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第一部  第二章  五日後に何かが起こる?

8  この時の為に…… Ⅱ

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 そうヴィヴィアンにはサブリーナがこの時期にやって来る事をあらかじめ予想が出来ていた。
 だからそれまでの間に一皇族として公式行事や来賓が来るだろうスケジュールも故意的に操作もしていたのだ。
 

 決して我儘を言っていると言う訳ではない。


 公爵夫人としての務めを両立しているからこそ、宮殿の内務の者とのスケジュール調整の折にほんの少しだけお願いをしただけである。


 その結果後二ヶ月の間は何とか大きな行事はなく、あるとしても施設等への慰問のみ。

 またヴィヴィアンはほんの少しずつだが側妃Sを伴ってこれまで色々と教えてきたのである。
 

 勿論理由何て人間切羽詰まればどうとでも言えるのだと、ヴィヴィアンは何度目かにしてしっかりと悟ったのだ。


 このまま今日明日はヴィヴィアンは公爵邸で実務をして過ごし、三日目は孤児院と病院への慰問へ行く事となる。

 そうして四日目は――――……。


「ねぇナタリー」
「はい、何か御用でも奥方様?」

「あ、そ、そうね、特別用が――――あ、そ、そうそうお昼時にシンディーが話していたでしょ。サブリーナ嬢について……」

「は、はあそうで御座いましたね」

 ナタリーは思いっきり両肩を脱力させて返事をした。
 

 それもそうだろう。

 怒り心頭状態のシンディーが執務室へやってきた内容と言えば、余りにもサブリーナの欲深過ぎる要求にシンディーだけでなく屋敷内にいる者達は皆辟易としていたのである。
 

 まあバークリー医師の機転で明日の昼まではしっかり熟睡する様にはして貰ったものの、その余りの要求の多さに一体何様の心算なのだと誰もが心の中で激しく突っ込みを入れていた。

 それを知らないのは寝ている本人ばかりなり……。


 とは言え確率は低いとは言えど万が一と言う事もある。


 扱い難い相手、然も相手は妊婦。

 誰しも関わりを持ちたくないと思い、当然ナタリーもその中の一人であった。
 だからその名を聞いて思わず主の前だと言うのにも拘らず出てしまったのは溜息。


「ふふ、大変ね。そしてごめんなさいね、嫌な事ばかりお願いして……」
「い、いいえ奥方様こそお辛い思いをしてらっしゃるのでは――――」


 そう、万が一サブリーナの胎の子の父親がリーヴァイだとすれば、それはすなわち妻であるヴィヴィアンへの手痛い裏切り。


 幾ら貴族で愛人や恋人、それも皇族であれば側妃や公妾もOKなのである。


「大丈夫。私は平気ですよ」

「え、あ、そ、そうなのですか?」


 可笑しい確か夫婦仲が良かったのでは――――と、ナタリーは心の中で一人突っ込んでみる。


「ええ、それよりもサブリーナ嬢の望む通りにして差し上げて下さいね。だってあの方がこれからの公……い、いえっ、何もなくてよ。さ、さあもう休もうかしら。ふふ、この様な時間に休めるなんて本当に久しぶりね」

 そう言ってヴィヴァンは寝室へと朗らかに微笑みながら向かっていく。

「本当にっ、奥方様は働き過ぎなのですよっ。お願いに御座いますからもっとお身体をご自愛して下さいませ」
「そうですね、後もう少ししたら今度こそゆっくりと過ごさせて頂くわ」
「本当にで御座いますよ」

 念押しの心算でナタリーはヴィヴィアンへ願ってしまう。

「ええ、約束するわ。だってその為にこれまで頑張ったのですもの」

「? え、あ、はい、お約束ですからね。ではお休みなさいませ奥方様」
「お休みナタリー」


 そうしてゆっくりと静かに扉は閉められていく。

 ふかふかの寝台の中でヴィヴィアンは一人心の中で静かに決意する。

 
 今度こそっ、そう!!
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