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鍛冶武者修行に出ますが何か!(海竜街編)
第弐百五拾九話 海賊船をぶった斬る(?)武具を鍛えますが何か!
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「さてっ・・ではまずはモーヴィの武具から鍛えようと思っているんだが、ファレナはそれで良いか?」
借りた鍛冶場に入り、鍛冶場内の設備を確認して早々に炉に火を入れ炉内を熱して鍛冶仕事が出来る準備を整えると、アルディリアと共に鍛冶場の壁際によって俺と紫慧の動きを興味深そうに見つめている二人に声をかける。
俺の言葉にモーヴィは一瞬嬉しそうな表情を浮かべたが、傍らに居るファレナに気を使ったのか直ぐに表情を引き締め少し困ったような顔をしていたが、ファレナは俺の言葉を肯定する様に大きく頷くと、
「勿論だ。武具の依頼をした際に、先ずはモーヴィ爺の武具を鍛えその出来を確認してから私の武具をお願いすると約したはず。その約束の通りに進めて貰って構わない。」
と返事を返すと、しかめっ面をしているモーヴィの背中に平手で活を入れるように『パッシーン!』と叩いて、俺の方へと押し出した。
ファレナの活にモーヴィはたたらを踏み一歩前に出ると、ファレナに軽く会釈をしてから俺を見据えた。
「鍛冶師殿、そう口にすると言う事は既に儂に合う武具を考え付いているという事で良いのじゃな。一体どの様な武具を儂の為に鍛えようと考えておるのか良かったら教えては貰えんか?」
「そうだなぁ・・・海での海賊との一騎打ちと先日の完璧での姿を鑑みるに、チマチマと剣戟を合わせると言うよりも一撃にて相手(船も含む)を叩き斬るといった武具の使い方をしている様だからなぁ。これまで使っていた朴刀も悪くは無いが、それよりも良い武具があるんだ。」
「ほ~ぉ・・・それは興味深いのぉ。そんな武具があるのか?儂にはちょっと思いもつかんが、一体どんな武具なのじゃ。」
俺の話を聞いて瞳をキラキラと輝かせ話の先を促すモーヴィに、俺は苦笑しながら話を続ける。
「その武具の名は『長巻』。」
「『長巻』?・・う~ん、名前だけ聞いてもさっぱり分からんのぉ。一体どんな武具なのじゃ。」
武具の名を聞いたモーヴィは眉間に皺を寄せて困った様な思案顔を作る。
まぁ、それも仕方ないだろう。長巻などと聞いて直ぐにどんな武具か思い付くなんて余程武具に詳しいか、扱った事のあるものくらいだろうから。
俺も、津田の鍛冶場で親父が鍛えていた所を見たことが無ければ、知らないで終わっていた武具だったかもしれないのだから。
だが、『長巻』の名を聞いて反応したのは、俺達と一緒に鍛冶場にやって来ていた真安やフクスなどの羅漢獣王国出身者だった。
そんな真安たちの様子を横目で見ながら、俺はモーヴィへ話を進めた。
「まぁ、長巻なんて聞いて直ぐに想像しろと言う方が無理かもしれないな。何しろ名前の語源が、刀よりも長く作られた柄に刀の柄と同じように柄巻を施す事からつけられたとされる名称なのだから無理も無い。
ただ、その破壊力は尋常じゃないぞ。何せ、大柄な益荒男が振るう長大な大太刀をより振り易くするために工夫され、生み出された武具だからな。
武者が乗る騎馬を叩っ斬る『斬馬刀』としてしても使われ、その扱い易さから『槍が苦手なら長巻を使え』と言われたほどだからな。
突いて良し、払ってよし、斬って良しと、三拍子揃った武具だと言われている。どうだ?今まで朴刀を扱ってきたモーヴィにもそれほど違和感なく扱える武具だと思うが・・・」
俺の説明がちゃんと伝わっているのか確認するつもりで話を聞いているモーヴィに問い掛けようとしたものの、俺はすぐにそれが無駄なのだと気が付き苦笑しながら口を噤んだ。
