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第二部 第四章
1 六芒星
しおりを挟む「一体これは……ってまさかのアレがついに始まったと言うのかよ⁉」
「……ああそうなのかもしれないねぇ。到頭ローズ、いやヴィヴィアン様じゃないか。ローザ・アウレリアーナの覚醒って奴だろうね」
それは突然始まった。
ここより北にある強大な国家エアルドレッド帝国のあるモンクリーフ大陸を中心としてだと思われる。
東に位置するここアンテス大陸にある弱小王国ローマンの王都よりも更に遠い端っこにあるつい先日までは寂れた街ヴェルデとして、ローマン王国人でも余り知る者のない街であったと言うのにである。
今ではヴィヴィアンの家出した先で作られし魔獣ホイホイとその協力者であるゾエラちゃん達のグッズで以前とは比べようもない程に活気溢れる街へと発展を遂げた。
そのヴェルデにある冒険者ギルド内で異変を察知したのは全ての冒険者の憧れの存在であり、sss級ランクの冒険者または勇者の中でもトップ6名だけに与えられる称号六芒星である焔鬼のジークと翆鬼のフェンだった。
「多分エアルドレッドが中心点だろうな」
「それにしてもこんな遠くまでって一体あの御方達の力ってどれだけなの」
「さあな。それこそ神のみぞ知る――――って奴じゃねぇのかよ。俺達人間が立ち向かえる相手ではないって事くらいの理解は出来るけれどよ」
「それでも只人である人間の、あたし達が六芒星である限り逃げる事は許され……ない」
「ああそうだ。俺達六芒星は逃げる事なんて最初から許されてはいねぇ。俺達が今こうして生きていられるのはあの御方があってこそだかな。また六芒星に選ばれた時点で裏切りは即死を意味する。抑々俺は選ばれたから六芒星になったんじゃねぇよ。俺自身が受け入れ選んだからこそ焔鬼のジークとして立っているんだ」
「ジーク……」
「そう言うお前はどうなんだよ」
「ああそうだね。アタシもさ。事情は色々あるけれどね。それでも今こうして翆鬼のフェンとして立っているのはアタシ自身が選んだ道だよ。アンタみたいな面倒な男の相手をしているのも……ね」
「ああ゛? いい加減な事を言うんじゃねぇよ。何時何処でだ!! 何時何分何秒お天道様が何回昇って沈んだらそんなクソみたいな事をほざけるんだよっ」
「は、そう言うお子様みたいな所が……っていう事さえも気づかないだから世話ないねぇ」
「お子様って俺とそんなに年齢も変わらないだろうがあああああああ」
「はいはいお子様ジークちゃん。そろそろ出発するわよ。遅れたら残りの連中……特にバートやメイが煩いんだからね」
「あーメイよりも俺はバートが超怖いっっ。あの片眼鏡越しに光る深い緑色の冷たい瞳がめっちゃ怖ぇえよ」
「わかったのならとっとと扉を開いて頂戴」
「え、転移すれば――――」
「馬鹿ね。力は少しでも温存しておくに越した方がいいでしょ。幾ら底なしの魔力があるとは言えど今からアタシ達が立ち向かう相手は人間でも魔獣でもないんだよ」
「古の神々……か」
「わかった? 普通に人間が勝てる相手じゃない。でもアタシ達は――――」
「六芒星、冒険者である限り目の前の困難から逃げるなんて出来っこないよな」
「そう……ね」
出来得る事ならば逃げたかった……と言うフェンの心の言葉はジークには聞こえない。
そうして二人はヴィヴィアンいや、嘗てローザが作りしどこ〇〇ドアを取り出せばである。
ここより遥か先……彼方に広がるだろう地平線の向こう側まで既に重苦しい程の曇天の中心。
灰色から黒へ、きっと帝都一帯は漆黒の闇へと化しているだろう場所。
こちらからでは一体その先で何が怒っているのかはわからない。
でも二人は一切迷う事無くだ。
この日の為にと決められし場所へ向かって扉の向こう側へと足を踏み入れたのであった。
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