罪深き凡夫らの回旋

まる

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第三章

N2

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 その日私はユーニスに会い、知りたかった情報を受け取って彼と寝た。
 こんな体一つ程度のエサでちゃんと働いてくれるのだから有難い話だった。
 私は入れる側を嗜好しているのでさほどの問題は無いが、入れられる側は本気で回避せねばならないと思っていた。ランディ以外の相手とは、という意味だ。彼以外の種で妊娠するのは流石にまずいし申し訳ない。
 ……しかし。もし王子様の子を孕んだら、どうするのだろう。完全に許容されている関係なので、その可能性は少しくらい考慮されていて然るべきだ。
 子を喜んで受け入れ、ある程度育ったら性的な関係を強要したりしてしまわないのだろうか。ランディのそんなダークサイドじみたものを想像すると、少し興奮した。私も大概だった。





 折角なので、一旦屋敷に帰ってから、また外出した。
 私が元王城勤務の兵士であり、現ランディの妻であることは兵士や騎士団員らにも浸透している。そりゃ浸透しない方が不思議だろう。そんな面白いネタは。
 門や各所を通してもらいつつも胡散臭げな目を向けられつつ、ランディの執務室に到着する。
 ノックをし、忙しそうであればさっさと退散するつもりで、出てきた筋肉ダルマ先輩に取次ぎを願った。
 すると声を聞きつけたらしく、筋肉ダルマ先輩の横からランディが顔を出した。
「ヘルガ。珍しいな。どうし……」
 そこまで微笑して言い掛け、突然表情を硬くした。じっと私を見つめる。
「もしご迷惑でしたら帰りますが……」
「……いや。……迷惑ではない。少なくとも現時点では迷惑ではない……」
 ランディが何を考えているかは想像がついた。
 このまま私が執務室で茶を飲んで歓談して少しうろついてささっと帰るならば、迷惑ではないのだろう。
「……職場で見るランディはまた、一際格好いいですね」
 エロいですね、と言うのは控えた。
 しかし察したのだろう。ランディが「うぐ」と変な声を漏らした。
「……用事は何だ?」
「恐らくあなたのご想像通りです」
「俺は今とても忙しい」
 ランディがそう言い放つと、正直者らしい筋肉ダルマ先輩が「えっそうだっけ」みたいな顔をした。
「そうですか、残念です。では用事は屋敷にお帰りになられてから二~三倍にして片付けるということで……」
「二~三倍はまずいだろうっ。全身ガタガタに……」
「でしょうね」
「でしょうね、って……。……あのな。……とりあえず入れ」
 ランディが私の腰を抱いて室内に引き入れつつ、筋肉ダルマ先輩に「呼ぶまで外していてくれ」と言ってバタンとドアを閉めた。
 そして私を抱えたままスタスタと歩き、長椅子に私を座らせた。ご自分も横に腰を下ろす。私は荷物をそっとテーブルに置いた。
「ヘルガ」
「はい。私がこちらに来させて頂くのも久しぶりですね。興奮しますね」
「興奮はしないだろ、普通」
「では執務机に手を突いて腰を突き出して頂けたら」
「では、って何だ。しないからな。屋敷で散々好きにさせてやっているだろう」
「えっ……? そこまで好きにしてませんよ。遠慮してます。好きにしていいんですか?」
「ええ……っ……い、いや……遠慮してくれ……」
「一度私の全力の愛を受け止めてくれませんか」
「嫌だ死にたくない。おまえのその愛はほぼ性欲なのが分かり易すぎる」
「一種の愛ですし、ほら性愛ってやつですかね。大丈夫ですよ死にやしませんよ、ちょっと肛門裏返るかもしれませんけど」
「いやだ。絶対嫌だ」
「冗談ですよ。裏返りゃしないでしょうよ。まあ多分」
「なあ、その言い方で了承すると思うのか?? 俺はおまえが分からん……」
