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魔法省新年祝賀パーティー①
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毎年、新年が明けて初登省の前に、王都の一等地に立つ大きな一流ホテルを貸し切っての祝賀パーティーが開催される。
それなりの年齢になってからは何度か母の名代で父のお供として出席した事があるけれど、今年からはレグランの妻として正式に出席する立場となった。
私はその日、母と従姉と一緒に選んだミディ丈でIラインの光沢のあるクリームレモンカラーのイヴニングドレスにレグランの瞳の色を意識したエメラルドのアクセサリー(全部レグランからの贈り物)を身につけて、礼服を着たレグランにエスコートされて会場入りをした。
メイン会場となるホテルの大ホールで魔法大臣と魔法省長官の有り難いお言葉を賜り、パーティーが始まった。
魔法省の権威を物語る華やかな祝賀パーティーではあるが、ここは仕事の場だ。
下の職員たちはただパーティーを楽しめばいいのだけど、役職に就く上の者はそうも言っていられない。
中央や各地から集まった魔法省や関連機関の要人たちへの挨拶、そして情報交換がパーティーの主な目的となる。
私も夫レグランに伴われて彼と共に挨拶に回った。
……当然、副官としてメリッサ・ラミレスさんも一緒に行動する。
結婚式と同じく、今日もラミレスさんはドレス姿ではなく入省時に支給される礼服を着ていた。
彼女は服装に無頓着なタイプのようだ。
口もとに引かれた真っ赤なルージュだけが特別感を醸し出している。
ラミレスさんの中ではきっとそれがドレスコードなのだろう。
「室長、あちらに南部地方局の局長がおられます」
ラミレスさんがレグランにそう言うと、レグランは頷いて「挨拶に行こう」と言って私と副官であるラミレスさんを伴って移動する。
そうやって挨拶をすべき要人たちの元へ行ったり、向こうから挨拶をされたりと目まぐるしく会場を回るのだ。
父の同伴で未経験ではないが、妻としての挨拶回りは初めてなので正直内心いっぱいいっぱいだ。
(あ、ちなみに父は年末から風邪を拗らせて、今回は欠席している)
皆さん、レグランの新妻であると共に本省法務部長の娘である私の顔は知らずとも存在は知っていたようで、初対面の方でも気さくに接してくださった。
でも中には他国に派遣されている高官で、数年ぶりにレグランと顔を合わせるといった職員の中には「え、グライユルが結婚したとは聞いていたが相手はてっきりラミレス女史だと思っていたよ……」などと、“仕事上の妻”という揶揄を素直に解釈していた人物に驚かれたりもした。
まぁすぐに失礼な事を言ってしまったと謝罪をされるけど、笑顔を貼り付けてその謝罪を受けるこちらの身にもなってほしい。
それにやはり当たり前だけど始終会話は仕事の話で、次に職員同士の懐かしい昔話といった私には全く理解できない内容ばかり。
でもそれも仕方ないし当然の事なので別に構わない。
レグランが時々私にもわかるように説明を入れてくれるし、話に入れずとも他所行きの妻スマイル浮かべてただ黙って夫の側に立っていればいいのだから。
だけど、ラミレスさんがまるで水を得た魚のようにこれみよがしにレグランの側で各要人や職員たちと和気あいあいと接し、“仕事上の妻”を遺憾なく発揮しているのには少々…いやかなり腹が立つ。
いやいや、でもここは仕事の場。
これに腹を立てるのはあまりにも身勝手というもの。
レグランの補佐官としての務めを、彼女は果たしているだけなのだから。
……そこに私に対する当てつけとかそう言ったものは無いと信じ……たい……くっ。
雰囲気で私を除け者にしようとしているのを節々に感じるのは私の気のせい、気のせいだと…思いたいっ……くっ……!
それなりの年齢になってからは何度か母の名代で父のお供として出席した事があるけれど、今年からはレグランの妻として正式に出席する立場となった。
私はその日、母と従姉と一緒に選んだミディ丈でIラインの光沢のあるクリームレモンカラーのイヴニングドレスにレグランの瞳の色を意識したエメラルドのアクセサリー(全部レグランからの贈り物)を身につけて、礼服を着たレグランにエスコートされて会場入りをした。
メイン会場となるホテルの大ホールで魔法大臣と魔法省長官の有り難いお言葉を賜り、パーティーが始まった。
魔法省の権威を物語る華やかな祝賀パーティーではあるが、ここは仕事の場だ。
下の職員たちはただパーティーを楽しめばいいのだけど、役職に就く上の者はそうも言っていられない。
中央や各地から集まった魔法省や関連機関の要人たちへの挨拶、そして情報交換がパーティーの主な目的となる。
私も夫レグランに伴われて彼と共に挨拶に回った。
……当然、副官としてメリッサ・ラミレスさんも一緒に行動する。
結婚式と同じく、今日もラミレスさんはドレス姿ではなく入省時に支給される礼服を着ていた。
彼女は服装に無頓着なタイプのようだ。
口もとに引かれた真っ赤なルージュだけが特別感を醸し出している。
ラミレスさんの中ではきっとそれがドレスコードなのだろう。
「室長、あちらに南部地方局の局長がおられます」
ラミレスさんがレグランにそう言うと、レグランは頷いて「挨拶に行こう」と言って私と副官であるラミレスさんを伴って移動する。
そうやって挨拶をすべき要人たちの元へ行ったり、向こうから挨拶をされたりと目まぐるしく会場を回るのだ。
父の同伴で未経験ではないが、妻としての挨拶回りは初めてなので正直内心いっぱいいっぱいだ。
(あ、ちなみに父は年末から風邪を拗らせて、今回は欠席している)
皆さん、レグランの新妻であると共に本省法務部長の娘である私の顔は知らずとも存在は知っていたようで、初対面の方でも気さくに接してくださった。
でも中には他国に派遣されている高官で、数年ぶりにレグランと顔を合わせるといった職員の中には「え、グライユルが結婚したとは聞いていたが相手はてっきりラミレス女史だと思っていたよ……」などと、“仕事上の妻”という揶揄を素直に解釈していた人物に驚かれたりもした。
まぁすぐに失礼な事を言ってしまったと謝罪をされるけど、笑顔を貼り付けてその謝罪を受けるこちらの身にもなってほしい。
それにやはり当たり前だけど始終会話は仕事の話で、次に職員同士の懐かしい昔話といった私には全く理解できない内容ばかり。
でもそれも仕方ないし当然の事なので別に構わない。
レグランが時々私にもわかるように説明を入れてくれるし、話に入れずとも他所行きの妻スマイル浮かべてただ黙って夫の側に立っていればいいのだから。
だけど、ラミレスさんがまるで水を得た魚のようにこれみよがしにレグランの側で各要人や職員たちと和気あいあいと接し、“仕事上の妻”を遺憾なく発揮しているのには少々…いやかなり腹が立つ。
いやいや、でもここは仕事の場。
これに腹を立てるのはあまりにも身勝手というもの。
レグランの補佐官としての務めを、彼女は果たしているだけなのだから。
……そこに私に対する当てつけとかそう言ったものは無いと信じ……たい……くっ。
雰囲気で私を除け者にしようとしているのを節々に感じるのは私の気のせい、気のせいだと…思いたいっ……くっ……!
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