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二章 異世界探索
談話室にて
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オークションから数日が経っていた。僕はオリヴィアさんがギルドの談話室にいると聞き、訪れていた。
「オリヴィアさん、訓練お願い――」
部屋に入ると同時にエルフに気づき、僕は固まってしまった。このエルフってオークションにかけられていたエルフじゃなかったっけ?
それにしてもエルフってみんなやっぱり美人なのかな。金髪に緑の眼。それに気品がある。年は七歳ぐらい?
僕はオリヴィアさんの膝の上でおとなしくしているエルフを凝視する。
どうしてここにいるんだろう? それにオリヴィアさんに頭なでられているのうらやましい。
オリヴィアさんはそんな僕の疑問に気づいたのか、答えてくれた。
「オークションのときのエルフ。この子、私たちが身柄を預かることになったの」
「どうしてですか? 他の売買されていた子たちはとりあえず、警察のような組織? が保護してくれましたよね?」
僕は当然の疑問をオリヴィアさんにぶつける。
この子はあのときのオークションで目玉商品として売られていた幼いエルフであり、このエルフを買った貴婦人は冒険者とともにレオナに殺されてしまった。だからてっきりこの子も一緒に保護されたと……。
「そうなんだけどこの子、エルフの里の一番下の王子だから……。一緒に保護されたら困る」
リアンは考える仕草をし、思考をめぐらせる。
そういえば、前にリンさんが言ってたな。『この大陸に警察のような組織はあるが権力者のいいなりだ』という言葉。ここまで権力者の言いなりなのだろうか。いや、腐敗しているのか? でも王子ならなおさら下手なことできないと思うけど。そもそも――――
「どうして王子がオークションで売られていたんだろう?」
無意識に言葉がこぼれる。――――今、口に出てた?!
そんな僕をオリヴィアさんがいちべつし、言葉を紡ぐ。
「普通、こんなことめったにない。多分、エルフの里で問題が起きたんだと思う。だけど、ロジェが心を閉ざしちゃって事情を聞こうにも……。それにリンはあのときの怪我が完全に治ってないから無理させられない」
「リンさんにして欲しいことでもあったんですか?」
「うん。リンの能力の一つに状況把握っていうのがあるの。普通は空間把握とかに使うんだけど、その人の状態を知ることもできるの。だからロジェを見てもらおうと思ってたんだけど……」
「他の裏ギルドのメンバーでそういうことできる人いないんですか?」
僕、まだ他のメンバーに会ったことないんだよな。部屋の数的に僕たち以外もいると思うんだけど……。
「いると言えばいるんだけど任務中でここにはいないんだ。――――リアン君には他のメンバー紹介してなかったね。そのうち会うとは思うけどみんな変な人が多いから気をつけてね?」
変な人……。オリヴィアさんとリンさんも結構変わってるとは思うんだけどそのオリヴィアさんが言うくらいだから相当変な人なんだろうか。それともオリヴィアさんが少し変だからその他は案外まともとか?
「とりあえず、ロジェ君? の心を開かないといけませんね」
椅子から立ち上がり、ロジェ君の前にしゃがみ込むと緑の瞳をのぞき込む。
「こんにちは、ロジェ君。僕リアンって言うんだ。よろしくね」
――――――反応がない。やっぱりオークションのときにつらいめにあったんだろうか。
「ロジェ?」
オリヴィアさんは自分の膝の上で袖を強く握りしめ、迷い子のような顔したエルフを心配そうに見た。
「無理しなくていいよ。大丈夫。大丈夫だから」
そういってロジェ君を安心させるように背中をなでる姿は聖女のように見えた。
「オリヴィアさんには少なからず心開いているように見えますよ?」
「そうかな。でも、言葉を発さないの。――多分、幼児退行しているんだと思う」
「それは重症ですね。でも、このままって訳にもいかないですよね?」
「うん。だから、エルフの里に行ってみようと思って。何があったか分かるかも知れないし」
エルフの里。僕も行ってみたいな。なんだか冒険って感じで楽しそう。それにロマンがある気がする。
「僕も行ってもいいですか?」
僕は目を輝かせオリヴィアさんの方を見つめた。行きたい、行きたい、行きたい。
「一緒に行こうか」
「はい、行きます!」
どんな所なんだろう。いつ行くのかな。なんだかそわそわして落ち着かない。
「出発は明日。だから今日中に旅の準備をしないと。――一緒に街に出かけようか?」
「街ですか? そんなに必要な物あります? 大抵の物はここにありますよね?」
「そうだけど、リアン君の武器、調達しないと。それに日持ちする食料も」
「武器って絶対高いですよね? 僕、お金持ってませんよ?」
「ボスが、『もし、就職できたらお祝いで武器買ってあげてもいいよ。一応オリヴィアが力ついたと判断したら、だけど。お金はオリヴィアに預けとくよ。当分僕、出かけるしね。じゃあ、よろしく~』って伝言残してたからお金の心配はいらない」
なんかボスって緩い人なのかな。もっとこう、きっちりして怖い人だと勝手に思ってた。ボスって言われるとマフィアとか思い浮かべちゃうし。
「それならお言葉に甘えさせてもらいます」
「じゃあ、行こうか」
「はい」
「オリヴィアさん、訓練お願い――」
部屋に入ると同時にエルフに気づき、僕は固まってしまった。このエルフってオークションにかけられていたエルフじゃなかったっけ?