 そんな風に呟くランディの首に片腕を回し、引き寄せた。
「……でも、きっと気持ちいいですよ?」
 囁いて、口元を舐める。もう一方の手をランディの上着の下に入れて腰に回し、そっと撫で下ろす。
「っ……ヘルガ」
「はい」
「……よせ」
「どうして?」
 より体を寄せて指を尻の割れ目に這わせると、ランディがぴくっと腰を震わせた。
「……以前にTPOの話をした筈だ」
 ランディの肩口に顔を寄せているので、私には彼の表情は見えない。
「今はそんなのぶち破りたいしぶち込みたいです。ぶち破りたいのはTPOで、ぶち込みたいのはあなたにです」
「説明されなくても分かる。……俺の肛門をぶち破りたいなんて言われたら恐ろしすぎて流石に離婚したい」
「そんなこと言いませんよ。どうか捨てないで下さい」
 私は笑ってランディのお尻から手を離し、それを背に移した。優しく撫でてみる。
 ランディが呟く。 
「……そんなこと、思っていないくせにな」
「あなたと一緒に居たいですよ?」
「では、もし俺に真摯に離婚を請われたらどうする?」
「それ、真面目に答えるところですか」
「そうだな」
「でしたら、分かりましたと頷きますよ」
「あっさりしたものだな」
「泣いて縋られても困るでしょう?」
「理由も聞かないのか」
「聞いて何かが変わりますか?」
「……変わらないだろうけどな」
「ですから、互いに都合が合わなくなるその日まで一緒に居ましょう」
 ランディは何も言わなかった。
 室内は静かで、窓の外からも風の音しかしない。
「……都合、か。そうだな」
 やがてそう呟く。
 なので、私はランディに言った。
「私とあなたの間には、互いの都合と……あと、私の巨大な欲情が横たわっているのです」
「えっ」
 唐突な会話の風向きに、ランディが戸惑いに満ちた声を漏らした。私は構わずその方向で続けた。
「許されるならランディがぼろ切れみたいになるまで犯したい。何なら二度とベッドから出したくない。いや、出てもいいけど出先でやりたい」
「いやおまえ、何がどうして」
「抱かれ過ぎてぼろぼろぐたぐたで、開かされた脚を閉じる余力も無くはしたない姿態のランディに、もう無理だって嗚咽されたい」
「……。……すごくすごく言いたくないが、俺は既に何度もそんな目に遭わされていると思うんだが」
「もっと頻繁に。毎度のように」
「嫌だ」
「死にやしませんよ」
「俺のメンタルが死ぬ」
「メンタルが死んだランディも魅力的だと思います」
「……今日も適当だな」
「大体全種類の体液を垂れ流して恥ずかしい所もフルオープンでぐったりしている卑猥なランディの姿を見ると、これを記録していつでも見返せる道具が一刻も早く発明されないかと切に願ってしまいます」
「何だその痛烈な嫌がらせは……」
「発明されてなくて良かったですね。という訳で、現実で目に焼き付けるしかないのでね」
 私はランディをぐっと抱え、押し倒した。
「やめろっ……執務室で、こんな……」
「もっと言って下さい副団長」
「ええぇ……っ、な、何だ??」
「ふたなり従卒に襲われる美貌の騎士団副団長の卑猥な昼下がりごっこ」
「なんっ……あああもうっ」
 ランディが美男には似つかわしくない仕草で頭を掻き毟った。
「良く分からないけどとってもイラついてるランディも魅力的です」
「本当に! 適当だな!」
 私は顔を寄せ、更なる喚き声を発そうとするランディの唇を自分の唇で塞いだ。
「んんっ……」
 ランディがとても不満そうに呻いた。
 唇を外し、そっと囁く。
「……ランディ」
「……たまに聞くおまえのその妙に甘い囁き、どこから出る声なんだ」
「……面白いこと言った方がいいですか」
「いらん」
「そうですか。……ランディ。ふふ。ランディ……」
「……その声で何度も呼ばれると、まるで愛されているように錯覚しそうだ」
「そうですか。……愛してますよ」
「……よせ」
