13 / 49
【2章】マヌルネコ
新しい仕事2
しおりを挟む
「ユキくんとあんなに仲良しってすごいね。俺なんか最初から警戒されてダメだったよ。前のシッターさんなんて、もっと酷かったね」
「え、シッターさんがいたのですか?」
千歳が聞くと、代わりにレグルシュが答えた。
「ああ。そうだったな」
レグルシュが先月雇ったシッターはベータの女性だったという。何でも、シッターの腕を噛んだり、部屋を泥んこだらけにしたり、とにかくユキは粗暴だったそうだ。最終的に、シッターのほうから契約を切られ、それ以来、他人と二人きりにすると、癇癪を起こすらしい。
「あのユキくんが……ですか?」
信じられない。その後もシッターを他の人に変えたりしたが、ユキは一向に懐かず、さらには体調を崩してしまったと、レグルシュは語る。
「レグから聞いたんだけど、和泉さん。今、レグのところに居候してるんだってね」
「は、はい」
「住み込みのシッターさんとして、和泉さんを雇うのはどうかな。レグ?」
宇野木は、千歳とレグルシュを交互に見やりながら言った。当然のように、レグルシュは憤る。
「オメガと暮らせと言っているのか? ありえないな。シッターを頼むにしても、住み込みはなしだ」
「あの家だだっ広いんだからいいでしょ。和泉さんの一人くらい。ユキくんにとってもいいと思うけどね。ねーユキくん?」
宇野木がさきほどの千歳の真似をして、ユキに手を振る。ユキはべーっと舌を出して、ロフトの奥へ引っ込んでしまった。
レグルシュは長考した末に、「住み込みでもいい」と、千歳に向けて言った。
「ほ、本当ですか? ありがとうございます!」
宇野木の一声で、千歳は住まいを失わずに済んだ。ユキも大人達の会話を聞いて大半を理解しているようだった。千歳が飲食のバイト先へ、辞退の電話を入れ終えた後、レグルシュは車を出した。
「ユキ、メガネのおじちゃんきらい……」
「嫌いなんて言ったらダメだよ」
「はぁい。ちーは好き!」
ストレートな「好き」に、千歳は思わず顔を赤らめた。
初対面のときから千歳を気にかけてくれていたユキが、本当にシッターの手を焼いていたのだろうか。宇野木やレグルシュの話を聞いた後でも、にわかには信じがたい。
千歳は目線だけを、運転席のレグルシュへ向けた。
──シッターさんとして、レグルシュさんに認めてもらえたら、ユキくんのことをもっと聞こう。
やれることは何でも頑張ろうと、千歳は決意を胸に灯した。
「え、シッターさんがいたのですか?」
千歳が聞くと、代わりにレグルシュが答えた。
「ああ。そうだったな」
レグルシュが先月雇ったシッターはベータの女性だったという。何でも、シッターの腕を噛んだり、部屋を泥んこだらけにしたり、とにかくユキは粗暴だったそうだ。最終的に、シッターのほうから契約を切られ、それ以来、他人と二人きりにすると、癇癪を起こすらしい。
「あのユキくんが……ですか?」
信じられない。その後もシッターを他の人に変えたりしたが、ユキは一向に懐かず、さらには体調を崩してしまったと、レグルシュは語る。
「レグから聞いたんだけど、和泉さん。今、レグのところに居候してるんだってね」
「は、はい」
「住み込みのシッターさんとして、和泉さんを雇うのはどうかな。レグ?」
宇野木は、千歳とレグルシュを交互に見やりながら言った。当然のように、レグルシュは憤る。
「オメガと暮らせと言っているのか? ありえないな。シッターを頼むにしても、住み込みはなしだ」
「あの家だだっ広いんだからいいでしょ。和泉さんの一人くらい。ユキくんにとってもいいと思うけどね。ねーユキくん?」
宇野木がさきほどの千歳の真似をして、ユキに手を振る。ユキはべーっと舌を出して、ロフトの奥へ引っ込んでしまった。
レグルシュは長考した末に、「住み込みでもいい」と、千歳に向けて言った。
「ほ、本当ですか? ありがとうございます!」
宇野木の一声で、千歳は住まいを失わずに済んだ。ユキも大人達の会話を聞いて大半を理解しているようだった。千歳が飲食のバイト先へ、辞退の電話を入れ終えた後、レグルシュは車を出した。
「ユキ、メガネのおじちゃんきらい……」
「嫌いなんて言ったらダメだよ」
「はぁい。ちーは好き!」
ストレートな「好き」に、千歳は思わず顔を赤らめた。
初対面のときから千歳を気にかけてくれていたユキが、本当にシッターの手を焼いていたのだろうか。宇野木やレグルシュの話を聞いた後でも、にわかには信じがたい。
千歳は目線だけを、運転席のレグルシュへ向けた。
──シッターさんとして、レグルシュさんに認めてもらえたら、ユキくんのことをもっと聞こう。
やれることは何でも頑張ろうと、千歳は決意を胸に灯した。
112
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。
目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。
「あなたは、どなたですか?」
その一言に、彼の瞳は壊れた。
けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。
セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。
優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。
――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。
一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。
記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。
これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました
2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。
様々な形での応援ありがとうございます!
「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」
星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。
ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。
番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。
あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、
平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。
そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。
――何でいまさら。オメガだった、なんて。
オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。
2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。
どうして、いまさら。
すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。
ハピエン確定です。(全10話)
2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる