我儘女に転生したよ

B.Branch

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皆で作りましょう

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「お母様!僕も何か作ってみたいです!」

恒例のお茶とお菓子を楽しんでいると、ヴィアベルが突然こんな事を言い出した。

「ヴィアベルも料理をしたいの?」

「はい!」

「アンネもー!」

ヴィアベルが力強く頷くと、一緒にいたアンネリース様まで元気に手を挙げる。

う~ん、料理かぁ、、、
私が作ったフレンチトーストの影響ですかね。
でも、私でさえ料理を作る事に許可が出ている訳ではないのに、ヴィアベルが許してもらえるとは思えない。

ちらり、とベルタを見てみる。
はい、却下みたいですね。
恐らく料理どころか厨房に行くのもとんでもない話なのだろう。

どうしましょう?
こんなにキラキラした目で見つめてくる二人の期待を裏切るのは可哀想だよね、、、
あ、そうだ!あれ作ろうかな!
実は庭を散歩した時に気になっていたものがあったのです!

「ヴィアベル、アンネリース様、一緒に甘い飲み物を作りましょうか」

「甘い飲み物ですか?紅茶やワインとは別のものですか?」

そう、一般的なこの世界で子供達に飲まれているものは紅茶やアルコールを飛ばしたホットワインなどです。ハーブティーなども有りますが、子供にはあまり好まれません。
所謂いわゆるジュースのような飲み物は存在しません。

「ええ、ワインと同じで果汁から作るのよ」

「そうなのですか?お母様はお酒も作れるのですか?凄いです!」

「しゅごいー!」

ヴィアベルやアンネリース、侍女達も驚いた様に見てくるが、お酒なんて作りませんよ!
それに飲酒は20歳からですよ!この世界では違いますけど。

「違うわ。お酒より甘くて美味しい飲み物よ。きっとヴィアベルもアンネリース様も好きだと思うわ」

私が子供達に説明していると、周りの侍女達が話をよく聞こうとどんどんこちらににじり寄って来ていた。
本来、侍女や召使いは、給仕をする時以外は控えて存在を感じさせないものだ。
うちの人達は最近皆自己主張し過ぎですね。まあ、構いませんが、、、

「では、お庭に行きましょうか!」

アンネリース様がこちらに手を伸ばしてきたのでその手を握り、ヴィアベルにも手を差し出すと、嬉しそうに手を取ってくれる。
小さな手を優しく握って目的の一角まで歩き出す。

「お母様、この果実が甘い飲み物になるのですか?」

「ええ、そうよ。いい香りでしょう?」

「はい、でも食べた事ありませんでした」

そう、目の前にある木に生る実は、この世界では果実として食べたりも何かに加工されたりもせず、落ちて鳥の餌になるか捨てられるだけのものだ。
私は前世の事を思い出しこの木を見た時、なんて勿体無い!と真剣に思った。

「お母様、この果実まだ青くて硬いです。採るには早いのではないですか?」

ヴィアベルが最もな指摘をして来る。
やっぱりうちの子賢いですね!3歳とは思えません!この世界の子供達は総じて早熟です。
あ、互助組合ギルドで出会った子達はちょっと子供っぽかったかな?
でも、あの年で冒険者になっているのだからやはり早熟なのだろう。

あれから講習は私を抜きにして進められた。
初歩の初歩、"魔力を意識する"で浮くなどというあり得ない事を仕出かした私は互助組合ギルド長に見学を言い渡された。
皆が魔法の実技講習を受けているのを一人寂しく見ていました。体育を見学する生徒みたいでしたね。

次の予約をして帰ろうとすると、目を血走らせた互助組合ギルドの受付嬢達に取り囲まれました。
し、仕事はいいんですか?って感じでしたが、文句を言おうとした冒険者の皆さんは受付嬢達の一睨みですごすごと去って行きました、、、ご迷惑お掛けします。
何故か私が互助組合ギルドに来ると、一度は業務停止状態になるみたいです。

