罪深き凡夫らの回旋

まる

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第三章

N3

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 そろそろ冷え込んできたその日は、ランディが城から帰って来ない予定だった。王子様のご来訪も無い。
 そしてユーニスから聞いた通り、メイナード・ラッセル・マクスウェルは自邸に居た。窓に明かりがついているのでそうだろう。
 恐ろしく豪勢というものではないにしろ清貧さは窺えない屋敷を見上げ、私は肩を竦めた。
 三つの条件をクリアするのはなかなか厳しいのだ。しかし王子様のご来訪は減りつつある。結婚するからだろう。
 私はマクスウェルの部屋の位置も聞いているし、屋敷の間取りも知っていた。しかもユーニスはご丁寧に使用人出入り口の鍵やマクスウェルの私室の鍵まで用意してくれた。あの男の娘は有能過ぎて怖い。
 覆面を着けてこっそりと屋敷に侵入すると、邸内は静まり返っている。そんな時間だ。ただ、マクスウェルはそこそこ長くまで起きているらしい。私にとってはクソどうでもいいトゥオミ教の研究だか、クソどうでもいい書物だか読んでいるようだった。
 簡単に部屋に辿り着き、簡単に室内に入る。簡単すぎて、むしろもう少し警備をしっかりした方がいいんじゃないのかと思うくらいだった。
 しかし鍵の開いた音には気づいたのだろう。
 休憩でもしていたものか、こちらにしてみれば都合よく机の前に突っ立っていたマクスウェルが私を見た。
 煌々としているとは言い難い程度の灯りの中、目が合うのが分かった。
「おまえは……」
 マクスウェルの声は想像していたより低かった。
 私はふかふかの絨毯を蹴って彼の方へと向かった。まあ、襲い掛かったというやつだ。
 ひょろい聖職者一人程度、どうにでも出来る。呼び鈴のようなものに伸ばした手を引っ掴み、引き寄せて当て落とす。
 それを荷物のように担いで隣の寝室に運んだ。
 明かりをつけ、マクスウェルの口に布を詰め込んで猿轡を噛ませ、全裸に剥いて俯せにし、右手首と右足首、左手首と左足首を縛り、脚を閉じられないよう足首に棒も渡して括り付けておく。ベッドに埋まる顔を支えるものが無くて苦しそうだったが、知ったことではない。窒息されないよう一応横には向けておいた。隣室の暖炉に火を入れ、たっぷりと薪をくべて、町で調達したアイテムも入れる。
 それで……後は。
 私はじっと、初対面と言えばその通りであるマクスウェルを見下ろした。
 まだ若い。その地位にしては、という意味だ。出自も良いらしいし、叩き上げとは言えない。全く苦労しなかった訳ではないのは、ユーニスから聞いている。が……こちらにしてみれば言いがかりのような根拠で、一族をほぼ根絶やしにしてくれる権利は無い。
 ほぼ……では無いか。私一人残っていても、どうにもならない。遠からず私が死ねば、この男の望み通り、両性具有の悪魔の一族はこの世から消え失せる。おめでとう。
 私はベッドの横に立って顔を覗き込み、乱れた前髪をマクスウェルの額から払ってやった。
 王子様やランディのような迫力すら感じさせるレベルの美形ではないが、清潔感のある端整な顔立ちだった。神経質そうだが。変なものに触ったら血が出る程手を洗ったりしそうだが。
 まあ、三十代後半の、おっさんと言えばおっさん。だ。
 腹の出た脂性の醜い中年男ではなかったことは神に感謝しよう。トゥオミ教以外の神に。
 ふん、と笑い、用意してきた潤滑油を放り出し、私は上衣の前を開け、下衣の前も開けてペニスを出した。別に見せたかないが仕方ない。そうでなければ意味がないだけだ。
 そのうちマクスウェルが目覚めた。
 ゆっくりと上がった瞼が、幾度か瞬かれる。
 その視線が私を捉えた。
「んんっ」
 くぐもった呻き声。
 目を瞠っている。そりゃそうだ。ありとあらゆる意味で驚くだろう。
 今後枢父と伯爵夫人が遭遇する可能性はある。声は聞かせないつもりで、とりあえず視界に入るよう胸を見せて、股間も見せてみる。
 マクスウェルが黙ってまじまじと凝視してきた。
 何だか何な気持ちで大人しく見られておいたが、暫くするとマクスウェルは困惑でもするかのような間を振り払って強く眉を寄せ、嫌悪と憎悪も露わに私を睨みつけてきた。
