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番外編
挿話 あの後のこと 4 (ダグラス視点)
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姉の物を奪い、自分が優位であることをわからせるなど、到底理解できない最低なことを話したあとも、ルリは、術が解ける気配もなく、酔っぱらったように話を続けた。
「でも、お姉ちゃんって、全然おしゃれもしなくて、地味で、ださい服ばっかり着てるし。ほーんと、趣味わるくってー。奪おうにも、ルリだって、欲しくないんだよねー」
いや、どう考えても、趣味が悪いのはおまえだろう……。
「でも、わからせるには、お姉ちゃんの好きな物を奪わないと意味ないよねー? だから、ルリの趣味じゃなくっても、お姉ちゃんが大事に使っている物を欲しいって言うの。でも、すぐ、くれるんだあ。全然惜しくもなさそうで、つまんなーい!」
ルリはそう言うと、不満そうに、頬をふくらませた。
それにしても、ルリの姉は、何故、ルリのそんな態度に我慢してる?
それとも、悟りでもひらいてるのか?
どっちにしても、よほど、心の広い人間なんだろう。
私とは大違いだ。
私なら、そんな態度をとられたら、例え身内だろうが、即座に反撃にでる。
そんな気持ちで、人のものを奪うなら、そいつから全部奪い取って、嫌と言うほど、奪われる気持ちをわからせるくらいのことはする。
もちろん、我が弟ライアンに理不尽に物を奪われたことなど一度もないが。
それどころか、ライアンにはもらってばかりだったな。
まだ魔力のコントールができていない頃、感情が動くたび、よく魔力を暴走させて、物を壊していた私。
父上から借りた本を燃やしてしまい、落ち込んでいると、ライアンがトコトコと歩いてきて、大切にしている絵本をくれた。
母上が飾っていた置物を壊してしまい、落ち込んでいると、ライアンがそこに自分のお気に入りのぬいぐるみを飾っておいてくれた。
ライアンのおもちゃを溶かしてしまい、ものすごく落ち込んで謝ると、ライアンが「あにうえ、げんきだして」そう言って、自分のおやつを食べさせてくれた。
こんな心優しい弟を持つ恵まれた私とは真逆のルリの姉。
気の毒で仕方がない……。
思わず、私の仮面がはがれて、目の前にいる女を素でにらんでしまう。
が、ルリは本性がもれだした嫌な笑みをうかべたまま、話し続ける。
「あ、でも、リュウからもらった髪飾りを欲しいって言った時は、お姉ちゃん、すごく嫌がったんだよねー! だから、絶対欲しいって思った。もちろん、ルリが手に入れたよー。お母様がお姉ちゃんに譲るように言ったから。お母様は、いつだって、ルリの味方だもんね」
母親も最悪そうだな……。
「でも、不思議だよねー。手に入ると、その髪留め、そんなに欲しくなかったなあって思って。1回くらい使って捨てちゃったんだあ…ウフフ」
思わず、この濁りきった笑みを浮かべる顔にむけて、魔力をぶっぱなしたくなった。
が、ルリの姉は、おそらく、私が代わりにそんなことをしても喜ばない人間なのだろう。
私は怒りを極力おさえながら、聞いた。
「お姉様がそれほど悔しがるとは、そのリュウというのは、だれのことですか?」
「あ、リュウは、お姉ちゃんの婚約者だよー! でもね、ルリが、ちょーっと優しくしたら、すぐにルリのことが好きになったんだよね~」
「つまり、お姉様の婚約者も奪ったと?」
「うん。欲しくなったから。でも、簡単すぎて、つまんなかったー。それに、リュウって、顔がいいってわけじゃないから、やっぱり、いらないなあって。お姉ちゃんに返そうと思ったんだけど、ルリのほうが魅力的だから、リュウに愛されちゃってるんだ。リュウは、お姉ちゃんと結婚するけど、リュウは、ずっとルリが好きだと思う。でも、それって、ルリのせいじゃないよね?」
と、自慢げに言ったルリ。
なるほどな……。
婚約者のいたムルダーに厚かましくすり寄り、クリスティーヌ嬢があんなことになっても、なんの反省も後悔もしないはずだな。
この女に、人間の持つ良心みたいなものは、かけらもないようだ。
「ルリ嬢。話を聞けば、あなたはみんなに愛されて、幸せに暮らしていたようですが、どうして、帰りたくないのですか?」
と、肝心の質問をしてみた。
「うーん、色々比べたら、こっちがいいかなあって……」
「例えば、どんな点が良いのですか?」
私の問いに、ルリが、ねっとりとした、気持ちの悪い視線を私になげてきた。
やめろ。うっかり、目をつぶしたくなるだろうが。
「でも、お姉ちゃんって、全然おしゃれもしなくて、地味で、ださい服ばっかり着てるし。ほーんと、趣味わるくってー。奪おうにも、ルリだって、欲しくないんだよねー」
いや、どう考えても、趣味が悪いのはおまえだろう……。
「でも、わからせるには、お姉ちゃんの好きな物を奪わないと意味ないよねー? だから、ルリの趣味じゃなくっても、お姉ちゃんが大事に使っている物を欲しいって言うの。でも、すぐ、くれるんだあ。全然惜しくもなさそうで、つまんなーい!」
ルリはそう言うと、不満そうに、頬をふくらませた。
それにしても、ルリの姉は、何故、ルリのそんな態度に我慢してる?
