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とんでもないイスタンブール -昔の名前で出ていません-・3

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私の眼前で、応急寝台から身を起こす人物。

その目が、私を捉えた瞬間、驚愕の色に彩られます。

「もしかして貴女様は、シーリィエーン姉様…」

で、おごそかに妹…それも実の妹になる人物に告げる、私ことシェヘラザード。

「ええ、シャーフィカ…貴女はこの地に蘇ったのです」

ここは、鯖挟国の首都であり、アジアと欧州の境界となる地帯に属する都である巨大都市・コンスタンチノープルです。

そして我々がおる場所はイェニ・サライ…皇帝宮殿の地下に存在する地底宮殿の一部を使って作られた、欧州初の苗床…生物、特に人間の出産や再生を可能とする生態保存機能があるという、血の池状の液体生物を生存させておくための専用池のほとりなのです。

そして今、苗床制御を行うマリア・ヴォイキッツァ…東方聖母教会総主教の操作で、我が妹のシャーフィカが再生されて来たのです。

その方法ですが、なんと過去に遡ってこられたエマニエル部長とマリアリーゼ陛下によって、逝去当時の間際の一瞬に義体に差し替えられたシャーフィカ、身体ごと時空を超えてこのコンスタンチノープル地下の苗床に運ばれ、漬け込まれたのです。

更には、私が提供した受精卵子を用いて、痴女種化した身体に変更。

「ふふふ、シャーフィカ…貴女はもはや聖院上級騎士ダニアリーネに戻ったばかりではありません。いえ、ダニアリーネと同等以上の存在…聖戦士ダニヤザードとして蘇ったのです…初代様」

(ひさしぶりですわねぇ…もっとも、あなたが仕えておったデルフィリーゼ、今は復活して聖院が発展した痴女宮の財務の金庫番の頭領をつとめていただいておりましてよ…デルフィリーゼもおきにいりだったあなたが戻ってきていただいて、わたくしも嬉しく思いますわ)

دنیازاد, Dunyāzād (Shafiiqa Abdoolue) ダニヤザード Slut Visual 痴女外観 Thousand Suction (Limited Hundred thousand) 千人卒(限定万卒) Red rosy knights, Imperial of Temptress. 赤薔薇騎士団 Middle East Administration Bureau, Imperial of Temptress. 痴女皇国中東行政局 Doğu Meryem Ana Kilisesi Şövalyeleri 八端十字騎士団長

えええええ、と驚くシャーフィカですが、初代様に直接、こうなった経緯の説明と各種の知識、教え込んで頂きます。

あと、シャーフィカがダニアリーネだった当時の上長たるデルフィリーゼ様にも事情説明のために参戦頂きましたところ。

(いやぁ、シャーフィカ…いや、ダニアリーネ…君が戻って来てくれたのは私も非常に喜ばしいぞ。なにせ君かシーリィエーンのどちらを銀衣騎士に任じるかで散々に悩んだ事が懐かしいな。ま、君が現役だった当時とは事情がいささかに変わっているが、その辺りは姉に教わりたまえ。なに、一週間もすれば君なら現役だ)

なんか恐ろしい事を言われている妹ですが、実際にシャーフィカ、優秀な子だったのですよ。それ故にマイレーネ女官長の片腕となっていたのですから…言わば、オリューレの先輩でもあったのです。

で、私も参戦してシャーフィカに頭の中を覗かせております。

「はぁ…シーリィエーン姉様、アルトリーネの名を後身のサレルフィールなる者に譲られたと。で、今は聖院が痴女皇国となって、この辺一帯を統治する摂政にお成りになったと…何やら雲を掴むが如き話ですが…」

