流星少年が欲しい、命の精と甘美な躍動

星谷芽樂(井上詩楓)

文字の大きさ
上 下
4 / 28
第一章

第4話「なめらかな曲線」

しおりを挟む
 少年から上着を脱がすと、泥で汚れていても分かるなめらかな腰と形の良いふっくらした尻たぶが露わになった。
 そこには引っ掻かれた様な細い傷がいくつも赤い線を引いている。これは枝先に引っ掛かり付いた傷と同じだとウクダーは感じた。

 にしても、水を流せばさぞかし麗しい肌と身体が目の前に現れるのは間違いない。
 今でも少年の小さな尻を鷲掴みにして、揉みしだきたい衝動が溢れ出てくる。
 
(俺は……素肌を見せられて正気でいられるだろうか……)
 
 心臓の鼓動が低音を強く鳴り響かせてくる。ウクダーは心音のけたたましさに頭を振りながら、期待と葛藤で眩暈を起こしそうになっていた。
 
「……早速洗っていくぞ」
「うん」

 まずは少年の白く長い髪に水をかけた。そしてこびり着いた葉の破片や小さなゴミを流していく。
 十数回と水を流しながら指の間で髪を梳いていると、やがて少年の髪は、虹色に光る絹糸に様変わりしていった。

 (肌の白さに気を取られていたが……見た事の無い髪だ。いや、少年の髪は俺の髪と同じものなのか? もしこの髪で布を編んだら、麗しいヴェールが出来上がりそうだ)

 少年の白い髪はとても長く、彼の膝下辺りまで伸びている。
 妖精と見紛う美しさに、ウクダーは再び視線を奪われてしまっていた。

「……お兄さん、水が沁みて背中が痛い。それに寒いよ……」
「あ! あぁ、すまん……」

 一人だけ時が止まっていたウクダーに、少年が卑しそうな眼差しで後ろを振り向く。
 まだ全身は泥だらけで、彼は身を縮こませてピリピリした痛みと寒さに耐えていた。

「……ふぇっくしゅっ!」
「わ、悪い、ボーッとしてしまった……すぐ身体を拭いてやるからな」

 ウクダーは慌てて手拭いを湯に浸した。少年の髪を束にして前に垂らし、背中にこびり付いた泥を拭い取ろうとした。

「――ひゃぁっ! いだいっっ!」

 手拭いで少年の背中を拭いた途端、彼はつんざく痛みが走って飛び上がり悲鳴を上げた。

「いだいよぉ! その布、擦れると傷にひびくんだけどぉ!」
「え!? 仕方ないだろ? これで拭かないと、しっかり汚れが落とせないぞ?」
「でもその布使うのイヤだぁ! 痛いのイヤだぁぁっ!」
「そんな事言われてもな……」

 ウクダーは手拭いと傷だらけな少年の背中に何度も視線を行き来させて数秒後、一つだけ方法を思い付いた。
 しかしその方法は、ウクダーの理性を更に惑わすやり方でもある。

「俺の手で直接……でも良いのか?」
「痛くなければいいよ?」

 少年の気持ちを最大限に汲んだつもりでウクダーは聞いたのだが、当の本人はキョトンとして話の真意を全く理解していない。

 美しくなだらかな曲線の肌に触れられる……ウクダーにとっては心が跳ね上がる事態だ。しかしあくまでも冷静に、少年の気持ちを傷つけない様にしなくてはならない。

「キミがそれで良いのならそうするが、もしイヤだと思ったり気持ち悪いと感じたらすぐに言うんだぞ?」
「ん? うん、分かった」

 無垢な返答が、かえってウクダーを気まずい心境にさせる。
 ウクダーは暴走しそうな下腹部にグッと力を込めながら、少年の華奢な背中にそっと右手を乗せていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

朔の生きる道

ほたる
BL
ヤンキーくんは排泄障害より 主人公は瀬咲 朔。 おなじみの排泄障害や腸疾患にプラスして、四肢障害やてんかん等の疾病を患っている。 特別支援学校 中等部で共に学ぶユニークな仲間たちとの青春と医療ケアのお話。

家族になろうか

わこ
BL
金持ち若社長に可愛がられる少年の話。 かつて自サイトに載せていたお話です。 表紙画像はぱくたそ様(www.pakutaso.com)よりお借りしています。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...