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ブルージュ国
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父である王の挨拶が終わり、会場がざわめきはじめた。
いざ、ユーリファンのもとへ! と、思ったけれど、…動けないのよね。
次から次へと、挨拶にやってくる人たちに囲まれるんだから。
同じような話が続き、飽きてきたところで、目線の先に、きらびやかなドレスの集団に囲まれているユーリを発見。
おお、あちらは、いい感じじゃない?
みんな、がんばって! 後で、私も見に行くからねと、女性たちに心の中でエールを送る。
もう、心はすっかり友達だ。
と、そこへ、
「アデル、ちょっとこっちへ来て」
王太子のルイ兄様から声がかかった。
王太子の声に、取り囲んでいた人たちがパカンと道をあける。
すごいな、前世の記憶では、鶴の一声だっけ?
ルイ兄様は、すらりとした青年に、
「妹のアデルです」
と、私を紹介した。
ゆるやかにウエーブしたハニーブラウンの髪に、すっきりと整った顔立ち。
なにより印象的なのは、すみれ色の瞳だ。この国では、見たことがない。
ということは、今回、交渉で来られた隣国ブルージュ国の方ね。
「オパール国、第二王女のアデルと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「私は、ブルージュ国交渉団団長として参りました、デュランと申します。ブルージュ国の第二王子です。どうぞ、お見知りおきを」
ルイ兄様がにこやかに補足する。
「デュラン王子は語学が堪能で、10か国語も話されるんだぞ。なので、今回の交渉は通訳も兼ねておられたんだ。そうそう、アデルと話がしたいそうだよ」
そう言うと、「では、のちほど」と、デュラン王子に会釈して、去っていった。
「10か国語も話されるなんて、すごいですね!」
心からの言葉だ。
だって、できるだけ沢山の本を読むためとはいえ、外国の言語を習得するのは、私にとっては大変なことだから。
「いえ、いろいろな国の言葉が好きなだけです」
そう答えると、恥ずかしそうに、ほほえんだ。
整った顔が、一気に甘くなった。
しかも、すみれ色の瞳がきらきらしている。
なに、この笑顔!
すみれ色の瞳とあいまって、スミレの砂糖菓子を思いおこす。
甘い! そして、まぶしい! まぶしすぎる!
見た目だけで言えば、ユーリとはまた違うタイプの天使っぽさがあるわ。
そして、悲しいかな。
まぶしすぎると、思わず条件反射で、だれかを思い出す。
そして、体が勝手に後ずさりしてしまうのよね。
が、その分、デュラン王子が近づいてきた。
「実は、アデル王女をお見かけするのは、初めてではないんです。去年、シンガロ国のミカル王太子とあなたの姉上、カレナ王女の結婚式に参列してましたので」
「そうだったのですか?」
うーん、思い出せない。こんな美形なら、記憶に残りそうなんだけど…。
あっ、そうだ!
長年の思いが叶ってのミカル様との結婚式で、カレナ姉様が変なテンションになってしまって…。
心配で、ずっとそばにいたので、全く、まわりを見ていなかったんだわ。
「ぼくは、学生の時、シンガロ国に留学してまして。年齢はミカル王太子が二つ年上で先輩だけど、仲良くさせてもらってるんですよ」
ミカル王太子の二つ年下ということは、私の8歳上。
あっ、ユーリと同じだ。
「アデル王女は、あの時も愛らしかったですが、ますます、お美しくなられましたね」
そう言うと、ほんのり頬を染めた。
「いえ、そんな…」
なあーんて答えたけど、なに、この人?! すごい、いい人なんだけど!
ユーリと違って、中身も天使じゃないっ?!
いざ、ユーリファンのもとへ! と、思ったけれど、…動けないのよね。
次から次へと、挨拶にやってくる人たちに囲まれるんだから。
同じような話が続き、飽きてきたところで、目線の先に、きらびやかなドレスの集団に囲まれているユーリを発見。
おお、あちらは、いい感じじゃない?
みんな、がんばって! 後で、私も見に行くからねと、女性たちに心の中でエールを送る。
もう、心はすっかり友達だ。
と、そこへ、
「アデル、ちょっとこっちへ来て」
王太子のルイ兄様から声がかかった。
王太子の声に、取り囲んでいた人たちがパカンと道をあける。
すごいな、前世の記憶では、鶴の一声だっけ?
ルイ兄様は、すらりとした青年に、
「妹のアデルです」
と、私を紹介した。
ゆるやかにウエーブしたハニーブラウンの髪に、すっきりと整った顔立ち。
なにより印象的なのは、すみれ色の瞳だ。この国では、見たことがない。
ということは、今回、交渉で来られた隣国ブルージュ国の方ね。
「オパール国、第二王女のアデルと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「私は、ブルージュ国交渉団団長として参りました、デュランと申します。ブルージュ国の第二王子です。どうぞ、お見知りおきを」
ルイ兄様がにこやかに補足する。
「デュラン王子は語学が堪能で、10か国語も話されるんだぞ。なので、今回の交渉は通訳も兼ねておられたんだ。そうそう、アデルと話がしたいそうだよ」
そう言うと、「では、のちほど」と、デュラン王子に会釈して、去っていった。
「10か国語も話されるなんて、すごいですね!」
心からの言葉だ。
だって、できるだけ沢山の本を読むためとはいえ、外国の言語を習得するのは、私にとっては大変なことだから。
「いえ、いろいろな国の言葉が好きなだけです」
そう答えると、恥ずかしそうに、ほほえんだ。
整った顔が、一気に甘くなった。
しかも、すみれ色の瞳がきらきらしている。
なに、この笑顔!
すみれ色の瞳とあいまって、スミレの砂糖菓子を思いおこす。
甘い! そして、まぶしい! まぶしすぎる!
見た目だけで言えば、ユーリとはまた違うタイプの天使っぽさがあるわ。
そして、悲しいかな。
まぶしすぎると、思わず条件反射で、だれかを思い出す。
そして、体が勝手に後ずさりしてしまうのよね。
が、その分、デュラン王子が近づいてきた。
「実は、アデル王女をお見かけするのは、初めてではないんです。去年、シンガロ国のミカル王太子とあなたの姉上、カレナ王女の結婚式に参列してましたので」
「そうだったのですか?」
うーん、思い出せない。こんな美形なら、記憶に残りそうなんだけど…。
あっ、そうだ!
長年の思いが叶ってのミカル様との結婚式で、カレナ姉様が変なテンションになってしまって…。
心配で、ずっとそばにいたので、全く、まわりを見ていなかったんだわ。
「ぼくは、学生の時、シンガロ国に留学してまして。年齢はミカル王太子が二つ年上で先輩だけど、仲良くさせてもらってるんですよ」
ミカル王太子の二つ年下ということは、私の8歳上。
あっ、ユーリと同じだ。
「アデル王女は、あの時も愛らしかったですが、ますます、お美しくなられましたね」
そう言うと、ほんのり頬を染めた。
「いえ、そんな…」
なあーんて答えたけど、なに、この人?! すごい、いい人なんだけど!
ユーリと違って、中身も天使じゃないっ?!
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