しかし、この妹は自分の股ぐらを触って、女官種ではなく痴女種となることがどういう事かを納得したようです。

もっとも、納得の前にぎゃあああと叫んでおりましたが。

「シャーフィカ、もっと驚く話がありましてよ…ヴォイキッツァ、ラーヴィアをここに」

「は、シェヘラザード様」

で、ざばざばと苗床から触手によって持ち上げられて来た全裸の女。

その左腕に、ヴォイキッツァの操る触手が聖環を巻いてしまいます。

「シャーフィカ、そなたにも騎士の服を渡します。もっとも、正式装備の十字仮面、今はよいでしょう…」

で、聖院上級騎士の制服と比べても露出の多い略装騎士服にえええという顔をしておるシャーフィカ、いえダニヤザード…ダニヤですが、苗床から上がって来た女を見ても驚いておりますね。

「このラーヴィア、いえアラビア半島の伝説の聖女ラービアと同じ名前を抱く女は私とヴォイキッツァの娘扱いなのです。良いですかダニヤ、そしてラービア。そなたらはここと痴女宮本宮での教練修練を終えた後、東方聖母教会の新たなる巡礼聖地たるメッカの地を守護する任について貰いたいのです…」

رابعة العدوية ラービア Slut Visual.(variable visual changer ) 痴女外観(淫魔種可変) Thousand Suction (Limited ten thousand) 千人卒(限定万卒) Red rosy knights, Imperial of Temptress. 赤薔薇騎士団 Middle East Administration Bureau, Imperial of Temptress. 痴女皇国中東行政局 Mecca Special Branch Chief مدير فرع مكة المكرمة في الأراضي المقدسة 聖地担当支部長

で、ラービア・アダヴィーヤなる人物、今から更に800年ほど前、聖院の中東支部が後に置かれるバスラの地に縁がある聖人聖女の類だそうです。

(当時におったラービアも痴女皇国世界では聖院に関わりがあった者の筈だ…四代目様…ラマンリーゼ様がご存知の筈…)

(デルフィリーゼ、ラマンリーゼです。ラービアについて、この場では聖院中東支部開祖、とだけ申しておきます)

でまぁ、この人物については上級女官であった以外の事は教えてもらえなかったのですが、なーんとなく想像は付きますよ。

ただ、今、生成されたラービアが聖院上級女官としてのラービアの再生された姿であるかは不明、とのこと。

それとですねぇ。

二人。

再生されたばかりでちょっと悪いとは思うのですがね。

当時の美人の基準の身体で再生されておるのでね。

今の中東行政局の範とか聖人とかに叙される体型には思えません。

更にはシャーフィカ。

あなた、還俗してから鍛錬を怠っていたでしょう。

すなわち、結構、ふとましい姿なのです。

こら、鍛えなあかん。

誰もが思うはずなのですよ、今の二人…。

つまり、だいえっとと。とれーにんぐが必要な状態なのです。

「ええええええ…」

「しかし、見れば確かに…シェヘラザード様もヴォイキッツァ様も腰のくびれの細さや身体の締まり具合が…」

ええ、私の全身を見せつけてやります。

銀衣騎士アルトリーネを名乗っていた全盛期の私まんまですよ、私の身体。

「んーと、私どもの身体をシーリィエーン姉様に近づける特訓をする、という事ですか…」

「体型補正でも直せなくはありませんが、今の世の事情を知るためにも敢えて鍛えさせてもらいます。特にシャーフィカ。その体たらくではダニアリーネどころか、聖戦士ダニヤザードなど名乗らせたくもなし」

「シーリィエーン姉様らしいというか、強引なのは相変わらずですわね…」

「うるさいっ」

ええ。泣き叫ぶ二人を連れて、1人卒に体力を制限した状態でイェニ・サライの外周どころかコンスタンチノープルの街をらんにんぐしたのです、早速。

そして翌朝からは徐々に卒級を上げて行き、最終的に朝、日の出と共にイェニ・サライを発ってバグダッド支部のネイレリーネのところで朝食を共に出来るのを目標にさせたのです。

とにかく、本宮研修ができるくらいにまで二人の体型をカイゼンすべき。

(シェヘラザード様、黒薔薇級騎士でもコンスタンチノープルからバクダッドまでは片道2時間はかかりますよ…)

で、ゴール役のネイレリーネも「さすがに無茶では」と慈悲の視線を二人に向けそうになりますけどね、ここは甘やかす場面ではないのですっ。

(では6時発8時着。ネイレリーネ、貴女に迷惑はかけません。水の一杯程度を出してやる程度で結構…いえ、妹には頭から水をぶっかける程度で)

(シーリィエーン姉様!)