「んんんん!」
 この化け物? この悪魔? 訳せば大体そんな感じか。
 声を出して笑いそうになり、慌てて抑えた。
 さてやろうかと、否が応でも晒されている器官に潤滑油をぶっ掛けておく。
「ッ!?」
 マクスウェルが驚きも露わに呻き、じたばたしようとした。しかしばたつくのには難しい体勢だ。というかもう、犯される以外に何もないような体勢だった。
 多少面倒くさい気持ちと共に、肛門に指を突っ込む。
「ンンッ!」
 びくっ、とマクスウェルが体を揺らした。教会など当人が好もうが好まざろうが男色の温床だ。しかもこの顔なのだ。
 行為自体は慣れてるんじゃないの? と思いつつ穴をぐりぐり弄ったが、実際狭くてつい首を傾げた。
 傾げつつ、仕方ないのである程度丁寧に解す。
 まあ、派手に裂いてやってもいいんだけど……と方針に少し迷いながらも、前立腺をぐりぐりする。
「んっ、っ、う」
 びくっ、びくっ、と体を揺らす。
 憎しみの表情も見えないし、罵倒が聞こえるでもない。こちらも声を出せないので罵倒できない。
 これはちょっと飽きるね、と思いつつ穴の中を弄り、もう片手で会陰を撫で下ろして袋を揉む。しんなりしていた陰茎がその刺激で少しばかり硬くなった様子なので、手で扱いた。
 射精させると、マクスウェルが絶望感たっぷりに呻いた。
 前の刺激と連動したか、アナルは少し緩んでいる。
 まだ裂けるだろうかと具合を見つつ、指三本を入れて回転させて拡げた。
「っ、うっ、んんっ、っ」
 呻きつつ、マクスウェルは拳を強く握り締めている。
 こういうのも受難というか試練の一つとか思っちゃうのかね……と考える。問い掛けてみたいがそれは出来ない。
 でも撥ね退けてこそだろうから、ずっぽり犯されたらどうなのかね……とも。抵抗できない状況だったから、というのは言い訳として通用するのだろうか。
 少し赤く腫れたようなアナルに、四本も指を突っ込みながら、色々考える。こんな状況ではさほど興奮もしない。
 肉穴はぐちゃぐちゃと卑猥な音を立ててはいる。せいぜいそれに幾らか煽られるくらいだった。もう少しくらい抵抗されそうな体勢にすりゃ良かったかな……と思う。
 しかしもう入りそうなので、入れておくことにした。
 指を引き抜き、一応顔を覗き込んでみる。
 マクスウェルは荒く息をしながら、顔を真っ赤にし、鼻水まで垂らしつつ、殺意が形になったら私に今突き刺さっているだろうという目を向けてくれた。ただし涙目だった。
 その顔を確認してやる気が出た。少し自分で扱くと、化け物ペニスが凶悪にそそり立つ。
 一応それを見せてみると、マクスウェルがざあっと音がしそうに青ざめた。面白かった。
「んんんっ!」
 必死に体を揺らし、どうにか逃げようとするのを押さえつける。
 先端を穴に押しあててぐじぐじと撫でてみると、恐怖のせいか締まっている。無理もない。
 無理も無いので、袋やら陰茎を優しくさすってやる。
「っ、んっ、んっ」
 マクスウェルが不自由な姿勢で首を振る。
 暫く続けていると穴が緩んだ。ので、ゆっくりと押し込む。
「んんんんっ!!」
 マクスウェルがくぐもった悲鳴を漏らしているようだった。そして括約筋が邪魔くさかった。
 少し力を入れると、めりめりとそこが開いた。指が四本入ったのだから、幾らか開き易くはなっていただろう。
 ずるん、と先端が入る。
「ッッッッ!!」
 声にならない悲鳴が聞こえた気がした。
 ゆっくりと腸内に押し込むと、ビクビクッとマクスウェルの腰が痙攣した。
 潤滑油を接合部分に掛けてから、前立腺の真裏を擦るように抽挿する。ついでにペニスも扱く。すぐに先走りで手がぐしょ濡れになった。
 ふうっ、ふうっ、と死にそうに乱れた吐息が聞こえた。
 直腸内の力が抜けたところで、ずぶっと奥まで入れた。
「んヴっ!!」
 マクスウェルが硬直した。硬直したところ申し訳ないが、それでも抽挿を繰り返す。
「んっ……んっ、ふ、うっ……んっ」
 吐息が震えていた。
 気持ちいいのかつらいのか、はたまた何なのかは分からない。
 とりあえずペニスを弄ってやると、また射精した。
 アナルはまだギチギチにこちらを食い締めている。それでもでかいもので幾度も擦られ拡げられて、大分緩んだ様子はあった。
