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しおりを挟む「ようこそいらっしゃいました。」
出迎えてくれたのはまだ年若い執事と数名の侍女。
おそらく兄達とそう変わらない年齢だろう。
執事は名をエリオと名乗った。
「お出迎えありがとうございます。アルヴィア公爵家のシルフィーラです。」
彼らの主であるベルクール卿はいなかったがシルフィーラは出迎えてくれた者達に丁寧に礼を取った。
「ど、どうぞ頭をお上げ下さいませ!」
公爵家の……しかも王族の血を引くご令嬢が使用人である自分達に頭を下げるなどと、夢にも思っていなかったエリオは慌てた。
しかしシルフィーラにとってはこんな事当たり前だ。人に対する礼儀を身分で決めるなんておかしい。それは小さな頃からずっと思っていた事だった。
「ではお部屋にご案内させて頂きます。」
落ち着かない様子でエリオはシルフィーラ達の前を歩き出した。
北方の治安を守るための城はさすが要塞のようだと思ったが、中は意外にも落ち着いた造りになっていた。
長い廊下の窓からは立派な庭園が見える。
「素敵なお庭ですね。……あら?」
広い庭の先に小さな家屋が見える。
作業小屋にしては造りが豪奢なその建物が気になりエリオに尋ねると
「あちらについてはその……後で旦那様からご説明があるかと思います。」
何だか妙に歯切れの悪い答えに違和感を覚えたが、黙ってついて行く事にした。
長い廊下を抜けて着いた部屋はとても広く趣味の良い調度品が揃えられていた。
若い女性が入るから気を遣ってくれたのだろう。シルフィーラはお礼を言いたかったがやはりベルクール卿はここでも姿を見せない。
「ベルクール卿にはいつお会いできるのでしょう?」
しかしこの質問にもエリオははっきりと答えてはくれない。
「まずはゆっくりとお身体を休められるようにと仰せつかっております。」
それだけ言うと部屋を出て行ってしまった。
「お嬢様、何だか失礼じゃありません?」
公爵邸からついてきてくれた侍女のセイラは訝しげな顔をして言う。
「何が?」
「何がって……お嬢様は恐れ多くも王家の血を引く方ですよ?それに結婚を申し込んできたのはベルクール家の方です。それなのにお嬢様が到着したと言うのにも関わらず姿も見せないなんて、一体どういうおつもりなのでしょう。」
「まぁセイラったら、辺境伯のお仕事は過酷で大変だと聞いているわ。きっと今日もお忙しかったのよ。だからそんな事言ってはいけないわ。」
「でもお嬢様、使用人達の態度も何だか……」
「何か気になったの?」
「……何かがおかしい……としか。」
「何かがおかしい?」
「ええ。私達を何か異質なものでも見るような目をしていました。」
セイラの表情は暗い。
きっとこんな遠い所まで来たせいでホームシックになってしまったのだろう。シルフィーラは努めて明るくセイラを励ました。
「気にし過ぎよセイラ。大丈夫。ここの人達とも徐々にうまくやって行きましょう。ね?」
「はい……。」
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