しかし、厳しい教育の甲斐はありました。

そして、私が走り込みに付き合えない時は、本宮の百万卒以上の幹部が交代で、二人に付き合って走ってくれたのです。

そればかりか、オリューレや乳上、メーテヒルデに…淫化からはなんと、コイリュル妃とイリヤ殿までもが。

(エマネぇええええええあんたも走れぇえええええええ)

(そーですよエマネ様っ)

そして、二人が僅か2週間足らずで体型をカイゼンできた理由。

サレルフィール…今は痴女皇国将軍となったアルトリーゼが派遣されてきたのです。

で、サレルフィールの事をご存知の方はお分かりでしょう。

この子、聖院時代は従事していない女官業務の方が少なかったのです。

つまり、女官としての仕事も、出来る部類の子ですし…何より、痴女宮の現役・警務局長です。

そのサレルフィールですから、千人卒女官としての最低限の事務業務や女官業務のあらかた、イェニ・サライとバグダッドの施設を借りて教え込んでしまったのですよ。

「ダニアさまのげんぞく、あたくしが本宮に行ったあたりですかね…」

「もうちょっと後のような気もするわね…しかし、聖院当時から考えると両替処とか全然変わってるわよねぇ…ついていけるかしら」

「おかねじゃらじゃらがなくなってらくになりましたよ。あと、じょかんがごはんをちゃんとたべてるかとか、いろんなことがせいかんでわかるようになりましたから」

「では、私とラービア、本宮での研修というのは…」

「そもそもシャーフィラさまはダニアリーネさまとなるまでの本宮じょかんのけいけんがおありでしょう。ラービアさまも、きおくを見せていただく限りでは、とうじの聖院のおつとめをけいけんなさったようす。あとはクラブジュネスや、しろいマリアさまのほうのせいいんを経験なさるくらいでだいじょうぶでしょう」

とまで言い切る、サレルフィール。

ただ、今後も中東行政局の幹部として、二人には定例会議を筆頭に、何かあれば本宮に行ってもらう業務が発生します。

その際にいきなり顔を出して困る事がないよう、顔見世のためにも、本宮研修は実施しておくべきだと申す、サレルフィール。

「あたくしもせんぱいがたをごあんないできてこうえいです」

そう…サレルフィールは、聖院時代に女官として育った子です。

今の痴女宮との違いを把握していることはもちろん、更には敢えて痴女皇国とは別の道を選んでいる別の世界の聖院に二人を案内するにも適任でしょう。

そして、本宮へと向かう3人を送り出します。

このコンスタンチノープルにも、本宮地下24階との転送ゲートが設置されております。

場所は、苗床のある地下大宮殿の一角。

サレルフィールと二人は、そこに設けられた門をくぐり、本宮地下24階の墓所に向かうのです。

プラウファーネではなく、姉の外道丸部長が待っておるとは思いますが、そこは二人にも見知った場所のはず。

さて…3人を送り出しておる私ですが、彼女たちが戻って来るまでにやること、結構あるのです。

まず、この中東行政局に任された場所、大きく分けると4つになりますかね。

まず第一は、鯖挟国元来の領土であるコンスタンチノープルと、杏辛あんからの先まで。

そして旧来はバスラの近くにあった聖院時代の中東支部が所轄していた砂漠半島と、初代様がかつて君臨されたメソポタミアの地。

そして湯田屋人が聖地と崇める一帯、つまり尻愛しりあ近辺。

最後に、猫絨毯国の領地。

この4つだけでも、言語や文化は結構、異なっておったのです。

しかし、中東行政局としては、なるべくであれば統一を図りたいところ。

(そこでせいせんしなる伝説をおもいつかれたのですか…)

