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アルのお土産 22
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アルの言葉を聞いて、ぴんときた。
「そうだ、コリーヌ様、髪に何かぬってない? 多分、お手入れ用のクリームとか使っていると思うのよね」
と、私が言えば、ジュリアンさんもうなずいた。
「なるほど…。それなら、俺の手にぬったみたいに、邪気をつけられるか…」
「髪のクリームか…。あっ、この種、甘い匂いがするって言ってたよな…」
アルが、ジュリアンさんの邪気からとれた種を手に取り、鼻に近づけた。
そして、匂いをかぐ。
「間違いない。この匂いだ…」
「どうしたの、アル…?」
「以前、母上に、髪にクリームをぬられたことを思いだした。パーティーが開かれた時、エスコートのため母上の部屋に迎えにいった。その時、俺の後ろの髪が少しはねてたいたらしく、母上に髪にクリームをぬられ、整えられた。その時、少し甘い匂いがした。かいだことのないような、独特の匂さだったのを覚えてる…」
「確かか?」
ジュリアンさんが真剣な声で聞いた。
「ああ…。俺は、毒をみわけたり、かぎわける訓練をしている。一度かいだ匂いは、よく覚えている」
「ということは、その時点で、コリーヌ様の部屋に不審な髪用のクリームがあったってことね…。いつも、コリーヌ様は、自分で髪を整えられてるの?」
「いや、侍女だろう。ただ、母上の侍女は家族から親類まで調べつくしてる。グリシア侯爵家につながる者はいない。もちろん、髪のクリームであろうと、持ち込むものに毒がないかのチェックはしている」
「アル、一応確認するけど、以前、私がコリーヌ様の邪気をすい取った後、コリーヌ様に、あんな頭痛は起きてないんだよね?」
「ああ。あれ以来、ないそうだ」
「私が一度、王宮でコリーヌ様にお会いした時も邪気はなかった。私が邪気をとったあとも、邪気をつけた人がそばにいれば、また、つくと思うんだよね…。その髪のクリーム、まだ使ってるのかな?」
「いや、わからない。すぐに母上に聞いてみる」
「アル。私も王宮へ行っていい? コリーヌ様にお会いして、自分で確認したいから」
アルは少し考えてから、口を開いた。
「そうしてもらうと俺も助かる。が、ライラ、覚えてるか? 以前、母上の邪気を取ってもらった時、ライラの手にこの種がうまれただろう。俺は、すぐに、グリシア侯爵家の紋章を思い浮かべた。だから、呪いの類だろうと言いかけて、母上にとめられた。ライラを絶対に巻き込むなって言ってな。邪気について調べるために、ライラを王宮へ連れてくると言ったら、母上に反対されると思う…」
「コリーヌ様もアルも気づかってくれてありがとう。でもね、やっぱり、私は、はっきりさせたい! だって、ジュリアンさんに同じ邪気がついたんだよ? また、コリーヌ様が狙われる可能性もあるもの」
「アル。俺も、邪気の見えるライラちゃんに手伝ってもらったほうがいいと思う。ライラちゃんが来るときは俺も全力で守るから」
と、ジュリアンさんが言ってくれた。
じっと私を見ていたアルが、力をぬいたように微笑んだ。
「わかった…。なら、手伝ってくれるか?」
「ありがとう、アル! 絶対、原因をつきとめて、コリーヌ様を守るわ!」
「お礼を言うのは、俺のほうだ。それに、ライラは俺が守る。あの時とは違って、今は、ライラは、俺の婚約者だ。表立って全力で守れるからな。何も心配するな」
そう言って、アルが、私の頭にポンと手をおいた。
「うん。アルがいてくれるから、私は大丈夫」
私の言葉に、アルの怜悧な美貌が、甘くやわらいだ。
そのとたん、
「ちょっと、2人とも! また、俺を忘れてる!」
と、ジュリアンさんが叫んだ。
一週間後、準備を整えた私は、迎えに来てくれたアルと一緒に馬車で王都へと向かった。
※ これにて、「アルのお土産」編は終了です。
読んでくださった方、ありがとうございます!
