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アクシデントの余波 緊急オペ

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町田柊士は、いつものように高校にも行かずに地元のダチがたむろする喫茶店【木漏れ日】のいつもの席でママの作るホットサンドを口に運んでいた。


店のドアベルは扉が開くたびにガランガランと店内に響く。

…いつまでダッセーもん付けてるんだか…

肘を突き長身の躰を丸く折り曲げるように悪い姿勢でホットサンドを二口三口と頬張り アイスコーヒーで胃に流し込む。


ガランガラン♪

「ママァ…ビール頂戴っ」
息急き切って入ってきたのは 高すみれと言う元地元のレディースの番長で、今は夜の商売にどっぷり浸かっている。

〝高〟(こう)と言う苗字が珍しいのは 彼女の父親が中国残留孤児の息子だったからである。戦争孤児の大半は中国から日本に帰化し日本名を名乗るが 日本にも古来より〝高〟の苗字が存在し、あえて日本名に変えずにきた。

カウンターで一気にビールを飲み干すと背後の薄暗い隅の席で見慣れた男が食事をしていたのがすみれの視界に入った。

「あれ~しゅうちゃん ひっさしぶりじゃん!元気してたぁ?」

町田柊士は 派手に安物のジュエリーをジャラジャラと身につけ、フェイクファーの豹柄のジャケットを羽織ったすみれを一瞥してから無視を決め込んだ。

 「しゅーちゃん、 そっち座っていい?」


 「来るなっ 鬱陶しぃ…」

すみれの表情が豹変する。

「ちょっとぉ! 誰にそんな口効いてんのさぁ…」
すみれが空になったビール瓶の口を掴みかかった時、

「すみれちゃん、 やめなさい しゅうちゃんも色々忙しいんだから…そっとしておいてあげて」
木漏れ日のママがすみれをなだめていると、ガランガランっとドアが開き高校生らしき男子がなだれ込んできた。

「ママァ…冷たいのぉ頂戴っ……」

店のカウンターに高すみれ、奥の席に町田柊士 2人を見つけて …
「柊士さんっお疲れっすっ…」と皆が直立して町田柊士に挨拶し
カウンターに向かっては、「すみれさんっご無沙汰っすっ今日もお綺麗で!」
とすみれをもてはやした。

「綺麗じや無いのよっ 完璧メイクがドブス妹のせいでめちゃくちゃよっ やき入れてやったわ、ちょっとスッキリよ」





すみれは2杯目のビールを飲み干して
「ママァ アタシにも柊士と、同じの作ってぇ~」
甘えた声で、厨房に入ったママに頼み込む。

「すみれさ~ん マジっすみれさん美人なのに…妹さんとぜんぜん似てないっすね~ 」
柊士と同じ高校に通っているらしい男子がすみれの気を引こうと声をかけた。

「ちょっとアンタっあんなどぶネズミと一緒にしないでくれるっ…胸糞悪いったら… あんなのは人間じゃ無いから!そこいらの残飯でも漁ってりゃあいいのよ…うふふっ…もっとも当分残飯だって喉通らないくらいヤキ入れてきたけど…さ…」

得意気にペラペラと話す内容はかなりヤバいとその場の学生達も気がついて、話題を逸らそうとした時、ガランガランとドアベルが威勢よく鳴り響きっ図体のデカい男がヅカヅカと入ってきた。