何故なら、話を聞いていたモーヴィは少し興奮しているのか紅潮し、まるで子供が目の前に玩具を置かれた時の様な笑みを浮かべていたのだから。
モーヴィに気づかれない様にそっと溜息を漏らしながら、俺は鍛冶場に来る前事前にアルディリアが用意を済ませていたミスリルとアダマンタイトの原鋼を手に取り、懐からゼーメッシュ島で分けてもらって来た真珠の粉をはじめとした必要な鋼石(精霊石)粉をそれぞれの原鋼に付与しながら、紫慧と共に鍛え上げて行った。
もっとも、モーヴィの為に鍛えようとしている『長巻』は、その用途を鑑みて通常の長巻の大きさをはるかに超す長大な物にするつもりだったため、金属鋼の鍛練だけでこれまで武具に用いる金属鋼を鍛えるのに比べて一日多く時を必要とし、武具の形状が分かる造り込みなどの作業に入るまでに四日を要した。
その間、モーヴィもファレナも一言の文句を言わず、時々俺と紫慧が金鎚を振る合間に疑問に思った事などをポツリポツリと質問するだけで、ジッと見守り続けていた。
勿論、造り込みに入ってからも鍛冶仕事の邪魔になる様なタイミングで質問を投げかけて来ることは無かったが、ミスリルを芯金にアダマンタイトを皮金(刃金・側金・棟金)として用い鍛接する際には、目を大きく見開き驚きと共に興味深そうに作業を眺め、休憩に入るとその度に質問をしてきていた。
そんなファレナとモーヴィの相手をしながらも作業を進め、成形した長巻の刀身は大太刀と呼ぶにはあまりにも無骨で、あまりにも幅広肉厚な凶悪な姿となってしまった。
まぁ、なってしまったと言う言い方は少々無責任かもしれないが、モーヴィの体躯と岸壁で眉尖刀を用いて海賊船を一刀のもとに破壊した姿が、俺の頭の中にこびり付いていて、同じ様な事が出来るようにと考えて鎚を振るっている内に・・・
壁際で俺の様子を見つめているアルディリアや真安からは、背筋に冷たい物が流れ出すような冷たい視線が注がれていたが、モーヴィ本人は瞳を輝かせて兇悪は笑顔を浮かべているから良いんじゃないのかな?と二人からの冷たい視線を背を向けて、後で無責任だと怒られたら素直に頭を下げる事にしようと取り敢えず厄介事は棚上げにしてそのまま焼き入れへと作業を進めた。
何時もの様に刃先には薄く鎬や棟などには厚く焼き刃土を盛り、何時もよりもゆっくりと時間をかけて刀身に熱を入れた。これまでも長大な武具を鍛えて来なかった訳ではないが(ティリスの獅鰐など)、やはり刀鍛冶を目指した俺にとって刀(太刀)から派生した武具である長巻の刀身を鍛えるという事はそれなりに思う所がある訳で、最後の関門となる焼き入れには細やかに神経を使っていた様だ。
それでも、何時もと同じように額の真眼に映る武具に宿る精霊達が形成した繭の様子と、炉の炎によって熱せられ発光して行く刀身の色で最高の状態を見極め、炉の傍らに設置されている水槽へと長巻を一気に突き入れて焼き入れを行うと、水槽から濛々と立ち上がる水蒸気の中から精霊達が形成した繭から姿を現したのは、三本の角を持つ牛の頭部に鉤爪を備えた獣の腕、下半身が魚という怪魚『オドントティラヌス』だった。
「ふ~ぅ。形を整え荒砥をすれば後は拵えを用意してもらえば良いなぁ。拵えを整えて貰う当てはあるか?無いようならリンドブルム街から一緒に来ているアプロに任せようと思うんだが・・」
焼き入れで歪みや亀裂などが入っていないかを確認し一息つくながらモーヴィに声を掛けると、それまで長巻を食い入る様に見つめていたモーヴィも大きく息を吐き出して、
「ほぉ~~。今まで武具がどのように鍛えられているのか知らずに使ってきたが、流行一度は見ておくものじゃな。
こんなにも手間暇を注ぎ込んで一振り一振り鍛えられる物なんじゃなぁ。良い物を見させてもろうたわい。
