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第一部
57 滝と女豹
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暑くなってきたので泳ぎに出かけることにした。
「歩いて行けるところなんだ。水着着ていこう」
「え。そんな近場にあるんですか?」
「タオルだけあればいいから」
「じゃあ。着てきます」
直樹もハーフパンツの水着に変えてTシャツを着た。
緋紗は身体にバスタオルを頑丈に巻きつけている。
「すぐそこだから水着のままで平気だよ」
「ええ。まあ……」
「見せてくれないの?」
「それが買いにいったらもう変なのしか残ってなくてですね」
直樹は言い訳をしている緋紗のタオルを剥ぎ取った。
「きゃっ」
ヒョウ柄のビキニだ。
「すごいね」
直樹もびっくりした。
「もう。取らないでください」
軽く怒って緋紗は直樹からタオルを取り返した。
「ごめんごめん。勿体つけてるのかと思って」
「これとフリフリレースしか残ってなかったんです」
「似合ってるよ。ヒョウ柄」
直樹はニンマリ笑った。――後で女豹のポーズでもしてもらうかな。
またタオルをかぶった緋紗に、「行こう」と、手を取ると、頷いてついてきた。
家を出て裏側に回り小さな獣道のようなところに出た。
少しだけ草が刈ってあって人が一人通れる細道だ。
「切れるような草はないから大丈夫だと思うけど、一応気を付けて」
「はい」
三分ほど歩くと小さくゴォーという滝の音が聞こえてくる。
「滝……ですか?」
「うん。小さい滝壺があるんだよ」
「そこで泳ぐんですか。人が来るんじゃ」
「誰も来ないよ。観光から外れてるしね」
話しているうちに滝が見えてきた。
有名な滝とは違って高さもあまりなく滝壺も径が数メートルで深さも二メートル程度だ。
「夏に良くここで泳いでるんだ。静かでいい場所だよ」
緋紗は流れ落ちる滝を見ていた。
「泳げる?」
「え。ああ。得意な方じゃないですけど一応泳げます」
「緋紗は走るのが得意そうだもんね。ちょっと筋とか伸ばして」
直樹がそういうと緋紗もアキレス腱やら肩やらを回し始める。
「眼鏡外して」
「はい」
手を引いて水辺に連れていく。
「冷たい!」
「滝の水はちょっと冷たいかな。ゆっくりおいで」
「先に行っててください。もうちょっと慣らします」
滝の水は慣れないと冷たい。
「うん。僕は泳いでるよ」
直樹はゆっくりと水に沈んでいった。――冷たいな。
水の中で身体を伸ばしてからゆっくり浮上し、ゆるゆる泳いで浮かび空をみた。
少しずつ緋紗が水に入ってくる。――一気に入っちゃえばいいのに。
くすっと笑って緋紗をみた。
「早くおいでよ」
そばに行って抱き寄せてそのまま泳ぐ。
「きゃあ」
「力入れないで」
冷たさに慣れてきたのか泳ぎ始めた。
「こっちおいで」
「待って」
滝の裏側に誘う。
「ほら。ここ」
「わあ。なんかダンジョンっぽいですねー」
「だろ」
「宝箱でも置いときたい感じ」
「開けるとミミックだよね」
二人で岩のくぼみに座って笑った。少しキスをしてまた水の中に戻り、一緒にもぐって水の底をみた。
全身が青白くなった緋紗は精霊のような人間離れしたような雰囲気で美しかった。
「ぷはあっ」
水面に顔を出して息を吸う。
「ちょっと上がろうか。唇が紫になってるよ」
「そうですね。ちょっと休憩したいかも」
水から上がって草むらに寝っ転がり直樹は計画していた悪戯を実行することにした。
「直樹さんは泳ぐの上手ですね」
「うん。一番得意なのは水泳なんだ。中高、部活が水泳部でね」
「へー。そうだったですか。てっきりピアノかと……」
直樹がぐったりしている。
「どうしたんですか?」
呼び掛けたが返事をしない。
「直樹さん?直樹さん!」
緋紗が頬をたたく。――痛いな。
緋紗は四つん這いになり、必死になって肩を揺らす。――ちょっと女豹っぽいか。
直樹は息を止めた。
「息してない!」
緋紗は慌てて人工呼吸を始める。――鼻ふさがないと。
直樹はそう言いそうになるのを堪えた。――そろそろやめないとまずいかな。