「柊ちゃん! お待たせっ やっと撮影から抜け出せたわっ、ママァ~水くれっ水ぅっ」

町田柊士は席から立ち上がると その190㎝はゆうに超えているであろう男に近づき、


「純也 水飲んでる場合じゃ無いかも…ちょっと連れて行って欲しいところができた…」

町田柊士の表情が怖い…とその男が感じると水も飲ませてもらえないままま店から出た。

「お前のクラスでやられてる女いたよな…」
二人は少し離れた喫茶店の駐輪場まで歩きながら話した。

「えっ あー高華蓮?」
男はクラス中で浮いた存在で発育不良かと思われるほど痩せ細った同級生の女子を思いうかべた。

「純也っその女の家知ってるか?」
柊士は自分の大型バイクに跨っていた。

「しゅっ柊ちゃん!どうしたんだ?何あったんだ」
純也と呼ばれたその男も自分の大型バイクに跨った。


「そいつの姉ちゃんが さっき木漏れ日に来て〝妹にヤキ入れてきた〟って自慢しやがった」

柊士は 以前から純也がクラスで浮きまくる〝高華蓮〟の事を話題にだしていた。モデル業が順調で高校生のアルバイトの稼ぐ数百倍も収入が入り 〝高華蓮〟を何かと気にかけて庇ってきていた。
元来優しく思いやりある男だと言う事は幼い頃から解っていた柊士は純也のささやかなボランティア話しに荒んでいた自分が救われているように思っていた。

「柊ちゃんっそれヤバいかも!後ついて来てよっ」

学校に来た時は必ず高華蓮の無事な姿を確認するのが日課になっていた。純也が高華蓮を贔屓する事で表だった彼女へのイジメは減ってはいたが、純也がモデル業が忙しく学校に来れない日が増えるにつれて、彼女も登校拒否状態になっていた。この状況を学校は複雑な家庭環境もわわかっていて何の手立ても講じることなくほぼ放置していた。


喫茶店【木漏れ日】からさほど遠くない所に 公営の低所得者住宅が点在する。建物は相当古い長屋で 一戸が3DK程度の広さと思われた。

「柊ちゃん! 此処っここが華蓮の家っ…」言うが早いか、フルフェイスのヘルメットを投げ捨て純也は華蓮の家の玄関の木製扉を叩いて

「かれんっ かれんっ!開けろっ…聴こえるかっ 飛島だっ 飛島純也だっ!かれんっ…おいっ おいっかれんっ!」

純也は激しく扉を叩くので拳に薄ら血が滲み出した。
激しく玄関扉を叩くが、中にいるはずの高華蓮からの返事は全くなく、気配すら感じられない。

その時 突然
「純也どけっ!」
柊士は扉目掛けてバイクで突っ込んだ。

突然すぎて  ぎゃゃぁーッ!純也が悲鳴をあげる。




パトカーと救急車が前後してT大学附属病院を目指し首都高都心環状入った。その後をホ◯ダrebel1100とハー◯ーF◯bbが後に続く。
病院に到着した時間僅か10分。

救命救急の看護士や、医師が救急車がバックで侵入出来るよう観音開きのステンレス製扉を左右に開く。

柊士と純也はバイクを地下駐輪場に泊めて警察の事情聴取を救急外来待合室で受けていたが、2人が未成年である事から保護者に、連絡を取るように警官から強く指導されていた。

「あの~もしもし、純也です 社長いますか?」
飛島純也が、機転を効かせて所属先の芸能事務所の社長を当てにした。

『もしもーしっ、じゅんやちゃんっ 今どこにいるの?』



その頃救命の手術場では、

「黒崎先生っ未だなの!もう保たないわっ」


血液内科医で何故か麻酔科も標榜している笠原医師が救急搬送された女子高生の緊急手術に入る前に麻酔と生命維持に必要な維持装置に繋ぐ処置を胸部外科の三浦先生と協力しながら行った。

「リノ先生、落ち着いて下さいよ、黒崎先生はケアンズの学会であった大規模災害のTV会見に捕まっているのかも知れません。ギリギリまで待ってダメなら僕が責任もって〝やり〟ますっ!」

