136 / 199
134話、大魔王降臨
しおりを挟む
「でだ、みんな! 一人一個ずつ『ヤッタァメン』を買って、それで勝負するぞ!」
「いいだろう! でも、店内で騒ぐとおばちゃんに迷惑がかかるから、結果は外で見ようね」
「皆さんが楽しんでいる所を見たいので、店内で引いても大丈夫ですよー」
店側に配慮した注意をハルが促すも、遠くからおばちゃんの、おしとやかなお願いが割って入り。
みんなが黙り込みながら、おばちゃんの居る方へ顔を移し、少しの間を置いて顔を戻した。
「じゃあみんな、おばちゃんの前で引こうぜ!」
「そうね、そうしましょう」
店側から正式な許可を貰ったので、まず一番目に、コータロー君が『ヤッタァメン』を選び。二番目に、カオリちゃんが吟味し。
三番目の私は、底にある『ヤッタァメン』を引っ張り出し。一番最後に、険しい表情で長考したハルが選んだ後。一度受付けまで戻り、一人十円ずつおばちゃんに支払いをした。
「はい、確かに受け取りました。それでは皆さん、頑張って下さいね」
「おれが選んだの、超自信あるぜ! たぶん百円当たるかも!」
「わたしのだって、すごく自信があるよ!」
「その大いなる自信とやら、諸共打ち砕いてみせようぞぉ」
未だ、小物感満載の魔王役を演じているハルが、「ひぇっひぇっひぇっ」と甲高い魔女笑いをする。あんた、ここに来てから、情緒の移り変わりが忙しいわね。
「ちなみに、春茜さん。最後にヤッタァメンを購入したのは、いつでしょうか?」
「え? えっと~……、七、八年ぐらい前になると思います」
「そうですか。そうなりますと、当たりの配当額が変わっているので、気を付けて下さいね」
「うそっ!? そうなんですか?」
本当に驚いていそうな声を上げたハルへ、ニコニコ顔のおばちゃんが頷き返す。
「実は、そうなんですよ。昔は十円、二十円、五十円、百円だったんですがねぇ。今は、もう一コ、五十円、百円の振り分けになっているんですよ」
「げっ……!? 十円と二十円が、無くなっちゃったんですね。うわぁ~、マジかぁ。分かりました、ありがとうございます」
「へぇ~。昔って、十円と二十円の当たりもあったんだ」
「知らなかったや」
おばちゃんの説明に驚愕して、目を丸くさせたハルが感謝の言葉を送り。元から知らなかったコータロー君とアカリちゃんが、あっけらかんと言う。
私なんて両方知らなかったから、リアクションすら取れなかったわ。おばちゃんの説明によれば、今のヤッタァメンには『もう一コ』、『五十円』、『百円』の当たりがあるらしい。
それで昔は『もう一コ』が無くて、代わりに『十円』と『二十円』の当たりが含まれていたと。要は、十円の当たりが『もう一コ』になり、二十円の当たりが無くなった訳ね。
それじゃあ、昔に比べると当たりが一つ減っているじゃない。なんだか残念に思うわ。
「昔って当たりが四つあったんだ。いいなー、アカ姉。なんかずるい」
「た、確かに。今だと、当たりが三つしかないもんね。うわー、色々変わっちゃったんだなー」
「わたし、もう一コが出ただけで喜んでたのに。春茜お姉さん、ずるいよ」
「ええ~……? な、なんか、すみません……」
現代っ子による悪意の無い文句に気圧されて、二人に平謝りをするハル。見ていて面白い構図だから、もっとハルに文句を垂れて欲しいかも。
「まあいい。ここで私が、百円の当たりを引けばいいんだろう? プロの力、見せつけてやんよぉ」
しかし、ハルも負けてはいない。今日一番の悪い顔になり、手招きをしながら二人を挑発し始めた。ほんと、子供が絡んだハルって面白いわね。
「とうとう本性を現したな! カオリ、メリーお姉ちゃん、アカ姉をやっつけるぞ!」
「うん!」
「あ、私もなのね」
確かこの勝負、個人戦じゃなかったっけ? いつの間にか、ハル対私達の共闘戦になってしまった。
まあ、いいか。これはこれで、楽しくなってきたじゃないの。なら私も、この空気に乗ってしまおう。
