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第一部
17 ペンション『セレナーデ』
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「着いたよ」
富士山のふもとの高原だ。
標高が少し高いのか風がひんやりする。
「寒い?」
「大丈夫です。上着持ってますから」
岡山も静岡も暖かいし新幹線や駅は人ごみで暑かったくらいなので緋紗は少し薄着だった。
もう少し涼しい風に当たっていたい気もしたが初日から体調を崩すといけないと思いなおし、バッグからパーカーを出して羽織った。
そこへオーナーの吉田和夫と妻の小夜子がやってくる。
「ただいま」
直樹が声をかけた。
「おかえり」
二人そろって直樹に返した。
和夫は小柄だががっちりしていかつく、小夜子は女性にしては大柄で華やかな雰囲気のある美人だ。
「オーナーの吉田和夫さんと奥さんの小夜子さんだよ」
二人の印象的な容貌と迫力に少したじろいだ緋紗だったがとても優しい笑顔で、「よくきてくれたわね」 と、小夜子に言われ頑なにならずにすんだ。
和夫も「よろしくね」と、いかつい顔からは想像できないくらいの気さくさで話しかけてきた。――よかった。怖くなさそう。
「初めまして。宮下緋紗です。よろしくお願いします」
緊張したがとにかく名前を言って挨拶する。
「ひさちゃんね。よろしく」
そう言ってすぐ二人は直樹に向かって、「彼女連れてきたの?」「野郎じゃないのか」と、興味津々そうに話しかける。
「男なんて言ってませんよ」
しれっという直樹に二人は顔を見合わせて『まあ!』というような顔をした。
「大丈夫ですよ。ひさはそこらへんの男より使えると思います」
笑いながら直樹はペンションのほうへ向きを変えた。
「そういうことじゃなくてねー」
小夜子はやれやれという表情でまた和夫の顔を見た。
「あいつ、ほんとマイペースだよなあ。まあいいや。じゃ明日から手伝ってもらおうかな。今日はうちのペンションの案内とか仕事の説明とか直樹にしてもらってよ」
「はい」
心配そうな表情の緋紗に小夜子がフォローするように、「ひさちゃん、心配しないでいいのよ。さきに直君に泊まる部屋に連れて行ってもらってね。ああ、お昼ご飯まだなんでしょう?あとで食堂へいらっしゃいな」歌うようなふんわりとした様子で言われて少し緋紗は落ち着いた。
直樹が、「ひさ、おいで」というのでぺこりと二人に頭を下げてついて行った。
和夫と小夜子は、「いつの間にあんな娘できてたのかしらねえ。静岡の娘って感じじゃないわよね」
「あいつのプライベートは謎だからなあ」と、久しぶりに起こった事件のように話し合っていた。
駐車場から少し歩くとペンションの全容が見られる。
「うわーすごい。ログハウスだー。大きいー」
「このログハウスはね。オーナーの手作りなんだよ」
「へえー」
どっしりとした丸太小屋で重厚な雰囲気があるが、日当たりがよく明るいので温かみを感じることができる。
周りにはモミの木が植えられており少しだけオーナメントが飾りつけられていた。
それらがこのペンションを異国のような童話の世界のような雰囲気を醸し出している。
「ここが玄関だけど、今回はお客じゃないから裏口から出入りするね」
「はい。了解です」
階段の前にペンションの木製の看板が立てられている。
手彫りで浮き出ている文字を読んだ。
「『ペンション セレナーデ』」――セレナーデ……。小夜曲。奥さんの名前かなあ。
建物の右側に周ると屋根がないが高い柵で覆われた場所がある。
「ここが温泉だよ。晴れているときは綺麗な星空が見えるよ」
「そうなんですか」