三浦先生の普段聴かれない強い言葉に、笠原リノは

…あら…ハルヒったら、今日はカッコいいじゃん…
と男らしさを見直していた。


カッ  カッ   カッ  カッ
力強い大股の歩幅を思わせる足音が近づいてくる。
救命救急外来の手術場のスライド扉が音もなく開いた。


「や~お待たせぇした 諸君!ちょっとマスコミが煩くって院内の裏路を遠回りしててさっ やっと辿り着いたって訳で…」

黒崎先生の額の汗がその言い訳が嘘でない事を証明していた。

「黒崎ぃぃっ! さっさとやってっ ヤバいんだからぁ!早くっ!」

笠原リノの悲鳴に近い絶叫が、黒崎先生にぶつけられた。

「お~俺のリノちゃん…オペ場の妻っ!ちょっと頑張ってみるかぁ」

黒崎先生の最悪の冗談は笠原リノのトキメキを復活させる。

黒崎先生は手術台の上で滅菌ドレープで覆われた患者をゆっくり見回した。ざっくり聴きとって手書き記入された患者のサマリーをチェックして…
傷の位置 方向 生命反応の数値 あらかじめ三浦先生が画像診断したカルテと画像を確認した。

「左肺に折れた肋骨が刺さってるな…無理に抜けないな…お嬢ちゃんまだ17か…リノ!顔は? 」

「大丈夫みたいよ、 ちょっと打撲痕有るけど 痣になる程じゃないと思うわ、それにしてもちょっと痩せすぎだけど、
整ったパーツよ 」

「形成外科要らねえぇか …歯は折れてねぇよな…もうちょっとで頭いかれるような転倒だったなぁ 相当フルボッコか…」

「黒崎ぃ…やっぱ虐待?それとも喧嘩?」

「この画像だと一方的にやられてるな…」

「三浦先生っ腕の見せ所ですよっ…開胸は側臥位左腋窩からアプローチして見ますか…」

「えー側臥位ですか!術野が狭過ぎて…厳しく無いですか?」
ややびびる三浦先生に、

「先生…考えても見て下さいよ この女の子まだ嫁入り前ですよ、好きな男に綺麗な躰見せたいじゃないですか?
俺だったら好きな女が躰中傷だらけでもエロい事考えられますが並の男じゃシャツのボタン外した途端オッパイの真ん中から臍まで真っ二つの手術の縫い傷みたら 縮んで回復不能がオチだ…」

黒崎先生のその下品な表現に、何故かその場に居た、手術場担当ナースやリノ先生までウルっと、きた。

若い臨床検査技師などは大きく頷いた。

「わかりましたっ、先生っ僕が今持てる力全てぶっ込みます。最後の縫合は裁縫部の名に恥じない作品に仕上げますっ」

「三浦先生なら大丈夫、俺は他の臓器に損傷ないか診ていきますから…肋骨は一旦バラしてある程度整復しますか?整形要らんでしょっ」

こうして 高華蓮 の手術は7時間近くにも及んだ。


……………

手術が済んだのは夜八時を過ぎていた。

「純也っ!どうしたのっ 何があったの?」

飛島純也が所属しているモデル事務所
【双葉エージェント】の城野崎双葉社長がタクシーをすっ飛ばして渋谷からT大学附属病院救命救急外来にやって来た。

そのけたたましさに 警備員から注意をうけ 警察官には事情聴取は外でしてくれ…と言われ追い出された。

患者の家族には連絡がつかず、町田柊士と飛島純也が当面患者被害者高華蓮の身元の保証人とならざるおえなかったが、双葉社長の登場で
煩雑な事務手続きは全て会社顧問弁護士に任せる事になった。


「でも…惜しい事したわねー…純也のクラス写真見せてもらって 彼女…ものすごくインパクトあったのよ!彼女なら磨けばパリコレも夢じやないって踏んでて いつスカウトするか考えていたのに…ねえ 純也 いっその事 彼女退院したら整形させちゃわない? 元々身長は高いし 顔ちっちゃくて あの血色悪いソバカス!東洋のケ◯◯モ◯で売れそうよ!」

