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第五章 じわじわと
12 板挟み Ⅱ
しおりを挟む私は一介の准看護師であり何某かの責任を負う管理職でもなければ国家免許を持つ正看護師でもない。
なのに責任を持って仕事って――――そりゃあ看護師として命と向き合う仕事をしていますよ。
それなりに自分の仕事に関しての責任感は持っていますと言うか、その心算です。
でも私の思う責任と看護部長の求める責任とは何故か大きく異なっている。
ましてリーダーとなり透析センター内のスタッフを取り纏め、センターを円滑に回していこうともである。
そこへ付随するだろう手当と言うものは一切発生等する訳もない。
いやいや何も金を寄越せと言っているのではない。
毎日の激務の末に人心までもを纏めろと強要するのであれば、普通にそれなりの報酬は発生しても可笑しくないだろうかと私は思う。
それに第一何も好き好んで自ら――――。
私にリーダーをさせて下さい!!
何て言葉を私から発した事は一度たりともないのである。
出来得るならばそんな事よりもである。
世間一般的に穏やかで静かな日常を望んでいるのだ。
毎日が問題なく無事に過ごせるよう。
多分もう無理だとは思うが出来れば透析をちゃんと学ばせて欲しい。
真実この二点だけである。
まあ何れかの内一つでも願いが叶っておれば、きっと鬱を発症する事はなかっただろうね。
そして私が倒れるまでこの願いは一度も叶う事はなく、いや益々状況は最悪へと向かってエスカレートしていくばかりだった。
しかし無力な私が何もしなかった訳ではない。
それはもう必死に置かれた状況に対して足掻いてみせたのだ。
だが足掻けば足掻く程に足元は藻に絡まれ、次第に力が尽きて溺れてしまったのは結果論である。
先ずその改善として行ったのがカンファレンス。
透析センターの恒例行事となっていたリーダーより一方的な連絡事項発表会ではなく、スタッフそれぞれの意見を出し合う事で独裁国家より民主主義国家へ移行させようと思ったのである。
そして司会進行をリーダーのみではなく、Bチームに属するスタッフの順番制にしようと思った。
出来る事ならば当番となる司会進行係は何か一つ、そうそれはどんな事でもいい。
何も最初から大きな議題を何て事は望んではいない。
ほんの小さく気付いた事。
またはちょっとした思い付きや業務の中で困っている事を議題と挙げ、皆でそれについての意見をディスカッションしていく。
現在Bチームに属している看護師は皆アクが強いと言うか個性が極端に強過ぎる。
それに比べてMEの男の子達は何故か草食系、然もふわふわと風に棚引いているだろう牧草タイプである。
文句を言うのは何時も看護師で、ただ言われるままに仕事をこなすMEの男の子へ少しずつでもいい。
自主性を持って欲しかった。
それこそ本来の私の仕事ではないのかもしれない。
でも人員を纏めろと望むのであればここの成長を促すのは当然の事。
そして司会進行役や自分の意見を自分の言葉として発する事により、少しずつでもいいからお腹の中から声を出し自分の意志と意見と言うものを持って欲しかったのである。
また桜井さんと鷲見山さんを始め、Aチームから移動してきた大崎さん……詳しい理由はわからないけれどもである。
どうやら彼女はAチームより追い出されてしまったらしい。
院長とその院長と仲の良い大岩さんとの間で何度かトラブルがあったとか。
確かに性格はかなり個性的だと思う。
そしてその行動も……先日の出前騒動の際にも派遣の二人と一緒にうどんを啜っていた内の一人。
どうにも考えの読めない女性。
不思議ちゃんタイプかな。
その三人にも出来ればスタッフ間での協調性と言うものを持って貰いたかった。
何しろ派遣の二人は常勤の看護師に比べて負う責任は少ないから何でも言いたい放題の我儘大魔獣なのである。
この仕事において常勤と派遣の責任の大きさなんて関係ないとは思うけれどもだ。
本人達はそう捉えていた。
然も34歳と40歳のいい年をした大人がである。
それから思いついた事を理性で抑えず何でも声を発してしまう自由さ。
その行動の自由さは九州女性にありがちなものなのだろうかと、一時期真剣に思い悩んでしまった。
ここの看護師とMEの男の子を足して二で割ればちょうどいい塩梅になるのに……ね。
因みに藤沢なんは最早ドンであるからして、改善の余地は最早ないと思った故にスルーとした。
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