ないか。

早く帰ってテオ様連れてく準備しないと。
テオ様を殺させるわけにはいかないから魔法薬を2倍に増やしとこ。治癒魔法薬と毒消し、魔力回復役と体力回復薬でしょ。あとは何かいるかな。

クラウスはテオに対してよく動く駒くらいにしか思っていなかったんだろう。
あんな可愛いのにありえない。でもテオ様のためにテオ様を殺すくらいのことはできると思ってたのに。できなかったなぁ。


「テオはどうしてる?腕は?」

「お前に渡された魔法薬で治ったぞ。あと魔力が減りすぎて隣の部屋でまだ寝てる。」

「そう。怪我がないなら良かったよ。」

座って首を確認。うん。問題なく動いてる。
ルディの前を通ってドレッサーを覗き込む。

鏡の中の僕に話しかけるようにルディに話しかけた。


「ねぇルディ。時間を戻したなら魔力も戻るんじゃないの?」

「魔力は別枠なんだよ。魔力空っぽの中に急に魔力が戻っても酔うだろ。今のテオはそれの酷い状態。」

「あー。なるほどね。さすがに僕まそこまで実験してなかったな。命に別状は?」

「無いってよ。」

「良かったよ。」

良かった。
刻魔法以外で治す方法分かんないもん。

「クラウス、お前最後の最後で手ぇ抜いただろ。テオも多分気づいてんぞ。なんなら宮廷の実力者もわかってる。なんて言い訳する気だ。」

皇室主催の催し物で手を抜いたとなると怒られるよね。分かってる。でも口が体が僕の細胞がテオ様を殺すことを拒否したんだもん。仕方ないじゃん。

「覚悟が足りなかったの。テオを殺してでも勝つつもり・・・だった。何度も口で言って自分に言い聞かせた。それでもできなかったんだよね。」



いくら僕を見つめても答えは変わらないよ。それが真実で事実だもん。
勝てたのは否定しない。でも結果は負けた。理由は僕がテオ様を殺せなかったから。これだけだ。


「本当に覚悟の問題。テオの方がよっぽど覚悟決めてきてたよ。」

「意外とお前、テオのこと大好きだよなぁ。」

パタンと背後で本を閉じた音がした。ルディも忙しい身だもんね。僕が目覚めるまでずっと居たのかな。仕事溜まってそう。

「可愛い弟だもの。傷つけるなんて考えたことなかったもん。あんなに強くなってるとはね。」

「最年少の剣技使いだな。どこもアイツ欲しがんだろうな。なぁクラウス。テオさ、俺にくれねぇ?」


うるさい。
そもそもそれを選ぶのはテオ様であって僕じゃない。


「多分、テオ起きたら剣技は使えないよ。」

「はぁ!?なんでだよ。」

「アレ、追い詰められたからできた御業でテオは意識してなかったんじゃないのかな。」

「…まじかよ。」

多分だけどね。集中しすぎて意識してなかったのか、それとも本当に意識がなかった説もある。無意識って意外と色んなところで顔出すからね。


「でも遅かれ早かれ使えるとは思うけどね。テオは感覚タイプだから体が覚えてることはすぐできるよ。」


鏡でひと通り首周りを確認したけど本当に綺麗になってる。魔法の痕跡も調べたけど本当に精密。前世で本で学んだドイツの時計職人くらい精密。さすがだなぁ。


「負けちゃったなぁ。」

「初めての挫折ってやつか?」

「そんなことはないけど。弟の前でくらいカッコつけたいでしょ?」

ルディの微妙な顔画鏡に映った。 

「俺に聞くか?」

「弟いるじゃん。仲悪いけど。」

「命狙ってくる弟なんて可愛くねぇよ。」




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