上 下
70 / 211
8歳

67

しおりを挟む
「第1皇子殿下にご挨拶申し上げます。」

「おー。苦しゅうない。」

「言いたかっただけですよね。」

「よきにはからへの方が良かったか?」

最後に第1皇子への挨拶。
相変わらずの態度だね。僕は公の場だからちゃんとやるよ。いつもみたいに喧嘩腰になっちゃうのはご愛嬌。

というかウザイから無視。そしたら今度は横に並んできた。邪魔すぎる。逃げたいのに。


「優勝おめでとう。でも俺がでてたらその座は俺のだったな。」

「ご冗談を。僕に模擬戦で勝ったことないでしょう。」

「殺していいなら勝てるわ。」


ほんと減らず口を聞くもんだ。

「僕はそこまでしなくても勝てますよ。」

「じゃあ俺は片手で勝てるわ。」

これ以上やっても似たりよったりだろう。大人な僕が引いてあげるよ。感謝してよね。

「そうですね。殿下。」

「うーわ。思ってもねぇくせによく言うわ。」

ニコッて笑って無視してやる。思ってないもん。仕方ないじゃん。

「兄上、これ解いてください!」

「テオは元気だね。でも先にご挨拶を。」

テオ様は僕の隣にいるルディに目を向けて次に僕の向こうにいる皇后陛下と第2皇子を見て肩を揺らした。

「皇后陛下、第1皇子殿下、第2皇子殿下にご挨拶申し上げます。」

「会うのは初めてね。クラウスの弟らしく良い子だこと。」

ふふふっと愛らしく微笑む皇后陛下。様になってるなぁ。本当は義母に男たちの目を奪われて面白くないだろうに。

テオ様の後ろで小さい赤色がウゴウゴしてる。テオ様より小さいだけで背の高い美人だけど。

「ご挨拶申し上げます。陛下。」

テオ・をおしのけて出てきた真っ赤な人。その人は目を奪われるほどの一礼をして見せた。
これだけの時間でここまでできるとは…やっぱり感性は悪くない。

その綺麗な一礼から頭を上げたらぶわっさって感じで真っ赤な髪の毛を払う。
その髪の毛からいい匂いがした。花?かな。僕が必死こいて戦いっている間にいくら使ったんだか。

義母から視線を逸らすためにテオ様にかけた魔法を解いてあげる。ゲームそのままの幻影だからすっごい眼福だった。かっこいいなぁ。やっぱりテオ様は僕の推しだ。


「ダンスがお上手なのね。パーティも慣れているのかしら。」

上手くやってくれよ。「ダンスは常識ですから。」くらいで済ませてくれ。相手は皇族。喧嘩は売らないでくれよ。



「ダンスと芸術鑑賞は趣味ですから。」

…終わった。
ダンスを趣味はダメだ。

そもそもダンスを趣味だ仕事だと言うのは異国の踊り子のことだ。踊り子なんてこの国では差別の対象になる。娼婦とかの性の対象。やっちゃったなぁ。

案の定クスクスと周りの女性たちがヒソヒソし始めた。

「ダンスが趣味ですって。」
「育ちがしれましてよ。」
「これだから男爵家の娘は。」

はぁ。どうすんのこの空気。僕は手を貸さないよ。

義母は気にした様子もなく背筋を伸ばして真っ赤な目を揺らがした。












しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました。 おまけのお話を更新したりします。

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

気付いたら囲われていたという話

空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる! ※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

僕はただの妖精だから執着しないで

ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜 役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。 お願いそっとしてて下さい。 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎ 多分短編予定

処理中です...