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今はただ、5年の月日が永すぎた春と言えるだけです

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「一本一本が、みんな僕の人生なんだ」

 そう言って、貴方は、誕生日のケーキに、22本のローソクを立て、一本ずつ火を灯していきます。

「17本目から、私も一緒に、火を灯すのですね」
 私たち二人が婚約してから、もう5年が経ちました。

 結婚式は、私が18歳になるまで待つとの約束でしたね。先日、やっと、18歳になりました。

 イケメンな貴方の肌は、ローソクよりも白く、貴方の金髪は、ともしびよりも輝いています。

 今日は、人払いを行い、二人きりで貴方の誕生日を祝います。


「これが、17本目」
 貴方は、普通に一人で火を灯しました。

「え?」
 そこからは、私と一緒じゃないのですか?

 そっか、18本目からの5本を、私と一緒に灯すのですね。

「ろ、ローソクの揺らぎで、心が癒されますね」

 私は、可愛らしく、言葉をかけます。
 でも、内心はドキドキで、癒されていません。

「そうだね、一本灯すごとに、あの時の思いがよみがえるよ」
 貴方は、感慨深げです。


「コンコン」
 扉がノックされて、妖艶なメイドさんが、入って来ました。


「申し訳ありません、ローソクの本数を間違えました。一人分、足りませんよね?」
 メイドさんが、ローソクを一本差し出しました。

「あれ? いや大丈夫、先日の23人目は、17人目と同じ令嬢だったから、22本で正解だよ」

 え? 貴方は何を言っているのですか?

「紛らわしいことして、ごめんね」

 メイドさんにも優しい言葉をかける、素敵な貴方……なの?

「私の分のローソクには、既に火がともされていますね、では、お邪魔いたしました」

 そう言い残した妖艶なメイドさんは、私に目で合図して、退出しました。


「貴方は、今日で22歳になられたのですよね?」
 ハッとして、疑問な点を確認します。

「いや、24歳だよ」
 悪びれず、答えてきます。

「もしかして、このローソクの本数は、これまで浮気してきた令嬢の数?」

 まさかの数です! これが多いのか少ないのか、私には分かりませんが、とても許せる数ではありません。


「今夜、新しいローソクに、君と一緒に火を灯したい」
 人の形をした何かが、ふざけた事を言ってきました。


「わかりました、ファイヤーボール!」
 私は、人の形をした何かに、火の魔法を放ちます。


「良く燃えるローソクですこと」

 黒くなって唖然とするローソクを後にして、私は部屋を出ます。


━━ Fin ━━
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