「カップルのお楽しみだね」
緋紗はさっと顔を赤らめたが直樹には何気ない会話のようだ。
真裏には木造のプレハブが建っている。
「ここがオーナーの陶芸のアトリエだよ。後で見せてもらおうか」
「はい。是非」
緋紗はオーナーのアトリエに興味津々だった。
直樹が裏口の木のドアを開ける。
「どうぞ」
入って左手に二階へ続く階段がある。
「上だよ」
階段を上がる直樹にキョロキョロしながら緋紗はついて行く。
「ここね」
直樹が靴を脱いで上がり荷物を小さなテーブル付近に置くと、緋紗も見習ってあがり見回す。
「かわいい」
赤いじゅうたんが敷き詰められ白木のベッドが二台置かれている。
カラフルなキルトでできたベッドカバーを手で触ってみる。
設備は洗面くらいしかなく、こじんまりしているが狭苦しさを感じないのは木のぬくもりのせいだろうか。
「お昼ご飯いこうか」
「あ、はい。素敵な部屋ですね」
「うん。しかもこれだけ木に囲まれてると建物の中って感じがしないよ」
そういわれてみると視覚的なものもそうだが香りも違うし空気も程よい暖かさと湿り気を感じる。
緋紗は深く呼吸をして木の香りを吸い込んだ。
直樹について階段を下りて広いところに出るとさっきは気が付かなかったが食堂の角にグランドピアノが置いてある。
「もしかして奥さんの」
「うん。小夜子さんはピアニストなんだよ。今はここでしか弾かないけどね」
「へー」
陶芸の世界以外にあまり触れていない緋紗には色々新鮮なことばかりだ。
「ちょっと厨房をのぞこう」
食堂の奥の厨房へ向かう直樹に緋紗は遅れないようにぴったっりついて行く。
「和夫さん、います?」
「おう。すぐできるよ。食べるか?」
「はい。ありがとうございます。ちょっと覗かせてください」
「どうぞどうぞ」
緋紗は厨房に通された。
和夫がオーナー兼コック長だ。
カレーのいい匂いがする。
オールステンレスで機能的なこの厨房はログハウスと相反するような気がするが働く側にとっては気が引き締まるような場所にみえる。
「とりあえず食堂のテーブルに座んなよ。今、忙しくないから」
楕円の木製のテーブルに生成りのリネンのテーブルクロスがかかっていて、手作りの小さな粉引きの植木鉢に植えられた小さなクリスマスローズが飾られている。
緋紗が陶器とクリスマスローズの柔らかい白さに見入っていると妻の小夜子がコーヒーを運んできた。
「一応私からも仕事の説明をしておくから、そのあと直君に詳しく教えてもらってね」
「はい」
緋紗は背筋を伸ばした。
小夜子は笑いながら、「ああ、そんなに固くならないで」と言い、咳払いをして説明を続けた。
「今はまだお客様はいないの。夕方四時から五時くらいに五組みえるわ。女の子三人組とカップル三組、それと家族四人様ね。みんな一泊の予定よ。明日は六組ね」
このペンションは部屋が十室あり二部屋がファミリー向けであとはカップル向けだ。
観光地から少し離れているので満室になってしまうことがないが飛び入りも稀にあり半分くらいの部屋は埋まるのだった。
「今日はディナーを手伝ってもらうくらいかしら。明日は朝から色々お願いしちゃうけれど」
綺麗に巻いた髪を束ねてお茶を飲んでいる小夜子は堂々とした大人の女性という感じだ。
緋紗は少しみとれて、「頑張ります」と赤面しながら返事した。
「さて、じゃ直君あとよろしくね。そうそう今晩はほんとごめんね。後で部屋に持っていくから」
「しょうがないですね」
そっけなく言う直樹をよそに「じゃあとでね、ひさちゃん」と、手を振って厨房へ向かった。
緋紗は二人きりの時の直樹しか知らないので吉田夫婦に対する素っ気なさが不思議に見える。
「じゃ一階の案内をするよ。さっきの厨房はもういいね」
「はい」