それとも、悟りでもひらいてるのか?
どっちにしても、よほど、心の広い人間なんだろう。
私とは大違いだ。
私なら、そんな態度をとられたら、例え身内だろうが、即座に反撃にでる。
そんな気持ちで、人のものを奪うなら、そいつから全部奪い取って、嫌と言うほど、奪われる気持ちをわからせるくらいのことはする。
もちろん、我が弟ライアンに理不尽に物を奪われたことなど一度もないが。
それどころか、ライアンにはもらってばかりだったな。
まだ魔力のコントールができていない頃、感情が動くたび、よく魔力を暴走させて、物を壊していた私。
父上から借りた本を燃やしてしまい、落ち込んでいると、ライアンがトコトコと歩いてきて、大切にしている絵本をくれた。
母上が飾っていた置物を壊してしまい、落ち込んでいると、ライアンがそこに自分のお気に入りのぬいぐるみを飾っておいてくれた。
ライアンのおもちゃを溶かしてしまい、ものすごく落ち込んで謝ると、ライアンが「あにうえ、げんきだして」そう言って、自分のおやつを食べさせてくれた。
こんな心優しい弟を持つ恵まれた私とは真逆のルリの姉。
気の毒で仕方がない……。
思わず、私の仮面がはがれて、目の前にいる女を素でにらんでしまう。
が、ルリは本性がもれだした嫌な笑みをうかべたまま、話し続ける。
「あ、でも、リュウからもらった髪飾りを欲しいって言った時は、お姉ちゃん、すごく嫌がったんだよねー! だから、絶対欲しいって思った。もちろん、ルリが手に入れたよー。お母様がお姉ちゃんに譲るように言ったから。お母様は、いつだって、ルリの味方だもんね」
母親も最悪そうだな……。
「でも、不思議だよねー。手に入ると、その髪留め、そんなに欲しくなかったなあって思って。1回くらい使って捨てちゃったんだあ…ウフフ」
思わず、この濁りきった笑みを浮かべる顔にむけて、魔力をぶっぱなしたくなった。
が、ルリの姉は、おそらく、私が代わりにそんなことをしても喜ばない人間なのだろう。
私は怒りを極力おさえながら、聞いた。
「お姉様がそれほど悔しがるとは、そのリュウというのは、だれのことですか?」
「あ、リュウは、お姉ちゃんの婚約者だよー! でもね、ルリが、ちょーっと優しくしたら、すぐにルリのことが好きになったんだよね~」
「つまり、お姉様の婚約者も奪ったと?」
「うん。欲しくなったから。でも、簡単すぎて、つまんなかったー。それに、リュウって、顔がいいってわけじゃないから、やっぱり、いらないなあって。お姉ちゃんに返そうと思ったんだけど、ルリのほうが魅力的だから、リュウに愛されちゃってるんだ。リュウは、お姉ちゃんと結婚するけど、リュウは、ずっとルリが好きだと思う。でも、それって、ルリのせいじゃないよね?」
と、自慢げに言ったルリ。
なるほどな……。
婚約者のいたムルダーに厚かましくすり寄り、クリスティーヌ嬢があんなことになっても、なんの反省も後悔もしないはずだな。
この女に、人間の持つ良心みたいなものは、かけらもないようだ。
「ルリ嬢。話を聞けば、あなたはみんなに愛されて、幸せに暮らしていたようですが、どうして、帰りたくないのですか?」
と、肝心の質問をしてみた。
「うーん、色々比べたら、こっちがいいかなあって……」
「例えば、どんな点が良いのですか?」
私の問いに、ルリが、ねっとりとした、気持ちの悪い視線を私になげてきた。
やめろ。うっかり、目をつぶしたくなるだろうが。
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