それで、拵えについてなのじゃが鍛冶師殿が認めるそこに居る拵え師に任せても良いのじゃが、これまで懇意にして来ておる拵え師がおるので、その者に頼もうと思っているのじゃが」
「モーヴィが懇意に・・・という事はモーヴィの好みも良く知ってる事だな。それじゃ、この長巻の拵えはモーヴィに任せるとしよう。
因みにその懇意にしていると言う拵え師と言うのは?」
「うむ。レヴィアタン街の職人たちに『御大』と慕われておる奔安見光月翁じゃ。これまで使っておった朴刀の拵えも光月翁にお願いした物でのぉ。もう長年に渡り儂の武具の面倒を見て貰っておる。」
俺の問い掛けに対してモーヴィの口から出た拵え師の名はアプロの修業を見てくれている拵え師だった。
「そうかぁ!それなら丁度いい。アプロ、モーヴィと一緒に長巻を持って『御大』の爺さんの工房に行って、俺が鍛えた武具だと話して来てくれ。
そうと決まれば、明日一番に持って行ってもらえるように最後の仕上げを行っちまうかな!」
俺はそう言うと、再び長巻を炉に入れて焼き戻しを行い整形した後に荒砥を行い、最後に何時もの様に茎に持国天の梵字を銘として刻み込んだ。
すると、それまで寡黙を貫いていたオドントティラヌスが口を開き、
「創造主! この度は良き主となりし者に巡り合わせていただき、感謝申し上げます。我が主モーヴィ・ヴァール殿、これより貴方様共に幾久しくレヴィアタン街周辺の海をお守りいたす事をお誓い申し上げまする。
どうか、存分に揮いその武威を持って海に安寧を!」
そう告げるとモーヴィに頭を垂れた。その姿に、ファレナとモーヴィは驚きと戸惑っているようだったが、俺がモーヴィに返答を返すように視線を振ると、ゴクリと唾を飲み込み姿勢をただして、
「儂こそ、よろしく頼むぞ。これまで周囲を荒らし回っていた者達の一大勢力はその大半を捕らえはしたが、未だレヴィアタン街の海には虎視眈々と襲撃の機会を狙う不届き者が跳梁跋扈しておる。
老い先短い身とは言え、レヴィアタン街の海を穏やかな海にするが儂の宿願じゃ、その為に共に参ろうぞ!!」
そう言うと、荒砥しただけの長巻の茎を持ち、高々と掲げたのだった。
借りた鍛冶場に入り、鍛冶場内の設備を確認して早々に炉に火を入れ炉内を熱して鍛冶仕事が出来る準備を整えると、アルディリアと共に鍛冶場の壁際によって俺と紫慧の動きを興味深そうに見つめている二人に声をかける。
俺の言葉にモーヴィは一瞬嬉しそうな表情を浮かべたが、傍らに居るファレナに気を使ったのか直ぐに表情を引き締め少し困ったような顔をしていたが、ファレナは俺の言葉を肯定する様に大きく頷くと、
「勿論だ。武具の依頼をした際に、先ずはモーヴィ爺の武具を鍛えその出来を確認してから私の武具をお願いすると約したはず。その約束の通りに進めて貰って構わない。」
と返事を返すと、しかめっ面をしているモーヴィの背中に平手で活を入れるように『パッシーン!』と叩いて、俺の方へと押し出した。
ファレナの活にモーヴィはたたらを踏み一歩前に出ると、ファレナに軽く会釈をしてから俺を見据えた。
「鍛冶師殿、そう口にすると言う事は既に儂に合う武具を考え付いているという事で良いのじゃな。一体どの様な武具を儂の為に鍛えようと考えておるのか良かったら教えては貰えんか?」
「そうだなぁ・・・海での海賊との一騎打ちと先日の完璧での姿を鑑みるに、チマチマと剣戟を合わせると言うよりも一撃にて相手(船も含む)を叩き斬るといった武具の使い方をしている様だからなぁ。これまで使っていた朴刀も悪くは無いが、それよりも良い武具があるんだ。」
「ほ~ぉ・・・それは興味深いのぉ。そんな武具があるのか?儂にはちょっと思いもつかんが、一体どんな武具なのじゃ。」
俺の話を聞いて瞳をキラキラと輝かせ話の先を促すモーヴィに、俺は苦笑しながら話を続ける。
「その武具の名は『長巻』。」