緋紗が息を吹き込んできたときに直樹は舌を差し入れた。
「きゃっ」
緋紗は驚いて顔をひっこめた。
「気づいたんですか」
緋紗がホッとした顔を見せる。
「うん。ありがとう。助かったよ」
「良かった……」
力が抜けた緋紗は真っ青な顔で足をガクガクと震わせている。――やばいな。相当本気にしたな。
このまま黙っていようか悩んだが正直に演技だったことを話すことにした。
「緋紗。ごめん」
少し間をおいて言う。
「今の冗談なんだ。まさか本気にするとは思わなくて」
「えっ?」
緋紗の顔がたちまち険しくなった。
「嘘だったんですか!?」
「うん。ごめん」
「ひどいです。なんでそんな。すごく心配したんですよ!」
今までの緋紗とは全く別人のように肩を震わせて怒っている。――女豹のポーズが見たかったとは言わない方がいいな。
さすがに火に油を注ぐ真似はしなかった。
「本当にごめん」
なかなか許してくれない。
心から反省したのだが、とても機嫌を直してくれそうになく、意を決して最終手段をとることにする。
直樹は緋紗の後ろから両肩に手を置き、告げる。
「緋紗。怒っててもいいから。僕と結婚して」
「え?」
緋紗が振り向く。
眉間にしわを寄せてはいるがこっちを向いて「今なんて言いました?」と、不審げに訊ねた。
「『僕と結婚してください。』って言ったんだよ」
緋紗の眉間からしわが取れてきょとんとした顔になった。
このまま自分のペースに引き寄せてしまおうと直樹は間髪入れずに緋紗を抱きしめて、柔らかい草の上に押し倒し、ヒョウ柄のビキニのブラジャーを剥ぎ取った。
「あ、なにを」
抵抗させる間も与えずにビキニのパンツも剥ぐ。
「やだ。何するんですか」
「緋紗にしたいことをしてるんだ。緋紗は返事を考えてて」
緋紗の両手首をまとめて掴み、口づけ、舌を差し入れ激しくかき回す。
「んんっ」
緋紗は身体をくねらせながら抵抗をしているがだんだんと力が抜けてくる。
「もうしないから、怒らないで」
直樹は懇願した。
「ずるいです」
「ごめん」
緋紗の両手首を離しまっすぐに見つめてもう一度告げる。
「結婚してください」
緋紗は濡れた唇をかすかに動かせてこたえる。
「はい」
「良かった」
直樹はにっこり笑ってまたキスを始めた。
「歩いて行けるところなんだ。水着着ていこう」
「え。そんな近場にあるんですか?」
「タオルだけあればいいから」
「じゃあ。着てきます」
直樹もハーフパンツの水着に変えてTシャツを着た。
緋紗は身体にバスタオルを頑丈に巻きつけている。
「すぐそこだから水着のままで平気だよ」
「ええ。まあ……」
「見せてくれないの?」
「それが買いにいったらもう変なのしか残ってなくてですね」
直樹は言い訳をしている緋紗のタオルを剥ぎ取った。
「きゃっ」
ヒョウ柄のビキニだ。
「すごいね」
直樹もびっくりした。
「もう。取らないでください」
軽く怒って緋紗は直樹からタオルを取り返した。
「ごめんごめん。勿体つけてるのかと思って」
「これとフリフリレースしか残ってなかったんです」
「似合ってるよ。ヒョウ柄」
直樹はニンマリ笑った。――後で女豹のポーズでもしてもらうかな。
またタオルをかぶった緋紗に、「行こう」と、手を取ると、頷いてついてきた。
家を出て裏側に回り小さな獣道のようなところに出た。
少しだけ草が刈ってあって人が一人通れる細道だ。
「切れるような草はないから大丈夫だと思うけど、一応気を付けて」
「はい」
三分ほど歩くと小さくゴォーという滝の音が聞こえてくる。
「滝……ですか?」
「うん。小さい滝壺があるんだよ」
「そこで泳ぐんですか。人が来るんじゃ」
「誰も来ないよ。観光から外れてるしね」
話しているうちに滝が見えてきた。
有名な滝とは違って高さもあまりなく滝壺も径が数メートルで深さも二メートル程度だ。
「夏に良くここで泳いでるんだ。静かでいい場所だよ」
緋紗は流れ落ちる滝を見ていた。
「泳げる?」
「え。ああ。得意な方じゃないですけど一応泳げます」
「緋紗は走るのが得意そうだもんね。ちょっと筋とか伸ばして」
直樹がそういうと緋紗もアキレス腱やら肩やらを回し始める。
「眼鏡外して」
「はい」
手を引いて水辺に連れていく。
