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第一章
第3話「目覚める潮流」
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ウクダーが少年を連れ帰った後も、雨は一向に止む様子はなかった。おかげで落雷で起きた小さな炎は姿を消し、少年が居た白煙も消えて森の一難は逃れられたようだ。
少年を助けた場所から十分ほどの森の奥深くにウクダーの家が建てられている。ウクダーはびしょ濡れのまま家に入ると、少年を背負ったまま部屋奥の水場へ直行した。
ウクダーがゆっくり少年を降ろし、すぐさま桶と鍋を用意する。次に彼は手馴れた様子で、大きな水瓶から水を汲み始めた。
「あの……」
「雨で身体が冷えているだろう? すぐに湯を沸かしてくるから少し待っていてくれ」
「う、うん……」
暫くすると、湯気の立つ大きな鍋をウクダーが運んできた。
そしてもう一度水瓶の水を掬い取り、盤の中に入れて沸いた湯と混ぜ合わせる。何度も右手で湯加減を確かめると、ウクダーは少年の手を引いて湯の中へ入る様に優しく促した。
「この湯で泥を流すといい……自分で出来るか?」
ウクダーは手拭いを少年に渡した。しかし手渡された少年は困った様子でそれを見つめ、透き通った瞳でウクダーを見上げた。
突然向けられた無垢な瞳に、ウクダーの心が思わず吸い込まれそうになる。
「ど、どうした? これで体を洗うんだ。分かるだろ?」
「……これで何するの?」
少年はまるで、幼児が問い掛けるように瞳をパチクリさせている。
「えっと……自分で身体を洗った事はないのか?」
「? あらう……?」
ふざけているのか、駄々を捏ねてそう言っているのか。しかし、少年の表情は嘘を付いているようにはどうしても見えない。
「……本当に分からないのか。記憶喪失か?」
初心な身体に触れる事をウクダーは躊躇していた。汚れを全て拭い取ったら、眩い素肌が現れるに違いない。それで何も感じない自分では無い。
ウクダーの脳裏で微かに、でも確実に、少年の美しさに期待する自分がいる。
「俺がキミを洗って構わないのか? つまりその……キミの身体を触ることになってしまうんだが……」
ウクダーはなるべく冷静を装って低い声で問う。が、内心は鼓動が激しく下腹部の潮流も穏やかではない。
しかし少年はそれでも理解し切れていないようで、キョトンとしてウクダーの問いに受け答えた。
「うん、いいよ?」
あまりにもあっけらかんと答えて、ウクダーは思わず拍子抜けした。
「はは。そんな軽く答えられるのか……分かった」
色欲を気にしているのはウクダーだけのようだ。少年は汚れを知らない幼子と同じで、無防備にウクダーを見つめている。そんな純粋な少年を前に、ウクダーもいやらしさを気にする自分が馬鹿らしくなってきた。
「じゃあ俺が代わりに洗うが、嫌だったら無理せず言えよ?」
「う? うん」
これでウクダーの腹は決まった。
ウクダーはジャブジャブと手拭いを湯に濡らして少年を後ろに向かせた。少年はそれこそ人形の様に、ウクダーのされるがまま従う。
そしてウクダーは華奢な肩に手を掛け、羽織らせていた上着をそっと脱がせたのだった。
少年を助けた場所から十分ほどの森の奥深くにウクダーの家が建てられている。ウクダーはびしょ濡れのまま家に入ると、少年を背負ったまま部屋奥の水場へ直行した。
ウクダーがゆっくり少年を降ろし、すぐさま桶と鍋を用意する。次に彼は手馴れた様子で、大きな水瓶から水を汲み始めた。
「あの……」
「雨で身体が冷えているだろう? すぐに湯を沸かしてくるから少し待っていてくれ」
「う、うん……」
暫くすると、湯気の立つ大きな鍋をウクダーが運んできた。
そしてもう一度水瓶の水を掬い取り、盤の中に入れて沸いた湯と混ぜ合わせる。何度も右手で湯加減を確かめると、ウクダーは少年の手を引いて湯の中へ入る様に優しく促した。
「この湯で泥を流すといい……自分で出来るか?」
ウクダーは手拭いを少年に渡した。しかし手渡された少年は困った様子でそれを見つめ、透き通った瞳でウクダーを見上げた。
突然向けられた無垢な瞳に、ウクダーの心が思わず吸い込まれそうになる。
「ど、どうした? これで体を洗うんだ。分かるだろ?」
「……これで何するの?」
少年はまるで、幼児が問い掛けるように瞳をパチクリさせている。
「えっと……自分で身体を洗った事はないのか?」
「? あらう……?」
ふざけているのか、駄々を捏ねてそう言っているのか。しかし、少年の表情は嘘を付いているようにはどうしても見えない。
「……本当に分からないのか。記憶喪失か?」
初心な身体に触れる事をウクダーは躊躇していた。汚れを全て拭い取ったら、眩い素肌が現れるに違いない。それで何も感じない自分では無い。
ウクダーの脳裏で微かに、でも確実に、少年の美しさに期待する自分がいる。
「俺がキミを洗って構わないのか? つまりその……キミの身体を触ることになってしまうんだが……」
ウクダーはなるべく冷静を装って低い声で問う。が、内心は鼓動が激しく下腹部の潮流も穏やかではない。
しかし少年はそれでも理解し切れていないようで、キョトンとしてウクダーの問いに受け答えた。
「うん、いいよ?」
あまりにもあっけらかんと答えて、ウクダーは思わず拍子抜けした。
「はは。そんな軽く答えられるのか……分かった」
色欲を気にしているのはウクダーだけのようだ。少年は汚れを知らない幼子と同じで、無防備にウクダーを見つめている。そんな純粋な少年を前に、ウクダーもいやらしさを気にする自分が馬鹿らしくなってきた。
「じゃあ俺が代わりに洗うが、嫌だったら無理せず言えよ?」
「う? うん」
これでウクダーの腹は決まった。
ウクダーはジャブジャブと手拭いを湯に濡らして少年を後ろに向かせた。少年はそれこそ人形の様に、ウクダーのされるがまま従う。
そしてウクダーは華奢な肩に手を掛け、羽織らせていた上着をそっと脱がせたのだった。
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