「『長巻』?・・う~ん、名前だけ聞いてもさっぱり分からんのぉ。一体どんな武具なのじゃ。」
武具の名を聞いたモーヴィは眉間に皺を寄せて困った様な思案顔を作る。
まぁ、それも仕方ないだろう。長巻などと聞いて直ぐにどんな武具か思い付くなんて余程武具に詳しいか、扱った事のあるものくらいだろうから。
俺も、津田の鍛冶場で親父が鍛えていた所を見たことが無ければ、知らないで終わっていた武具だったかもしれないのだから。
だが、『長巻』の名を聞いて反応したのは、俺達と一緒に鍛冶場にやって来ていた真安やフクスなどの羅漢獣王国出身者だった。
そんな真安たちの様子を横目で見ながら、俺はモーヴィへ話を進めた。
「まぁ、長巻なんて聞いて直ぐに想像しろと言う方が無理かもしれないな。何しろ名前の語源が、刀よりも長く作られた柄に刀の柄と同じように柄巻を施す事からつけられたとされる名称なのだから無理も無い。
ただ、その破壊力は尋常じゃないぞ。何せ、大柄な益荒男が振るう長大な大太刀をより振り易くするために工夫され、生み出された武具だからな。
武者が乗る騎馬を叩っ斬る『斬馬刀』としてしても使われ、その扱い易さから『槍が苦手なら長巻を使え』と言われたほどだからな。
突いて良し、払ってよし、斬って良しと、三拍子揃った武具だと言われている。どうだ?今まで朴刀を扱ってきたモーヴィにもそれほど違和感なく扱える武具だと思うが・・・」
俺の説明がちゃんと伝わっているのか確認するつもりで話を聞いているモーヴィに問い掛けようとしたものの、俺はすぐにそれが無駄なのだと気が付き苦笑しながら口を噤んだ。
何故なら、話を聞いていたモーヴィは少し興奮しているのか紅潮し、まるで子供が目の前に玩具を置かれた時の様な笑みを浮かべていたのだから。
モーヴィに気づかれない様にそっと溜息を漏らしながら、俺は鍛冶場に来る前事前にアルディリアが用意を済ませていたミスリルとアダマンタイトの原鋼を手に取り、懐からゼーメッシュ島で分けてもらって来た真珠の粉をはじめとした必要な鋼石(精霊石)粉をそれぞれの原鋼に付与しながら、紫慧と共に鍛え上げて行った。
もっとも、モーヴィの為に鍛えようとしている『長巻』は、その用途を鑑みて通常の長巻の大きさをはるかに超す長大な物にするつもりだったため、金属鋼の鍛練だけでこれまで武具に用いる金属鋼を鍛えるのに比べて一日多く時を必要とし、武具の形状が分かる造り込みなどの作業に入るまでに四日を要した。
その間、モーヴィもファレナも一言の文句を言わず、時々俺と紫慧が金鎚を振る合間に疑問に思った事などをポツリポツリと質問するだけで、ジッと見守り続けていた。
勿論、造り込みに入ってからも鍛冶仕事の邪魔になる様なタイミングで質問を投げかけて来ることは無かったが、ミスリルを芯金にアダマンタイトを皮金(刃金・側金・棟金)として用い鍛接する際には、目を大きく見開き驚きと共に興味深そうに作業を眺め、休憩に入るとその度に質問をしてきていた。
そんなファレナとモーヴィの相手をしながらも作業を進め、成形した長巻の刀身は大太刀と呼ぶにはあまりにも無骨で、あまりにも幅広肉厚な凶悪な姿となってしまった。
まぁ、なってしまったと言う言い方は少々無責任かもしれないが、モーヴィの体躯と岸壁で眉尖刀を用いて海賊船を一刀のもとに破壊した姿が、俺の頭の中にこびり付いていて、同じ様な事が出来るようにと考えて鎚を振るっている内に・・・
壁際で俺の様子を見つめているアルディリアや真安からは、背筋に冷たい物が流れ出すような冷たい視線が注がれていたが、モーヴィ本人は瞳を輝かせて兇悪は笑顔を浮かべているから良いんじゃないのかな?と二人からの冷たい視線を背を向けて、後で無責任だと怒られたら素直に頭を下げる事にしようと取り敢えず厄介事は棚上げにしてそのまま焼き入れへと作業を進めた。