双葉社長の暴走は止まらない。そこへ守衛さんが近づいてきて「手術の執刀医から説明あります」と呼び出された。

双葉社長は「アタシも行くわ かかった費用はアタシが建て替えてあげる…」


  …どうせ其れの返済ちらつかせて華蓮をモデルにするんだよな…


飛島純也はそれも華蓮にとっては悪い話しじゃないと思った。


*高華蓮は三年後 パリコレの舞台で名だたるハイブランドのランウェイを歩く事になる。


三人は救命救急外来の家族説明室で、執刀医が来るの待った。

狭い空間に193㎝80kg 189㎝75kgのデカすぎる二人の高校生を従えた148㎝の双葉社長がとことん貧弱に見えた。

説明室に入ってきたのは三浦ハルヒ先生だった。

おおまかな病状説明と手術の内容を説明した。
「じゃっ彼女目立った傷は残ら無いんですね!大丈夫なんですね!」
双葉社長は商品としての高華蓮の価値が下がら無い可能性に歓喜した。

「はい、実は今 世間でカリスマドクターと騒がれている黒崎ヒカル先生が、今回の手術に参加してくれまして……」

   …   えっ!黒崎ヒカル!…

「黒崎先生って!もしかして、鎌倉出身のぉ‼️」

三浦先生はこの芸能事務所の社長は話しを何処に持っていくんだろうか、と一瞬たじろいだが、

「多分 ただ私も黒崎先生とは仕事上の付き合いでプライベートはわかりかねます。で、いいですか?患者さんのこれからの治療方針ですが…」

双葉社長は三浦先生の説明は上の空で 黒崎ヒカルとの思い出の中学生時代にトリップしていた。

     …………
     ………………

「では、病棟の準備が整い次第病棟からお声がけしますのでもう少しお待ちください。」、救急外来の、看護師が三浦先生の説明が終わる頃合いに、説明室に入って来て三人に伝えた。


「柊ちゃん 長い時間悪かったな…あとは俺と双葉社長で何とかするよ…この、埋め合わせは絶対するからな ほんと助かったわ」

「おぅ…気にすんな」
町田柊士は結局朝からホットサンドを食べたきり何も口にしてなかった。
…まぁ純也も同じか…しかし腹へった…
病院の表玄関はとうの昔に閉められていて、出入りは救急外来の出入り口しか無くなっていた。

のそのそと救急外来の出入り口に向かい守衛室の前のノートに何時に出たか、誰の見舞いかなど、記入する手続きを取らないと出られなかった。

守衛の姿が見えないので、守衛室を屈んで窮屈そうに覗くと、守衛と何やら怪しげな黒髪をオールバックに撫で付けたスーツ姿のおじさんが守衛の入れたお茶を飲みながら談笑している。


…っく、仕事しろやっ 勝手に出るからな…

守衛を睨みつけてそのまま無許可で、救急外来を出ようとした時


「ボウズっちょっと待てっ」

男の低い声に呼びとめられた。


「お前さ、ひょっとして今日担ぎ込まれた女子高生の これか?」
呼び止めた男は守衛とお茶を飲んでいた男だった。
親指を立てて 女子高生の男か?と尋ねてきたのだ。

 「別に…」柊士は余所見しながら答えた。



   「答えになってないな…まぁいい ところで此処でお前を呼び止めたのも何かの縁だ…ちょっと頼まれてくれないか?どうせ暇なんだろ?」

男はニヤついて町田柊士の顔を見ていた。

「んな訳ないじゃんかっ!朝っぱらからマッポに事情聴取されて保護者居ねえからって病院で拘束されてっ飯も喰ってねえんだよっジジイ!いらつかせるんじゃねぇよっ」


「ふんっ せめてオヤジぐらいなら許そうと思ったが、お前っクソガキの癖に仕事で疲れたお前のダチの生命の恩人に〝ジジイ〟って言いやがったな!今から奉仕させてやるっ」


「おっさん、何言ってんだかさっぱりわからねーよ 何ゴネてんだっ」

町田柊士はいきなり絡んできた黒髪オールバック、スーツ姿のおじさんにややたじろいだ。
背後に警備員が控えているので暴れるわけにもいかない。

「守衛さん、特上普通盛りでいいかい?…」

「いやー黒崎先生っいつも気ぃ使ってくれて悪いなぁ…」

「何言ってるんですか、今日もマスコミに捕まらないように庇って貰っちゃって大助かりですよ…じゃちょっと行ってくるんで、待っててくださいよ」


町田柊士は守衛と黒髪オールバックの会話が全く見えていなかった。

「おいっ、ボウズ さっき守衛さんに聴いたんだが、いいバイクに乗ってるんだって?」

黒崎先生は背広とネクタイを守衛室に置いてカッターシャツ姿で再び町田柊士の前でに立ち塞がった。
身長差10㎝近くあるのに迫力に於いては黒崎先生の比ではなかった。
「それが…何か?」
柊士はまた先生から目を逸らせて答える。

