スカーレットオーク

はぎわら歓

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第一部

56 朝食

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 緋紗が目を覚ますと直樹はいなかった。――あ。裸。
  なんとか掛物をかぶっていたようだが寝ている間がどうなっているのか怪しい。――裸で寝相変だったらやだな。
  少し焦ったが開き直るしかない。
なんとなく腹をさすると一部の皮膚が糊をつけたようになっていた。――ああ。直樹さんの……。
  夢じゃなくて現実だという実感が緋紗を安心させる。
 腹はそのままにして下着を見つけ履き、新しくベージュのシャツワンピースを出した。
ブラジャーを着けていると直樹が入ってきたので思わず、「きゃ」と服で身体を隠した。
 直樹が優しく笑って、「ご飯食べよう。書斎の正面のドアを開けて」と言って出て行った。

 緋紗は急いで着て顔を洗いに行き、言われたドアを開ける。
 「おはようございます」
 「おはよう。そこ座って」
  小さなテーブルに水とトーストとプレーンオムレツと綺麗にカットされたトマトが出されていた。――あ。男の人にご飯を作られてしまった。
  綺麗な色に焼かれたオムレツを眺めていると直樹がコーヒーを入れてきて椅子に座った。
 「食べよう」
 「いただきます」
  緋紗はトマトを食べてトーストをかじり、フォークでオムレツを割るととろりとした半熟の部分が出てきた。
 「上手ですね」
 「ペンションで鍛えられたかな。独り暮らししてた時期もあったしね」
 緋紗の周りの男たちも料理自慢が多くいて実際に美味しいのだが、客に出すことを意識して作る直樹はさすがで、仕上げが綺麗だった。

 「美味しい」
 「よかった。そうだ、水着持ってきた?」
――あの水着か……。
 「ええ。一応。海にでも行くんですか?」
  どうやら泳ぎに連れて行ってくれるらしい。
 「お盆って泳ぐと海に引きずられてしまうんじゃないですか?」
  眉をひそめる緋紗に、「海じゃないから大丈夫だよ。その話ってクラゲ避けのための迷信じゃないの?」と、直樹は笑う。
 「えー。霊ですよ」
 「わかったよ。海はいかないね」
  緋紗は少しほっとしてコーヒーを飲んだ。

 一緒に軽く片付けてのんびり話をする。
 抱き合う時間ももちろん大事だがゆっくりと話せるこの時間が緋紗にはとても愛しかった。
 好きな本、ゲーム、音楽、映画色々。同じものが好きだとこんなに楽しいのかと思うくらい盛り上がった。
 今まで色々な人との出会いで世界が広がったことがあったが、直樹といると世界が深まる気がする。
 緋紗は身体だけじゃなく心も一つになりたいと願い、そして直樹さんが好きとこっそり心の中でつぶやいた。
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