何時もの様に刃先には薄く鎬や棟などには厚く焼き刃土を盛り、何時もよりもゆっくりと時間をかけて刀身に熱を入れた。これまでも長大な武具を鍛えて来なかった訳ではないが(ティリスの獅鰐など)、やはり刀鍛冶を目指した俺にとって刀(太刀)から派生した武具である長巻の刀身を鍛えるという事はそれなりに思う所がある訳で、最後の関門となる焼き入れには細やかに神経を使っていた様だ。
それでも、何時もと同じように額の真眼に映る武具に宿る精霊達が形成した繭の様子と、炉の炎によって熱せられ発光して行く刀身の色で最高の状態を見極め、炉の傍らに設置されている水槽へと長巻を一気に突き入れて焼き入れを行うと、水槽から濛々と立ち上がる水蒸気の中から精霊達が形成した繭から姿を現したのは、三本の角を持つ牛の頭部に鉤爪を備えた獣の腕、下半身が魚という怪魚『オドントティラヌス』だった。
「ふ~ぅ。形を整え荒砥をすれば後は拵えを用意してもらえば良いなぁ。拵えを整えて貰う当てはあるか?無いようならリンドブルム街から一緒に来ているアプロに任せようと思うんだが・・」
焼き入れで歪みや亀裂などが入っていないかを確認し一息つくながらモーヴィに声を掛けると、それまで長巻を食い入る様に見つめていたモーヴィも大きく息を吐き出して、
「ほぉ~~。今まで武具がどのように鍛えられているのか知らずに使ってきたが、流行一度は見ておくものじゃな。
こんなにも手間暇を注ぎ込んで一振り一振り鍛えられる物なんじゃなぁ。良い物を見させてもろうたわい。
それで、拵えについてなのじゃが鍛冶師殿が認めるそこに居る拵え師に任せても良いのじゃが、これまで懇意にして来ておる拵え師がおるので、その者に頼もうと思っているのじゃが」
「モーヴィが懇意に・・・という事はモーヴィの好みも良く知ってる事だな。それじゃ、この長巻の拵えはモーヴィに任せるとしよう。
因みにその懇意にしていると言う拵え師と言うのは?」
「うむ。レヴィアタン街の職人たちに『御大』と慕われておる奔安見光月翁じゃ。これまで使っておった朴刀の拵えも光月翁にお願いした物でのぉ。もう長年に渡り儂の武具の面倒を見て貰っておる。」
俺の問い掛けに対してモーヴィの口から出た拵え師の名はアプロの修業を見てくれている拵え師だった。
「そうかぁ!それなら丁度いい。アプロ、モーヴィと一緒に長巻を持って『御大』の爺さんの工房に行って、俺が鍛えた武具だと話して来てくれ。
そうと決まれば、明日一番に持って行ってもらえるように最後の仕上げを行っちまうかな!」
俺はそう言うと、再び長巻を炉に入れて焼き戻しを行い整形した後に荒砥を行い、最後に何時もの様に茎に持国天の梵字を銘として刻み込んだ。
すると、それまで寡黙を貫いていたオドントティラヌスが口を開き、
「創造主! この度は良き主となりし者に巡り合わせていただき、感謝申し上げます。我が主モーヴィ・ヴァール殿、これより貴方様共に幾久しくレヴィアタン街周辺の海をお守りいたす事をお誓い申し上げまする。
どうか、存分に揮いその武威を持って海に安寧を!」
そう告げるとモーヴィに頭を垂れた。その姿に、ファレナとモーヴィは驚きと戸惑っているようだったが、俺がモーヴィに返答を返すように視線を振ると、ゴクリと唾を飲み込み姿勢をただして、
「儂こそ、よろしく頼むぞ。これまで周囲を荒らし回っていた者達の一大勢力はその大半を捕らえはしたが、未だレヴィアタン街の海には虎視眈々と襲撃の機会を狙う不届き者が跳梁跋扈しておる。
老い先短い身とは言え、レヴィアタン街の海を穏やかな海にするが儂の宿願じゃ、その為に共に参ろうぞ!!」
そう言うと、荒砥しただけの長巻の茎を持ち、高々と掲げたのだった。
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