天使かと思ったら魔王でした。怖すぎるので、婚約解消がんばります!

水無月あん

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デュラン王子

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デュラン王子が、聞いてきた。

「ところで、ミカル王太子から聞いたのですが、アデル王女は本がお好きとか?」

「大好きです!」

つい、声が大きくなってしまった。いい人だと、会話にも熱がはいるわ!

「ぼくも大好きなんですよ。だから、今回、オパール国へくることになって、お会いできるのを楽しみにしていました」
と、ほほえんだ。

天使のうえに、本が好きだなんて!
どうしよう。
デュラン王子、いえ、デュラン天使の好感度が、私の中でどんどんあがっていく。

「アデル王女は、シンガロ国の本も読まれるとか?」

「シンガロ国は、おもしろい本が多いですから。姉に送ってもらってるんです」

「そうですよね。ぼくも、シンガロ国へ留学していた時は、本屋に入り浸りでした。どのような本がお好きですか?」

「物語本が好きです。特に、シンガロ国のリッカ先生の大ファンなんです!」

デュラン王子が目を見開いた。

「リッカさんは知り合いですよ」

「えええーっ!!」

思わず、王女としては、あるまじき声をあげてしまった。
あわてて、口をおさえる。

が、仕方ないよね。大ファンのリッカ先生だよ! 冷静になれるわけがない。

デュラン王子は、ふふっと笑った。

「実は、ぼくもファンでね。留学してた時、コネを使いまくって、やっと会うことができたんだ。それ以来のおつきあいで、今度、リッカさんに、うちの国で新刊を書きおろしてもらうことになった。ぼくの翻訳でね」

デュラン王子の口調が一気にくだけた。
わかるわ、リッカ先生のファンなら、もう親友よ!

「すごいっ! うらやましい! 私も読みたい!」

『新刊ができたら送るよ。ブルージュ語わかる?』
と、ブルージュ語で聞いてきた。

『大丈夫! 読めるし、話せるわ』

私もブルージュ語で答えた。

『上手だね。さすが、才女と名高いアデル王女だ』

そう言って、とろけるような笑みをうかべた。

もう、本当、この人、天使よね!
だって、話していると、気持ちがどんどん浮き上がって、天国に近づいていくもの。


と、その時、背後から、ぞわっと冷気がただよってきた。
反射的に振り返る。

目があった……。

やめて、その目。
目だけで人を殺せるわ。

一瞬にして、浮かれていた気持ちが引きずり落される。
さすが、魔王。
天使の仮面が完全にはずれてしまってますよ、ユーリさん……。

ほら、まわりのユーリファンの女性たちにばれるわよ。本性が。

でも、公の場で、仮面をはずすのはユーリにしては珍しいな……なんて、のんきに言ってる場合じゃない。

どうみても、矛先は私よね。
うん、身の危険をびしびし感じる。

デュラン王子とリッカ先生について、じっくり語り合いたいけれど、それどころじゃない。
どうしよう。
うん、ひとまず、逃げよう!





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