 私は少し背けられたランディの頬に手のひらを添えた。
「……あなたを愛してます」
「……っ、よせと言っているだろう」
 手を払われた。
 こういう種類のからかいじみたやり取りはお好きではないらしかった。
 ふと、以前王子様に、悪意のみをぱんぱんに込めてこんなからかいをしたことを思い出した。やはりこういうのはあまり宜しくないのだろう。
「済みません」
「おまえが俺を愛することは無いだろうが」
 ランディが顔を戻し、こちらを見た。
 目が幾らか眇められ、片方の口角が微かに上がっているようだ。
 彼が口にしたことは現時点では単なる事実に過ぎない。別段、私に愛されたい願望も持っていないだろう。
 まあそうですね、が最初に浮かんだ返答ではあったが。
「どんな返事が最良なのか、ちょっと分かりません」
 愛せるものなら愛したいとでも、思ったのかもしれない。
 しかしそこに続けるべき言葉も無い。少し困り、もう欲求に任せてランディの着衣を脱がせることにした。
「……この状況から俺を抱くのか」
「お嫌ですか」
 一応手を止め、問う。ランディは小さく笑った。
「本当におまえは揺ぎ無く無神経だな」
「そうなんでしょうね」
 頷きながら、上着のボタンを外し終える。
「このまますると皺になりそうだから、脱ぎましょうね」
「……嫌だと言っているのに」
 ランディがぼそっと呟く。体勢的に止むないことだが、上目遣いで言われてしまった。
 私の股間に衝動がぶち込まれた。
「じゃあこのままでしましょうね……!」
「ええっ……あっ」
 がばあ、とシャツの裾を下衣から引きずり出し、下衣のボタンを外して下着もろとも引きずり下ろす。
 私は「ちょっと待て!」とか何とか言っているランディの体を抱えて、ごろんと半回転させた。、ランディが「うわああ」と声を上げる。
「はい、もうここまで来たら諦めましょうね! さあ四つん這いになって腰を突き出して」
「うう……屈辱だ」
「屈辱でも凌辱でも産褥でも何でもいいです」
「産褥は違い過ぎるだろ! 流石に俺は子は産まないからな!?」
「はいはい、そうですね。もっとこう、お尻を上げて下さい」
 ランディもここまで来たらやらせとかないと収拾がつかないと思っているのだろう。何事か呪詛のように呟きつつもこちらの指示に従う。
 持ってきた潤滑油を、渋々差し出されたアナルに丁寧に塗り込む。零して高価そうな長椅子に染みなど作りたくなかった……が、他の発生源による染みまでは関知出来ない。
 人差し指をぬぽぬぽと出し入れしていると、ランディが幾らか息を乱し始めた。
「はぁ……は……」
 心なしかじれったそうに腰を揺らす。
「ほら。どうせ気持ちいいでしょう」
 ふっふっふ、とつい笑い、指を一気に三本まで増やして挿し込む。特段抵抗もなく、穴は指を飲み込む。
「んっ……あ」
 がぽがぽと幾分乱暴に掻き回すと、腰がびくっと引き攣る。
「うっ……んっ……んっ……」
「先走り、シャツに付きそうですね」
「っ……」
「でも大丈夫ですよ、替えを持ってきてますから」
 先ほどテーブルに置いたやつだ。
「変なところ、用意周到、だな……」
 ランディの声に疲労感が僅かに混じる。どうあってもするつもりだった私の意志の固さを思い知ったのだろう。
 私は「そりゃあもう」と適当に返事をして、アナルに入れている指を広げた。
「それ……やめろ……っ」
「いいじゃないですか。良く見せて下さい」
 そう言いつつ、赤みを帯びたピンク色の直腸壁を思う存分観察していると、「うう……いやだ……」とランディが呻く。
 しかしその股間の器官をふと見てみると、勃起していた。
「……ランディ。意外と勃起してるのは何故でしょう」
「し、知らん……」
 語尾が細って消える。すごく恥ずかしそうだった。
「ふうん」
 会陰を舐めると、びくっと体が揺れた。
 ついでに、舌を入れて健康そうな色の直腸粘膜も舐める。
「ひっ……!」