玄関の方へ歩くとさっきは階段で見えなかったが大きな暖炉があった。
「ここがロビーだよ」
「暖炉、本当に使ってるんですか」
「うん。僕が薪割りしてるんだよ」
少しだけ火種が残っているようだった。
本格的に火をつけるのは客が来る夕方以降なのだろう。
「こっちがお風呂。ここは男女別。一応お客さんの入浴時間は十七時から二十時が主だけど、僕たちは二十一時以降だね」
「わかりました」
「外の温泉はもちろんいつ入ってもいいけどね。冬に夜中はきついかな。夏なんかはカップルが夜中に入ってるけどね」
笑いながらいう直樹に緋紗は返答に詰まった。
「そこの部屋がオーナーたちの部屋」
前を素通りして玄関前にやってきた。
「ここがフロントだね。そこの小さなショップの会計もここでやるんだ。レジ使える?」
「はい。なんとか」
少し土産物を眺めてみる。
特産物らしいものが少しとお菓子、そしてオーナーの手作りらしい湯呑があった。
「可愛らしいものを作るんですねえ」
いかつい和夫から想像しにくかったが、陶芸家は案外自分の容姿とかけ離れたものを作ることを緋紗は知っていた。
「だね。無骨ものそうなのにね」
くすりと笑いながら直樹は歩いた。――結構言うんだ。
玄関からでてさっきと逆のほうへ向かう。
「こっちに菜園があるんだよ。ここの料理に使ってるんだ。全部じゃないけどね」
「いいなあ。自給自足のような生活ですねえ」
「なかなか不便だよ?娯楽は少ないし」
「そうですねえ。ネットさえ、きてればなんとかなりそうですけど」
「だね。ネットは欲しいね」
二人で同意しながら歩いた。
「ここが薪割り場。今日はもう十分みたいだから、明日また暇を見てやるかな。ひさはしなくていいよ」
「そうですか?一応できますよ?」
「そう。頼もしいね」
そう言いながら緋紗に口づけする。
不意を突かれて驚き後ずさりした緋紗に直樹は笑って、「アトリエ覗こうか」と、歩き始める。
緋紗は呼吸を整えてアトリエに向かった。
富士山のふもとの高原だ。
標高が少し高いのか風がひんやりする。
「寒い?」
「大丈夫です。上着持ってますから」
岡山も静岡も暖かいし新幹線や駅は人ごみで暑かったくらいなので緋紗は少し薄着だった。
もう少し涼しい風に当たっていたい気もしたが初日から体調を崩すといけないと思いなおし、バッグからパーカーを出して羽織った。
そこへオーナーの吉田和夫と妻の小夜子がやってくる。
「ただいま」
直樹が声をかけた。
「おかえり」
二人そろって直樹に返した。
和夫は小柄だががっちりしていかつく、小夜子は女性にしては大柄で華やかな雰囲気のある美人だ。
「オーナーの吉田和夫さんと奥さんの小夜子さんだよ」
二人の印象的な容貌と迫力に少したじろいだ緋紗だったがとても優しい笑顔で、「よくきてくれたわね」 と、小夜子に言われ頑なにならずにすんだ。
和夫も「よろしくね」と、いかつい顔からは想像できないくらいの気さくさで話しかけてきた。――よかった。怖くなさそう。
「初めまして。宮下緋紗です。よろしくお願いします」
緊張したがとにかく名前を言って挨拶する。
「ひさちゃんね。よろしく」
そう言ってすぐ二人は直樹に向かって、「彼女連れてきたの?」「野郎じゃないのか」と、興味津々そうに話しかける。
「男なんて言ってませんよ」
しれっという直樹に二人は顔を見合わせて『まあ!』というような顔をした。
「大丈夫ですよ。ひさはそこらへんの男より使えると思います」
笑いながら直樹はペンションのほうへ向きを変えた。
「そういうことじゃなくてねー」
小夜子はやれやれという表情でまた和夫の顔を見た。
「あいつ、ほんとマイペースだよなあ。まあいいや。じゃ明日から手伝ってもらおうかな。今日はうちのペンションの案内とか仕事の説明とか直樹にしてもらってよ」