原因はクラーラさんに渡した紅茶のロールケーキでした。
涙ぐんでお礼を言われた後、「どこで手に入れたの!?」と聞かれて困ってしまいました。
素性を隠しているので、屋敷の料理長が作ったとは言えません。仕方なく、知り合いに貰ったと言うしかありませんでした。

冒険者の事をあまり詮索する事は互助組合ギルド受付嬢として控えなければならないので、それ以上は聞いてきませんでしたが、互助組合ギルド長が勇敢にも止めてくれたお陰もあるでしょう。
あの狂気に満ちた女性群を止められるなんて勇者ですね!私は思わずディーターを盾にしてしまいました。ごめんね、ディ君。
また持って来ると約束したらようやく帰らせてもらえました。疲れた、、、

「硬いでしゅー」

あー駄目ですよ!
目を離した隙にアンネリース様が実を齧っていました。 
急いで実を取り上げて、口の中の実もぺっと吐き出してもらいました。
小さい子はちゃんと見ておかないと駄目ですね!危ない危ない!

「二人の言う通りまだ硬くて熟していませんが、今回の料理にはこの状態の実を使います。では、二人共実を採ってもらえるかしら?」

「はい!」

「とりゅのー!」

二人が張り切って採ってくれた結果、実は直ぐに集まった。
侍女達に実を渡して、洗っていてヘタの部分を取り除いてもらうようにお願いする。

「ベルタ、保存用の広口の大きめの瓶を用意してもらえるかしら?」

「保存用の瓶ですか?」

「ええ、それに熱湯を入れて欲しいの」

これで熱湯消毒します。瓶をきれいに滅菌しなければいけないのです!
この世界では菌の存在は勿論知られていませんので、煮沸で菌を殺すという概念もありません。

「奥様、熱湯なんて瓶に入れたら割れてしまいますよ?」

「そうね、だから始めは温めのお湯を入れて瓶を温めてから熱湯を注ぐの、そうすれば割れないわ。その後きちんと瓶を乾かしてね。これで食中毒を予防出来るわ」

「そうなのですか!?」

ベルタが驚きに目を見開く。
食中毒などは、菌というものを知らないこの世界の人々には防ぎようもないものなのだ。
魔法治癒や毒消しの薬草などはあるが、根本的な原因を断つということは考えられていない。あっても、古いものを食べない事や汚いものはきれいに洗うとかアルコールを掛けるぐらいだろう。
流石に焼いたり煮たりした方が病気になりにくいぐらいの認識はあるが、その程度だ。

「奥様はなぜそのような事を、、、いえ、、直ぐに用意して参ります」

ベルタは当然の疑問を口にしたが、追求せずに下がっていった。

「お母様、これをどうするのですか?」

机の上には、先程採った果実と瓶、そして砂糖が置かれていた。

「実と砂糖を瓶の中に入れて蓋をするのよ」

そう、私は果実のシロップを作ろうとしているのです!
私が庭で見つけた実はとても梅に似ていました。香りも形もそっくりで驚きました!
よく青梅に氷砂糖とお酒を入れて梅酒を作りますが、青梅と氷砂糖だけだと梅シロップというものになります。
これを水で割ると梅ジュースになるのです!美味しいんです!
この世界には氷砂糖が有りませんので砂糖で作りますが、一応出来ます。

「ヴィアベル、アンネリース様、これは飲めるまで20日ほどかかります。出来るまで毎日朝と晩、軽く揺すって欲しいの。そうしたら美味しい果汁が実から出て来るわ。やってもらえるかしら?」

「はい!僕頑張ります!」

「アンネもやるのー!」

二人は嬉しそうに自分用の瓶を見つめている。
段々果汁が増えていく過程を毎日眺めているのも意外と楽しいものなので、二人には自分でやってみて欲しいですね!
そうして出来た自分作の梅ジュースはさぞ美味しい事でしょう!

頑張れ二人共!勿論私も作るよ!美味しいもん!
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