冷淡騎士に溺愛されてる悪役令嬢の兄の話

雪平@冷淡騎士2nd連載中

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偽りの強さ

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「そうか、その時を楽しみにしている」

「うん!」

「じゃあ俺は騎士の仕事に戻る、ライムは残りの授業頑張れよ」

カイウスは先に脱衣室を出て、俺もカイウスの少し後に出た。

教室に戻ると、クラスメイト達がいっせいに俺の方を向いた。
好意的な目がいくつかあったが、ほとんどは睨んでいる顔だ。

俺に対して「カイ様は疲れていたから互角だったんだ」とか「調子に乗るなよローベルト」などと言う声が聞こえる。

いつもの事だから気にせず、自分の席に向かった。

なんかゴミが置いてあって汚れている、くすくすと笑う声が聞こえる。
言いたい事があるなら直接俺に言えばいいのに、やり方が女々しいな。

先生が俺のところまで来て「早く片付けろ」と怒られてしまった。

ゴミをゴミ箱に捨てて、机を綺麗にしてやっと授業を受けられた。
その瞬間を見計らったように俺を指名されて黒板の前に立った。

頭は悪くないから、何とか出来たが指名した先生が残念そうだったのが気になった。

そして授業は終わり、今日は部活が休みだからそのまま帰ろうと思った。

しかし、校舎の前で見た事がある顔がいて後退った。

あれは妹と黒子だ、なんでこんなところにいるんだ?

ここに用という事は俺に用なのだろう、ろくな用ではない。

妹達が帰るまで学校に居ようと思ってずっと後退っていたら、背中になにかがぶつかった。

「ご、ごめんなさいっ」

「いって…テメェ!!」

上級生だろうか、俺の胸ぐらを掴んで殴ろうとするから条件反射で止めてしまった。
それに逆上した生徒は、仲間に顎で指示を出して俺を羽交い締めした。

身動きが取れなくなった俺の前で、腕をボキボキと鳴らしていた。

さっきの妹達に見つかるよりも、殴られる方がマシだなと思った。

頬に衝撃が走り、口の中が切れて鉄の味が広がった。

「これからは気をつけるんだな!」

上級生が去っていき、頬に走る痛みと空になった財布だけが残された。

どうしよう、今日…夕飯の材料買おうと思ってたのにお金ないや。

まだ妹達が外にいると思うから、医務室で手当てしてもらおうと向かった。

先生はいなくて棚から消毒液とガーゼなどを取り出して、自分で手当てする。
鏡を見ながら手当てした方が綺麗に出来るかもと思い、医務室にある洗面台にある鏡を覗いた。

頬が少し赤くなり、口の端が切れて血が滲んでいて痛々しかった。
カイウスにバレたら心配させるよな、消毒液が湿った綿でちょんちょんと傷口に触れるとピリピリと痛かった。
ガーゼをなるべく目立たないように小さくして、口の端に貼る。

転んで出来た傷って言ったら信用するかな…カイウス鋭いからなぁ…

とりあえず手当ては終わり、消毒液を元の棚に戻してから医務室を後にした。

外を見ると、もう妹達はいなくて諦めてくれたんだとホッとして帰る事にした。

ご飯が食べれないと思うと余計に腹が減り、ぐぅ~と鳴らす。

カイウスに食べさせてもらおうかな、お金が入ったら俺がカイウスにご馳走するから今だけ…

「ライム・ローベルト」

俺のフルネームを言われて、背筋が冷たくなり嫌な汗が流れる。

まさか、と思いながら後ろを振り返ると上から人が降ってきた。
その身のこなしはまるで忍者のようだった。

何処にいたのか、黒子が二人俺の前に現れた…妹はいないようだ。
妹がいなくても妹の用事で俺に会いに来たんだと分かる。

黒子二人に腕を引っ張られて、痛かったが足に力を入れて抵抗した。

「サクヤ様がお呼びだ、来い」

「い、やだっ…俺はっ」

「ローベルト卿に認められたくはないのか?」

黒子から見たら、実の父に自分を見てほしくてわがままを言っているように見えるのだろうな。
正直、父が俺を道具として使い罪のない人を悲しませるなら認めてもらわなくてもいい。