「貸せ」

…はぁ…「はぁっ❗️」

町田柊士は先生の無茶振りに答える事も出来ない。

………


「おらっ 駐輪場いくぞっ お前だって腹減ってるだろ?美味いものたらふく食わせてやるから バイク貸せ」


   何言ってんだ…

「バイク貸せって…あんた大型二輪免許あるの?」


先生はスラックスの後ろポケットからカードケースを取り出して中からジュネーブ条約に則った国際免許証を町田柊士に見せた。

「こっこれって…」
見た事の無い英語表記のカードに先生の顔写真が印刷されている。

「だよな、未だ高校生だもんな ボウズは、…国際免許証だ乗れないものは戦争車両だけだ」

話しながら地下一階の駐車場に着いた。

病院職員のミニバイクとたまにある250ccクラスのバイクを凌駕する巨大なバイクが二台並んで止められていた。

「あれか?どっちだボウズのは?」

「ボウズって…名前あるんですが…」

「お前だって 俺をジジイ呼ばわりしたじゃねぇかっ クソがつかないだけありがたく思え!」



 「すみませんでした。
町田と言います…高華蓮の手術してくれた…黒崎先生?ですよね…」

町田柊士は助けてもらった先生にもう威嚇行動は取らない。

「まぁいい 礼儀は知ってるな。
お前くらいだよ この超有名な俺様を知らないなんて、しかもジジイだと…クククク…」


  「俺のバイクコレです。純也は稼いでるので…ハー◯ーのほうです。」

「鍵っよこせ」
先生は手のひらを柊士の腹部近くに突きつけた。
泣く子も黙る半グレ町田柊士が黒崎先生の前では借りてきた猫状態に陥っている。
先生は柊士のホ◯ダに跨ると早速エンジンキーを回した。


「俺の中古なんで…」
柊士は中古の片遅れが横の新車のハー◯ーに比べて恥ずかしいと思った。

「いや、よく手入れしているなぁ…カスタマイズされたボディーもカッコいいじゃねえかっ ハイスクールのガキには勿体無い代物だな…
…お前 ダチのメット借りとけっ 俺にお前のメット貸せ!」


「えっ先生一人で乗り回すんじゃ…」
柊士はてっきりバイクを先生が面白半分に乗りますのかと思っていた。

「バカっ メシ買いに行くんだよ 一人じや荷物持てねーだろ?お前は荷物持ちだ、ほれ後ろに乗れっ」


ドッドッドッドッドッド…と重低音のエンジン音が心地よいリズムをきざむ。

「行くぞ っ」


バイクなど何年も乗る機会が無かったのにも関わらず、流れるようなコーナーリングで、T大学附属病院の地下駐輪場からカーブを描きながら地上にでた。



辺りはもう街の光以外景色は闇の中に沈んでいた。



町田柊士はこの時 先生から病棟にいる飛島純也 双葉社長の分の焼き肉弁当も手土産に貰った。

「お前とダチは2人前は食うだろ? 特上ロースだから有り難く思って食え」


先生は入院中の妻の病室に戻るまえに馴染みの守衛さんと焼き肉弁当で腹を満たした。


病院周辺には まだこの時間になってもケアンズの災害で活躍した黒崎先生のコメントを取ろうと報道関係の記者やワイドショーの記者たちが彷徨いている…先生は焼き肉弁当を食べた後 愛しい妻の病室に直行した。



神様は、先生と柊士 この二人に 十数年後 運命的な再会を用意していた。




          







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