(サレルフィール、これは単に私が思いついただけではないのです。連邦世界のイスラムとやらでは、それなりに神に関わる伝説が残っておるのに着目した田中内務局長を中心とした歴史差異研究室の中東担当から、イスラムの信仰に代わる中東の様式を我々に提案されたのです…)

ええ、サレルフィールは本宮地下の墓所に到着して外道丸部長と二人を引き合わせ、祭壇でお香を捧げさせておる模様。

その後に本宮貴賓食堂で、各部局の長やベラ子陛下と2人の歓迎式典を開くようです。

しかし、例のエレベーターで本宮22階には一気に上がらず、1階で降りて女官管理室を経由して本宮正面を経由する模様ですね。

(しかしシェヘラザードさま、れんぽう世界のあっらーあくばるなしゅうきょう、いろいろとあぶないことも多いせいで、わたくしたちの世界ではだんじてはやらせなかったはずですが…)

(いえいえ、参考にさせて頂くのは主に、砂漠の民の生活様式や習慣。そして宗教に関わるものは、なるべくならば聖母教会の教えを優先にしょうと思っておりますよ…)

サレルフィールの懸念、もっともなことだと私も思っております。

あの子も私も、ペルシャ湾と言われる奥まった海の沿岸の出身。

そして、気候や風土は熟知しておる部類なのです。

(まず、女は外に出る際には頭巾を必須にしようと考えております。しかし、それは身分を表すのみならず、砂や日差しから頭を守るためのもの。例の宗教のように、女は己の身内にしか顔を見せるべからずといった縛りのためではありませんよ…)

つまり、防砂服として、アラビアの装いを広めようと思っておるのです。

で、聖母教会では東方と罰姦だといささか異なりますが、尼僧服はフードまたは頭巾を被りますので、その上からこうした防砂服を着るかは尼僧任せにしようとも。

つまり、民間用の防砂頭巾を被った者と尼僧や騎士、一目瞭然に見分けがつくようになるでしょう。

そして男は男で、聖母教会の偽女種や小姓以外は尻を剥き出す事がないように、いわゆるバルーンパンツとやらを成人は着用するようにと推奨の方向で。

で、男で尻を見せておるのは未成年か、はたまた漁師や船乗りとなるでしょう。

あと、女の頭巾同様に男にもターバンを勧めて行こうと思います。

(さばさんど国のおとこのひとはどくとくの帽子をかぶっていますよね)

あれはフェズというもの。

皆様にわかりやすく申し上げますと、トルコ帽というものです。

しかし、連邦世界では帝政側の象徴とされ、革命後には着用禁止の発令がなされたことで一気に廃れた服装習慣だとか。
https://x.com/725578cc/status/1787546264189772067

(これは、ターバンより面倒がないことから流行したものです。今では、サレルフィールの生まれた辺りの者と、鯖挟国民を区別する象徴にもなっておりますね…)

つまり、砂に悩まされる土地と、そうでない土地での実用性を考えると、自ずと装いというものは変わってくるのですよ。

で、今後は砂漠半島や猫絨毯国、そして鯖挟南部からチグリス・ユーフラテスの河口に至る辺りなどの砂と土の土地。

ここいらの灌漑も順次、予定されております。

まずは、滅姦めっかとされる黒石神殿が置かれる整地予定地。

ここの付近に、灌漑湖が作られる予定です。

この湖によって、まずは砂漠を旅してきた巡礼の足の馬やラクダの餌場…牧草地を用意する予定なのです。

(おききしましたよ…その、みずうみをいきなりつくることで、聖母のきせきをみなにしめして、ダニヤせんぱいたちをあがめさせるようにしようとおかんがえであると…)
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