 主に浅い所を擦って時折深く入れるようしていると、次第に奥を突いた時に反応するようになってきた。
 ンッ、と呻く声に敵意や嫌悪や苦痛ではない色が見え隠れし、入り口が微かに震えるように締まる。
 ふうん、と思いながら、バカでかい肉棒を出し入れし続けた。
「んっ……ふっ……んっ……」
 呻きが喘ぎのように聞こえ始める。
 試しに思いっきり突き上げてやると、「んぐっ!!」と大きく呻いて達した。
 一方こちらは達しもせず、ひたすら腰を動かしているだけだった。
「んんっ……んっ……ふ、……っ」
 マクスウェルの呻きが泣き声じみた感じになってくる。
 あぁー……詰まらない。と、私は時折上の空になった。
 そして、もう完全にぐたぐだになっているマクスウェルの姿を見て、雁字搦めのものを少しくらい緩めたくなった。その方がまだ面白い。現状では、単に「呻く穴」対「動く棒」だった。
 一度体を離し、マクスウェルの足首を縛った紐を解き、膝に渡した棒を抜き取る。
 そして改めて手首だけ拘束しようと、マクスウェルをひっくり返して紐を弛めたところ……
 ぐだぐださはどこへやら、思いのほか俊敏に覆面を剥ぎ取られた。
「っ!」
 うわっ!
 と反射的に身を引いたが、思い切り顔を見られている。
 マクスウェルが驚いた顔をして動きを止めていた。
 まずい。身元がばれたろうか。会ったことは無い筈だが。……こうなったらもう。
「……騒いだら私のような化け物に犯されたのが明るみに出ますよ? それはあなたにとって不都合極まりないでしょう?」
 押し倒して、そう囁く。
 マクスウェルはただじっと私を見上げていた。実際、まだ猿轡をしているので何を言いようもない。
「あー……もう」
 私は自分の失策を反省しつつ、マクスウェルの手首を力ずくで前に纏めて縛り上げる。腕力ではこちらが上だった。
 そして膝を掴んでがばっと開かせた。
「っ!」
 マクスウェルが目を見開き、次いで眉を寄せて目を眇める。前で纏めた手を闇雲に動かすので、それが私の顔を掠った。
「ふふっ……これだけ犯されて今更抵抗する意味あるんです?」
 お蔭様でやる気が出て、おっ勃ったペニスを強引に突き入れた。
「んう……っ」
 マクスウェルが顔を反らした。
 根本までずっぷりと腸内に収めたものを動かす。
「んんっ……んっ、んっ……んっ」
 喘ぐような呻きが繰り返される。
 私が掴んでいる膝に、閉じようという力は感じられない。
「んっ……ふっ……ん、う」
 手を離しても、脚ははしたなく開いたままだった。
「あはは」
 そのまま手を掴んで頭上にやってから覆い被さり、首元を思い切り噛む。
「んっ」
「ふふ……」
 手を離しても、その手で殴ろうとはして来なかった。顔を下げて乳首を噛むと、また「んっ」と呻く。
 体を上げると、マクスウェルがまたじっと私を見上げてくる。少し潤んだ目で。
「……何なんですかね」
 呟いてから、また抽挿を始める。
「んっ……んんっ……ふぅっ……ん……っ」
 ぎこちなくマクスウェルの腰が揺れる。呻きも吐息もどこかしら艶めかしい。
 なるほど、と思いながらゆるゆるとマクスウェルの腹の中を抉る。
「んっ、んっ、んっ……」
「……気持ち良さそうですね」
 最後には、とんでもない痛い思いが待っている訳だが。
「ん……」
 ずぶっと奥を突くと、「ンウッ!」と悲鳴じみた音が漏れる。同時に、薄くなった精液を力なく漏らした。
 もういいか、と私も射精した。
 それから、ぐたっとしているマクスウェルを俯せにし、隣室に行く。そして火勢が衰えかけている暖炉から鉄の棒を引き出した。
 先端には615の形をした鉄の塊が付いている。悪魔の数字だそうだ。
 それを手に、素早くマクスウェルの上に乗って動きを封じ、べたっと焼き鏝を背に押し付ける。
 肉の焼ける臭いと嫌な音が響いた。まあ、人間からのものと考えなければ、美味しそうな匂いと音だろう。
「!!!!!!!」
 そしてマクスウェルの口から発された音は、猿轡で阻まれなければ屋敷に響き渡る悲鳴だったに違いない。
「ハハッ」
 私は軽く笑い、服を着て屋敷を後にした。
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