「はい」
心配そうな表情の緋紗に小夜子がフォローするように、「ひさちゃん、心配しないでいいのよ。さきに直君に泊まる部屋に連れて行ってもらってね。ああ、お昼ご飯まだなんでしょう?あとで食堂へいらっしゃいな」歌うようなふんわりとした様子で言われて少し緋紗は落ち着いた。
直樹が、「ひさ、おいで」というのでぺこりと二人に頭を下げてついて行った。
和夫と小夜子は、「いつの間にあんな娘できてたのかしらねえ。静岡の娘って感じじゃないわよね」
「あいつのプライベートは謎だからなあ」と、久しぶりに起こった事件のように話し合っていた。
駐車場から少し歩くとペンションの全容が見られる。
「うわーすごい。ログハウスだー。大きいー」
「このログハウスはね。オーナーの手作りなんだよ」
「へえー」
どっしりとした丸太小屋で重厚な雰囲気があるが、日当たりがよく明るいので温かみを感じることができる。
周りにはモミの木が植えられており少しだけオーナメントが飾りつけられていた。
それらがこのペンションを異国のような童話の世界のような雰囲気を醸し出している。
「ここが玄関だけど、今回はお客じゃないから裏口から出入りするね」
「はい。了解です」
階段の前にペンションの木製の看板が立てられている。
手彫りで浮き出ている文字を読んだ。
「『ペンション セレナーデ』」――セレナーデ……。小夜曲。奥さんの名前かなあ。
建物の右側に周ると屋根がないが高い柵で覆われた場所がある。
「ここが温泉だよ。晴れているときは綺麗な星空が見えるよ」
「そうなんですか」
「カップルのお楽しみだね」
緋紗はさっと顔を赤らめたが直樹には何気ない会話のようだ。
真裏には木造のプレハブが建っている。
「ここがオーナーの陶芸のアトリエだよ。後で見せてもらおうか」
「はい。是非」
緋紗はオーナーのアトリエに興味津々だった。
直樹が裏口の木のドアを開ける。
「どうぞ」
入って左手に二階へ続く階段がある。
「上だよ」
階段を上がる直樹にキョロキョロしながら緋紗はついて行く。
「ここね」
直樹が靴を脱いで上がり荷物を小さなテーブル付近に置くと、緋紗も見習ってあがり見回す。
「かわいい」
赤いじゅうたんが敷き詰められ白木のベッドが二台置かれている。
カラフルなキルトでできたベッドカバーを手で触ってみる。
設備は洗面くらいしかなく、こじんまりしているが狭苦しさを感じないのは木のぬくもりのせいだろうか。
「お昼ご飯いこうか」
「あ、はい。素敵な部屋ですね」
「うん。しかもこれだけ木に囲まれてると建物の中って感じがしないよ」
そういわれてみると視覚的なものもそうだが香りも違うし空気も程よい暖かさと湿り気を感じる。
緋紗は深く呼吸をして木の香りを吸い込んだ。
直樹について階段を下りて広いところに出るとさっきは気が付かなかったが食堂の角にグランドピアノが置いてある。
「もしかして奥さんの」
「うん。小夜子さんはピアニストなんだよ。今はここでしか弾かないけどね」
「へー」
陶芸の世界以外にあまり触れていない緋紗には色々新鮮なことばかりだ。
「ちょっと厨房をのぞこう」
食堂の奥の厨房へ向かう直樹に緋紗は遅れないようにぴったっりついて行く。
「和夫さん、います?」
「おう。すぐできるよ。食べるか?」
「はい。ありがとうございます。ちょっと覗かせてください」
「どうぞどうぞ」
緋紗は厨房に通された。
和夫がオーナー兼コック長だ。
カレーのいい匂いがする。
オールステンレスで機能的なこの厨房はログハウスと相反するような気がするが働く側にとっては気が引き締まるような場所にみえる。
「とりあえず食堂のテーブルに座んなよ。今、忙しくないから」
