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第一部 第一章 突然の訪問者
7 制裁 シンディーside
しおりを挟む「あ、あんた一体何様なの!?」
阿婆擦れ……もといサブリーナの周囲には男故に感じずにはいられない。
無様に床の上をゴロゴロと情けなくも両手でその一部をしっかりと抑え、余りの痛みに声も発せられず静かに悶絶するしかない子息達の中で臆する様子もなく堂々と彼女は腰に手を当て、ない胸を――――とは言ってもまだ7歳なのだからなくても当たり前ですね。
しかしそのぺったんこな胸をこれでもかと前へ張り出したかと思えば、私に向かって恫喝めいた物言いをしてきたのです。
ええ、早い話が喧嘩を吹っかけてきたのですよ。
まあその時点でこの私に対し物言いをする度胸は認めましょう、まあ度胸だけは……ね。
「こ、答えなさいよ!! わ、私はこの伯爵家の一人娘であるサブリーナ・アビゲイル・スウィフトよ!! 大体今日の招待客で私と同列で対等なのは――――……」
そう言いながらサブリーナは、目の前で今も絶賛悶絶しているカーク子息を何とも蔑みと恨めしげな眼差しで一瞥しました。
多分『役に立たない奴』とでも思っているのでしょう。
ええ、それから先に申し上げておきますよ。
最初に噛み付いたのはサブリーナの方です。
「だ、だからここにいる時点であんたは私よりも身分は下なのでしょ!! な、なのにこんな狼藉が許されるとでも――――⁉」
「では、身分が上ならば何をしても……譬え幼くとも女性として、人としての尊厳を踏み躙られるのを大人しく無抵抗のまま受け入れよと申されるのですか」
「そ、それの何が悪いのよ。大体あんた達の身分が低い方が悪いんじゃない!!」
「確かに身分はそう高くはありませんがしかし人として、また一貴族としての矜持を持って私は生きております」
「な、何が矜持よっ、そんなものなんか権力でどうとでも――――」
パチ――――ンン!!
「はあ⁉ あん、た、何を……」
「煩い、少しは黙れこのバカ女」
パチ――――ンン!!
先程から溜まりに溜まった胸糞悪い出来事に加え、サブリーナの暴言がついに私の堪忍袋の緒を切ってしまったと言いますか、きっとぶちぶちに細かく切り刻んで歩いているのでしょう。
それはもう再生不可能な程に……ね。
本来ならば周囲で転がっている子息共々急所を蹴り上げて――――と、残念ながらサブリーナには対象となるモノがなかったですね。
ええ、先程の愚行は男故のものかと思える程に、あの下品な物言いと行いは到底同性とは流石の私でも思えなかったのですよ。
また諄いようですが最初にこの私へ噛み付いたのはサブリーナなのです。
そう、私は突如躾けのなされていない化け物が何度も噛み付いてきた故、それに対し正しい対処をしたに過ぎないのです。
「し、信じられない!! い、今まで……お、お父様やお母様にも打たれた事なんてないのにっ、な、何で他人のあんたなんかにぃぃぃ〰〰〰〰!!」
そう言ってツインテールに括られたキラキラと輝く白金の髪と澄んだ水色の瞳からはボロボロと涙を溢れさせ、またしても懲りずに私へと今度は直接掴みかかってきたのです。
まあ伯爵令嬢としての品格は最悪ですが、この私へ挑みかかる根性だけは認めてあげましょう。
そしてその根性と度胸に見合う分だけの罰を受け取るがいいのです。
因みに今日の私のドレスはこういう展開を望んだ訳ではないのですが、何故か身体を動かすには十分過ぎる程の伸縮性のある素材で仕立てられたものです。
大体こういう素材で仕立てるのは我が父親に相違ありません。
理由は至ってシンプルですよ。
お母様ならば決してこの様な素材でのドレスを仕立てようとは少しも思わないのですからね。
脳筋の父親と深窓の貴族令嬢の母親――――と言った具合ですかね。
だからサブリーナが掴みかかってきた際には難なく躱し、そしてその華奢な身体へ少し力を込めて膝蹴りを入れようとした瞬間――――。
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