そして、お気に入り登録、エールもありがとうございます! 励みにさせていただいています!
次回から、ライラが、王宮へと乗り込みます。どうぞ、よろしくお願いいたします!
「そうだ、コリーヌ様、髪に何かぬってない? 多分、お手入れ用のクリームとか使っていると思うのよね」
と、私が言えば、ジュリアンさんもうなずいた。
「なるほど…。それなら、俺の手にぬったみたいに、邪気をつけられるか…」
「髪のクリームか…。あっ、この種、甘い匂いがするって言ってたよな…」
アルが、ジュリアンさんの邪気からとれた種を手に取り、鼻に近づけた。
そして、匂いをかぐ。
「間違いない。この匂いだ…」
「どうしたの、アル…?」
「以前、母上に、髪にクリームをぬられたことを思いだした。パーティーが開かれた時、エスコートのため母上の部屋に迎えにいった。その時、俺の後ろの髪が少しはねてたいたらしく、母上に髪にクリームをぬられ、整えられた。その時、少し甘い匂いがした。かいだことのないような、独特の匂さだったのを覚えてる…」
「確かか?」
ジュリアンさんが真剣な声で聞いた。
「ああ…。俺は、毒をみわけたり、かぎわける訓練をしている。一度かいだ匂いは、よく覚えている」
「ということは、その時点で、コリーヌ様の部屋に不審な髪用のクリームがあったってことね…。いつも、コリーヌ様は、自分で髪を整えられてるの?」
「いや、侍女だろう。ただ、母上の侍女は家族から親類まで調べつくしてる。グリシア侯爵家につながる者はいない。もちろん、髪のクリームであろうと、持ち込むものに毒がないかのチェックはしている」
「アル、一応確認するけど、以前、私がコリーヌ様の邪気をすい取った後、コリーヌ様に、あんな頭痛は起きてないんだよね?」
「ああ。あれ以来、ないそうだ」
「私が一度、王宮でコリーヌ様にお会いした時も邪気はなかった。私が邪気をとったあとも、邪気をつけた人がそばにいれば、また、つくと思うんだよね…。その髪のクリーム、まだ使ってるのかな?」
「いや、わからない。すぐに母上に聞いてみる」
「アル。私も王宮へ行っていい? コリーヌ様にお会いして、自分で確認したいから」
アルは少し考えてから、口を開いた。
「そうしてもらうと俺も助かる。が、ライラ、覚えてるか? 以前、母上の邪気を取ってもらった時、ライラの手にこの種がうまれただろう。俺は、すぐに、グリシア侯爵家の紋章を思い浮かべた。だから、呪いの類だろうと言いかけて、母上にとめられた。ライラを絶対に巻き込むなって言ってな。邪気について調べるために、ライラを王宮へ連れてくると言ったら、母上に反対されると思う…」
「コリーヌ様もアルも気づかってくれてありがとう。でもね、やっぱり、私は、はっきりさせたい! だって、ジュリアンさんに同じ邪気がついたんだよ? また、コリーヌ様が狙われる可能性もあるもの」
「アル。俺も、邪気の見えるライラちゃんに手伝ってもらったほうがいいと思う。ライラちゃんが来るときは俺も全力で守るから」
と、ジュリアンさんが言ってくれた。
じっと私を見ていたアルが、力をぬいたように微笑んだ。
「わかった…。なら、手伝ってくれるか?」
「ありがとう、アル! 絶対、原因をつきとめて、コリーヌ様を守るわ!」
「お礼を言うのは、俺のほうだ。それに、ライラは俺が守る。あの時とは違って、今は、ライラは、俺の婚約者だ。表立って全力で守れるからな。何も心配するな」
そう言って、アルが、私の頭にポンと手をおいた。
「うん。アルがいてくれるから、私は大丈夫」
私の言葉に、アルの怜悧な美貌が、甘くやわらいだ。
そのとたん、
「ちょっと、2人とも! また、俺を忘れてる!」
と、ジュリアンさんが叫んだ。
一週間後、準備を整えた私は、迎えに来てくれたアルと一緒に馬車で王都へと向かった。
※ これにて、「アルのお土産」編は終了です。
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