それにしてもエルフってみんなやっぱり美人なのかな。金髪に緑の眼。それに気品がある。年は七歳ぐらい?
僕はオリヴィアさんの膝の上でおとなしくしているエルフを凝視する。
どうしてここにいるんだろう? それにオリヴィアさんに頭なでられているのうらやましい。
オリヴィアさんはそんな僕の疑問に気づいたのか、答えてくれた。
「オークションのときのエルフ。この子、私たちが身柄を預かることになったの」
「どうしてですか? 他の売買されていた子たちはとりあえず、警察のような組織? が保護してくれましたよね?」
僕は当然の疑問をオリヴィアさんにぶつける。
この子はあのときのオークションで目玉商品として売られていた幼いエルフであり、このエルフを買った貴婦人は冒険者とともにレオナに殺されてしまった。だからてっきりこの子も一緒に保護されたと……。
「そうなんだけどこの子、エルフの里の一番下の王子だから……。一緒に保護されたら困る」
リアンは考える仕草をし、思考をめぐらせる。
そういえば、前にリンさんが言ってたな。『この大陸に警察のような組織はあるが権力者のいいなりだ』という言葉。ここまで権力者の言いなりなのだろうか。いや、腐敗しているのか? でも王子ならなおさら下手なことできないと思うけど。そもそも――――
「どうして王子がオークションで売られていたんだろう?」
無意識に言葉がこぼれる。――――今、口に出てた?!
そんな僕をオリヴィアさんがいちべつし、言葉を紡ぐ。
「普通、こんなことめったにない。多分、エルフの里で問題が起きたんだと思う。だけど、ロジェが心を閉ざしちゃって事情を聞こうにも……。それにリンはあのときの怪我が完全に治ってないから無理させられない」
「リンさんにして欲しいことでもあったんですか?」
「うん。リンの能力の一つに状況把握っていうのがあるの。普通は空間把握とかに使うんだけど、その人の状態を知ることもできるの。だからロジェを見てもらおうと思ってたんだけど……」
「他の裏ギルドのメンバーでそういうことできる人いないんですか?」
僕、まだ他のメンバーに会ったことないんだよな。部屋の数的に僕たち以外もいると思うんだけど……。
「いると言えばいるんだけど任務中でここにはいないんだ。――――リアン君には他のメンバー紹介してなかったね。そのうち会うとは思うけどみんな変な人が多いから気をつけてね?」
変な人……。オリヴィアさんとリンさんも結構変わってるとは思うんだけどそのオリヴィアさんが言うくらいだから相当変な人なんだろうか。それともオリヴィアさんが少し変だからその他は案外まともとか?
「とりあえず、ロジェ君? の心を開かないといけませんね」
椅子から立ち上がり、ロジェ君の前にしゃがみ込むと緑の瞳をのぞき込む。
「こんにちは、ロジェ君。僕リアンって言うんだ。よろしくね」
――――――反応がない。やっぱりオークションのときにつらいめにあったんだろうか。
「ロジェ?」
オリヴィアさんは自分の膝の上で袖を強く握りしめ、迷い子のような顔したエルフを心配そうに見た。
「無理しなくていいよ。大丈夫。大丈夫だから」
そういってロジェ君を安心させるように背中をなでる姿は聖女のように見えた。
「オリヴィアさんには少なからず心開いているように見えますよ?」
「そうかな。でも、言葉を発さないの。――多分、幼児退行しているんだと思う」
「それは重症ですね。でも、このままって訳にもいかないですよね?」
「うん。だから、エルフの里に行ってみようと思って。何があったか分かるかも知れないし」
エルフの里。僕も行ってみたいな。なんだか冒険って感じで楽しそう。それにロマンがある気がする。
「僕も行ってもいいですか?」
僕は目を輝かせオリヴィアさんの方を見つめた。行きたい、行きたい、行きたい。
「一緒に行こうか」
「はい、行きます!」
どんな所なんだろう。いつ行くのかな。なんだかそわそわして落ち着かない。
「出発は明日。だから今日中に旅の準備をしないと。――一緒に街に出かけようか?」
「街ですか? そんなに必要な物あります? 大抵の物はここにありますよね?」
「そうだけど、リアン君の武器、調達しないと。それに日持ちする食料も」
「武器って絶対高いですよね? 僕、お金持ってませんよ?」
「ボスが、『もし、就職できたらお祝いで武器買ってあげてもいいよ。一応オリヴィアが力ついたと判断したら、だけど。お金はオリヴィアに預けとくよ。当分僕、出かけるしね。じゃあ、よろしく~』って伝言残してたからお金の心配はいらない」
なんかボスって緩い人なのかな。もっとこう、きっちりして怖い人だと勝手に思ってた。ボスって言われるとマフィアとか思い浮かべちゃうし。
「それならお言葉に甘えさせてもらいます」
「じゃあ、行こうか」
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