楕円の木製のテーブルに生成りのリネンのテーブルクロスがかかっていて、手作りの小さな粉引きの植木鉢に植えられた小さなクリスマスローズが飾られている。
緋紗が陶器とクリスマスローズの柔らかい白さに見入っていると妻の小夜子がコーヒーを運んできた。
「一応私からも仕事の説明をしておくから、そのあと直君に詳しく教えてもらってね」
「はい」
緋紗は背筋を伸ばした。
小夜子は笑いながら、「ああ、そんなに固くならないで」と言い、咳払いをして説明を続けた。
「今はまだお客様はいないの。夕方四時から五時くらいに五組みえるわ。女の子三人組とカップル三組、それと家族四人様ね。みんな一泊の予定よ。明日は六組ね」
このペンションは部屋が十室あり二部屋がファミリー向けであとはカップル向けだ。
観光地から少し離れているので満室になってしまうことがないが飛び入りも稀にあり半分くらいの部屋は埋まるのだった。
「今日はディナーを手伝ってもらうくらいかしら。明日は朝から色々お願いしちゃうけれど」
綺麗に巻いた髪を束ねてお茶を飲んでいる小夜子は堂々とした大人の女性という感じだ。
緋紗は少しみとれて、「頑張ります」と赤面しながら返事した。
「さて、じゃ直君あとよろしくね。そうそう今晩はほんとごめんね。後で部屋に持っていくから」
「しょうがないですね」
そっけなく言う直樹をよそに「じゃあとでね、ひさちゃん」と、手を振って厨房へ向かった。
緋紗は二人きりの時の直樹しか知らないので吉田夫婦に対する素っ気なさが不思議に見える。
「じゃ一階の案内をするよ。さっきの厨房はもういいね」
「はい」
玄関の方へ歩くとさっきは階段で見えなかったが大きな暖炉があった。
「ここがロビーだよ」
「暖炉、本当に使ってるんですか」
「うん。僕が薪割りしてるんだよ」
少しだけ火種が残っているようだった。
本格的に火をつけるのは客が来る夕方以降なのだろう。
「こっちがお風呂。ここは男女別。一応お客さんの入浴時間は十七時から二十時が主だけど、僕たちは二十一時以降だね」
「わかりました」
「外の温泉はもちろんいつ入ってもいいけどね。冬に夜中はきついかな。夏なんかはカップルが夜中に入ってるけどね」
笑いながらいう直樹に緋紗は返答に詰まった。
「そこの部屋がオーナーたちの部屋」
前を素通りして玄関前にやってきた。
「ここがフロントだね。そこの小さなショップの会計もここでやるんだ。レジ使える?」
「はい。なんとか」
少し土産物を眺めてみる。
特産物らしいものが少しとお菓子、そしてオーナーの手作りらしい湯呑があった。
「可愛らしいものを作るんですねえ」
いかつい和夫から想像しにくかったが、陶芸家は案外自分の容姿とかけ離れたものを作ることを緋紗は知っていた。
「だね。無骨ものそうなのにね」
くすりと笑いながら直樹は歩いた。――結構言うんだ。
玄関からでてさっきと逆のほうへ向かう。
「こっちに菜園があるんだよ。ここの料理に使ってるんだ。全部じゃないけどね」
「いいなあ。自給自足のような生活ですねえ」
「なかなか不便だよ?娯楽は少ないし」
「そうですねえ。ネットさえ、きてればなんとかなりそうですけど」
「だね。ネットは欲しいね」
二人で同意しながら歩いた。
「ここが薪割り場。今日はもう十分みたいだから、明日また暇を見てやるかな。ひさはしなくていいよ」
「そうですか?一応できますよ?」
「そう。頼もしいね」
そう言いながら緋紗に口づけする。
不意を突かれて驚き後ずさりした緋紗に直樹は笑って、「アトリエ覗こうか」と、歩き始める。
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