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第二部 第三章 それぞれの真実と闇
20 隠されたもう一つの真実 メルチェーデside
しおりを挟む「私は遥か遠い彼方なる過去でインノチェンツァにより、彼女が一方的に恋い慕っているガイオを何としても手に入れる為だけの贄とされたのです」
「贄? はあ? いやいや私の知る話ではお前はお前へ勝手に恋慕し結局のところ袖にされ、そうして逆恨み的に人間へ作らせたと言う神殺しの剣で以って熾火の神アーマトにより封じられたのであろう」
そのお蔭で私とローザは少なくともお前を狂わんばかりに――――ってお前を失った後にしっかりとあいつは狂っていたな。
無自覚のままダーリアを愛していたヘタレ野郎のエレウテリオは勿論そう捉えている。
だからその余波で今の私とローザはこの呪われた転生を強制的に繰り返している途中と言うのか、最早終着地点が何処にあるのかが全くわからん!!
大体エレウテリオのヘタレ野郎がさっさと目の前のダーリアを妻神へと迎え護っておれば……と今更数千年前の愚痴を申しても詮無き事。
私はゆっくりと嘆息しつつ顎をしゃくればダーリアへその先を促した。
するとダーリアはゆっくりと頷けば静かな口調でまた話し始める。
「一つお伺いしたい事があります。メルチェーデは熾火の神アーマトの存在を知っておられますか?」
「お前を封じたと言う事ならば知っている」
「それだけ? ではその者の姿や直接対峙した事はありますか?」
「何を……聞くのだ?」
「私はただの事実確認の為にお聞きしているのです。嵐だけでなく炎の女神でもあられる貴女だからこそですわ。熾火とは申せ彼が存在するのであらば同じ火を司る神なのですもの。きっと貴女程の神格のあられる女神ならば全ての火に係わる神を掌握されておられるかと思った次第に――――っ⁉」
「まさかとは思うが私がお前を封じよと、その熾火の神とやらにこの私がか⁉ この私がその様な戯けた事を命じたとでも言うのではあるまいな。今は人の身へと堕ちたとはいえ事によっては赦されはせぬぞダーリア!!」
私は地を這う様な恫喝めいた……いや、ここはしっかりとダーリアへ恫喝していた。
それはそうだろう。
万が一この下らん戯言を真実なのだとこの数千年もの間思っていたのであれば、私はただの人間の身であろうとも今直ぐダーリアを屠る事に何の躊躇いもせずに行動へと移していたであろう。
何故なら元とは言えこの嵐と炎の女神メルチェーデを貶める言葉としては十分過ぎるものだからだ!!
私は断じてその様な姑息で卑怯者の様な真似は絶対にしない。
相手へ何ら思うところがあるとするならば私は人を介さず正々堂々と己が自身で以って罰を与えるなり向き合う事をするだろう。
それこそがこの私――――メルチェーデとしての矜持であると同時に生き様なのだ!!
「……ふふ、良かった。貴女が私の知る貴女のままで安心をしましたわ」
「私は何も安心どころかお前の物言いで随分と気分を害している」
憮然とした面持ちで文句を言う私とは違い、ダ―リアは心の底より安堵したと言う面持ちと見覚えのある懐かしい花の綻ぶ様な笑みを湛えていた。
「きちんと包み隠さず全てを話すのであろうな」
少しまだ疑いの眼差しで見つめる私へダーリアは……。
「勿論です、そうでしょうガイオ」
「ああ、そうだな」
扉を上げて入ってきたのはローザの、華の主治医であった上村 結人――――いやガイオだった。
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