 舌が届く範囲で中を舐める。
「やめ……っ、あ……っ、あぁ」
 ランディが色っぽく喘いでくれるので、私の股間が大変な状況だった。
 舌を抜き、呼吸を整え、そして相変わらずえぐい大きさのペニスを取り出す。こちらこそ下着が先走りで濡れて、替えが欲しいくらいだった。
「入れますよ」
「っ……勝手に、しろ……っ」
「入れて欲しくない?」
「うるさいっ……ここまでされて、入れて欲しくない訳、ないだろうが……!」
 上ずった声でやけくそ気味に怒られた。
「じゃあ入れますね」
 穴に亀頭を押し付け、そのまま大きく拡げられた肉を擦りながら、温かい内臓にずぶずぶと侵入していく。
「は……っ、う……」
 ランディの吐息が震える。最奥をこじ開けるように突くと、「うぁ……ッ」と泣き声を漏らして射精した。多分長椅子に染みが出来たろう。
 腹の中を容赦なく擦り掻き回すと、「あっ、あっ」と艶めかしい悲鳴を上げてくれる。
 扉の防音機能と、廊下の人通りが気になるところだった。ランディは頭が飛びかけていて、そんなことを気にしている余裕は無さそうだし、やる側として無くなってくれるくらいの方が嬉しい。
 廊下の人通りは、普段はあまり無い。筋肉ダルマ先輩がどこまで下がってくれているかも気になるところだった。
 まあもし、ランディのこんな声を聞いたら……顔を合わせると変な気になりそうかも、などと思う。何しろランディは美男だし、筋肉ダルマ先輩はどことなく童貞っぽい。
 そして私たち夫婦がどういったプレイをしていると思われるだろうか。
「んッ、あッ……はぁ、あっ……」
 ランディが喘ぎながら腰を振る。上手いと言えば流石に上手い。何だか絞り取られそうだったが、ここは執務室であり、そんな場所で彼を下痢で悩ませたい訳ではない。
 ずる、と抜くと「な、何で……途中で……」と問われてしまった。
「だって、このまま出したらお腹下しますよ」
「便所はすぐそこにあるからいい……っ」
 ランディは、はぁはぁと荒く息を吐きながら腰を突き出し、でかい物が入っていたせいでエロく口を開け放したアナルを更に自分の指で押し拡げて見せた。
「早く入れろ……っ」
 おお、正気を失ってる、と思った。
「じゃあ入れますよ。……知りませんからね」
 ふふっと笑い、ご要望通りにまた挿入する。
 抽挿して陰茎で繰り返し腸壁を擦り上げつつ、ランディの卑猥な泣き声を聞く。
「あ……ッ、あ、また、いきそ……」
「いくといいですよ」
 そう言いつつ、長椅子の染みについて思いを馳せた。





「ああ……本気でしてしまった……」
 シャツを着替え、とりあえず一度トイレに行ったランディがぶつぶつと呻いている。
「そうですね。肛門拡げて見せてくれた時は、あっ! いっちゃってるな! と思いました」
 私がそう言うと、ランディが両手で顔を隠してしまった。かわいい。
「とりあえず換気しましょう」
 そう言うと、ランディが顔を隠したままこくんと頷いた。
 窓を開けて戻ってくると、流石にもう手は外していたが、まだランディが恥ずかしそうにしていた。かわいい。
「大丈夫ですよ、あなたの肛門はもう数えきれないくらい見てますから」
「……そういう問題じゃない」
「うーん。……私にひたすら使い込まれてこう、こなれた感じの形状になって来ているエロさが」
「何故今そんな話をする。嫌がらせか。俺が恥ずかしがるのがさぞ嬉しいんだろう」
「はい」
「……きっぱり肯定するな」
 ランディが顔を背けて溜息を吐いた。
 そのうち落ち着いた頃合いに、私が筋肉ダルマ先輩を呼びに行った。
 第二騎士団の詰所にでもいるだろう、とランディが言っていたがその通りだった。ここならエロい声は聞こえなかったに違いなかった。
 まあ……最初から詰め所に居たならば、だが。
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