「冷たい!」
「滝の水はちょっと冷たいかな。ゆっくりおいで」
「先に行っててください。もうちょっと慣らします」
滝の水は慣れないと冷たい。
「うん。僕は泳いでるよ」
直樹はゆっくりと水に沈んでいった。――冷たいな。
水の中で身体を伸ばしてからゆっくり浮上し、ゆるゆる泳いで浮かび空をみた。
少しずつ緋紗が水に入ってくる。――一気に入っちゃえばいいのに。
くすっと笑って緋紗をみた。
「早くおいでよ」
そばに行って抱き寄せてそのまま泳ぐ。
「きゃあ」
「力入れないで」
冷たさに慣れてきたのか泳ぎ始めた。
「こっちおいで」
「待って」
滝の裏側に誘う。
「ほら。ここ」
「わあ。なんかダンジョンっぽいですねー」
「だろ」
「宝箱でも置いときたい感じ」
「開けるとミミックだよね」
二人で岩のくぼみに座って笑った。少しキスをしてまた水の中に戻り、一緒にもぐって水の底をみた。
全身が青白くなった緋紗は精霊のような人間離れしたような雰囲気で美しかった。
「ぷはあっ」
水面に顔を出して息を吸う。
「ちょっと上がろうか。唇が紫になってるよ」
「そうですね。ちょっと休憩したいかも」
水から上がって草むらに寝っ転がり直樹は計画していた悪戯を実行することにした。
「直樹さんは泳ぐの上手ですね」
「うん。一番得意なのは水泳なんだ。中高、部活が水泳部でね」
「へー。そうだったですか。てっきりピアノかと……」
直樹がぐったりしている。
「どうしたんですか?」
呼び掛けたが返事をしない。
「直樹さん?直樹さん!」
緋紗が頬をたたく。――痛いな。
緋紗は四つん這いになり、必死になって肩を揺らす。――ちょっと女豹っぽいか。
直樹は息を止めた。
「息してない!」
緋紗は慌てて人工呼吸を始める。――鼻ふさがないと。
直樹はそう言いそうになるのを堪えた。――そろそろやめないとまずいかな。
緋紗が息を吹き込んできたときに直樹は舌を差し入れた。
「きゃっ」
緋紗は驚いて顔をひっこめた。
「気づいたんですか」
緋紗がホッとした顔を見せる。
「うん。ありがとう。助かったよ」
「良かった……」
力が抜けた緋紗は真っ青な顔で足をガクガクと震わせている。――やばいな。相当本気にしたな。
このまま黙っていようか悩んだが正直に演技だったことを話すことにした。
「緋紗。ごめん」
少し間をおいて言う。
「今の冗談なんだ。まさか本気にするとは思わなくて」
「えっ?」
緋紗の顔がたちまち険しくなった。
「嘘だったんですか!?」
「うん。ごめん」
「ひどいです。なんでそんな。すごく心配したんですよ!」
今までの緋紗とは全く別人のように肩を震わせて怒っている。――女豹のポーズが見たかったとは言わない方がいいな。
さすがに火に油を注ぐ真似はしなかった。
「本当にごめん」
なかなか許してくれない。
心から反省したのだが、とても機嫌を直してくれそうになく、意を決して最終手段をとることにする。
直樹は緋紗の後ろから両肩に手を置き、告げる。
「緋紗。怒っててもいいから。僕と結婚して」
「え?」
緋紗が振り向く。
眉間にしわを寄せてはいるがこっちを向いて「今なんて言いました?」と、不審げに訊ねた。
「『僕と結婚してください。』って言ったんだよ」
緋紗の眉間からしわが取れてきょとんとした顔になった。
このまま自分のペースに引き寄せてしまおうと直樹は間髪入れずに緋紗を抱きしめて、柔らかい草の上に押し倒し、ヒョウ柄のビキニのブラジャーを剥ぎ取った。
「あ、なにを」
抵抗させる間も与えずにビキニのパンツも剥ぐ。
「やだ。何するんですか」
「緋紗にしたいことをしてるんだ。緋紗は返事を考えてて」
緋紗の両手首をまとめて掴み、口づけ、舌を差し入れ激しくかき回す。
「んんっ」
緋紗は身体をくねらせながら抵抗をしているがだんだんと力が抜けてくる。
「もうしないから、怒らないで」
直樹は懇願した。
「ずるいです」
「ごめん」
緋紗の両手首を離しまっすぐに見つめてもう一度告げる。
「結婚してください」
緋紗は濡れた唇をかすかに動かせてこたえる。
「はい」
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