学校に行かせてくれた事は感謝している、辛い事はあるがカイウスと過ごせる時間が増えたから…
でも、だからって俺は闇堕ちなんて絶対にしない!やっとカイウスへの想いが届いたのに…

夢に見た悪役の最後を思い出す、俺は今を精一杯生きるんだ。

黒子は俺の気持ちなんて一ミリも興味がないのだろう。
頭から全身に布を被されて急に体が浮いて、すぐに黒子に担がれたんだと分かる。
ジタバタ暴れても下ろしてくれず、周りの声もだんだん遠くなる。

人混みに見られたらいろいろと面倒だから、遠回りで家まで運んでいるんだろう。

「ローベルト卿が今日お帰りになられる、まずはお前の力がどのくらい強くなったかお見せしろ」

「俺の力なんて、そんなのはない!」

布が厚いのか、俺の声が届いていないように感じた。
相手の声は聞こえるのに、もどかしい。

どんなに俺に期待したって、一般兵並みの力が限界だ…今はそれ以下だし…

この世でカイウスに勝てる奴がいたら、それはカイウス自身しかない。
なんで皆、分からないんだ…俺なんてただのお飾りなのに…

目的地に着いたのか、体が大きくブレて目の前が見えないから怖かった。
地面に投げ捨てられる!と顔をガードしたが、その衝撃はなかった。

誰かに体を支えられていて、布袋を外された。

「可愛い顔が出てきた」

「…カイウス」

カイウスは暴れて乱れた髪を撫でて直していた。

なんでカイウスがここにいるんだ?いや、それよりもカイウスの髪が黒い。

またカイウスの暴走だ、そしてカイウスの後ろには原形が分からなくぐちゃぐちゃになったものがあった。

でも、何も異変はなかった…悲鳴も聞こえない…あるとすれば体がブレた事だけだ。

俺の髪を撫でているカイウスのもう片方の手を見ると、真っ赤に濡れていた。
俺の視線に気付いたカイウスは、片手を背中に隠した。

「汚いものを見せてごめん、ライムに話しかける喉に嫉妬して最初に潰しただけだから」

「……」

爽やかに笑って恐ろしい事を口にしていた。

とりあえずカイウスを元に戻さないとと、カイウスにバレないように下から腕を伸ばしていたがバレて掴まれた。

カイウスの顔色を伺うと、眉を寄せて怒っているカイウスがいた。
そんなに元のカイウスに戻るのが嫌なのか?どっちもカイウスだけど、このカイウスは少し怖い。

でもカイウスが怒っていたのは俺ではなかった。

俺の唇横にあるガーゼを舐めていて、直接ではないから痛くない筈なのにちょっとピリッとした。

「…ライム、アイツらに傷を負わされたのか?」

「ち、違う…これは転んで」

「そうだな、ガーゼをしているからアイツらではないか…じゃあ誰だ」

カイウスは俺が誰かに傷を負わされたと確信しているみたいだ。
必死に俺が「転んだ!」と言っても「誰にされた?」としか聞いてこない。

あの上級生を庇うわけではないが、もし万が一カイウスが悪魔の正体だってバレたら大変だ。
カイウスは全く気にしていないみたいだけど、この帝国の希望なんだからそんな事あってはならない。

カイウスが犯人を見つけようと動こうとするから、両手をカイウスに掴まれていて抱きしめる事は出来ないがカイウスの前に体を出して止めた。

カイウスなら、俺の抵抗なんて腕を一振りしただけで振り払えるだろう。

でも優しい気持ちが残っているカイウスはそうしなかった。

「本当に転んだだけなんだ…だから犯人探しなんてやめて…ね?」

「……分かった」

「カイウス…」

「じゃあ、悪い子になっちゃったライムにお仕置きしなきゃいけないな…ねぇ、ライム」
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