「ハル。ここで私が勝って、プロの座を譲ってもらうわよ」
「おおっ! メリーお姉ちゃん、かっこいい!」
「そうだそうだ! こっちには、メリーお姉さんがいるんだもん! 絶対に負けないぞ!」
「グゥッ……! 確かに、メリーさんの力はまだ未知数! おのれぇ、とんだ曲者が居やがったもんだ」
未知数な私の存在に畏怖し、顔に汗が噴き出したハルが、手の甲でアゴ部分を拭う。すごいわね、ハル。場面や雰囲気に合わせて、自由自在に汗を出せるなんて。
「しかし、ここは結果が全ての世界よ。せっかく、三対一になったんだ。まず、私から引かせてもらうぜ?」
「みんな、アカ姉が引くぞ! 気をつけろ!」
どうやら、魔女系魔王のキャラを変えたらしく。声を男寄りにして、凛々しさが宿る切れ目になったハルが、先行を宣言してヤッタァメンの蓋を開けた。
「いいだろう! でも、店内で騒ぐとおばちゃんに迷惑がかかるから、結果は外で見ようね」
「皆さんが楽しんでいる所を見たいので、店内で引いても大丈夫ですよー」
店側に配慮した注意をハルが促すも、遠くからおばちゃんの、おしとやかなお願いが割って入り。
みんなが黙り込みながら、おばちゃんの居る方へ顔を移し、少しの間を置いて顔を戻した。
「じゃあみんな、おばちゃんの前で引こうぜ!」
「そうね、そうしましょう」
店側から正式な許可を貰ったので、まず一番目に、コータロー君が『ヤッタァメン』を選び。二番目に、カオリちゃんが吟味し。
三番目の私は、底にある『ヤッタァメン』を引っ張り出し。一番最後に、険しい表情で長考したハルが選んだ後。一度受付けまで戻り、一人十円ずつおばちゃんに支払いをした。
「はい、確かに受け取りました。それでは皆さん、頑張って下さいね」
「おれが選んだの、超自信あるぜ! たぶん百円当たるかも!」
「わたしのだって、すごく自信があるよ!」
「その大いなる自信とやら、諸共打ち砕いてみせようぞぉ」
未だ、小物感満載の魔王役を演じているハルが、「ひぇっひぇっひぇっ」と甲高い魔女笑いをする。あんた、ここに来てから、情緒の移り変わりが忙しいわね。
「ちなみに、春茜さん。最後にヤッタァメンを購入したのは、いつでしょうか?」
「え? えっと~……、七、八年ぐらい前になると思います」
「そうですか。そうなりますと、当たりの配当額が変わっているので、気を付けて下さいね」
「うそっ!? そうなんですか?」
本当に驚いていそうな声を上げたハルへ、ニコニコ顔のおばちゃんが頷き返す。
「実は、そうなんですよ。昔は十円、二十円、五十円、百円だったんですがねぇ。今は、もう一コ、五十円、百円の振り分けになっているんですよ」
「げっ……!? 十円と二十円が、無くなっちゃったんですね。うわぁ~、マジかぁ。分かりました、ありがとうございます」
「へぇ~。昔って、十円と二十円の当たりもあったんだ」
「知らなかったや」
おばちゃんの説明に驚愕して、目を丸くさせたハルが感謝の言葉を送り。元から知らなかったコータロー君とアカリちゃんが、あっけらかんと言う。
私なんて両方知らなかったから、リアクションすら取れなかったわ。おばちゃんの説明によれば、今のヤッタァメンには『もう一コ』、『五十円』、『百円』の当たりがあるらしい。
それで昔は『もう一コ』が無くて、代わりに『十円』と『二十円』の当たりが含まれていたと。要は、十円の当たりが『もう一コ』になり、二十円の当たりが無くなった訳ね。
それじゃあ、昔に比べると当たりが一つ減っているじゃない。なんだか残念に思うわ。
「昔って当たりが四つあったんだ。いいなー、アカ姉。なんかずるい」
「た、確かに。今だと、当たりが三つしかないもんね。うわー、色々変わっちゃったんだなー」
「わたし、もう一コが出ただけで喜んでたのに。春茜お姉さん、ずるいよ」
「ええ~……? な、なんか、すみません……」
現代っ子による悪意の無い文句に気圧されて、二人に平謝りをするハル。見ていて面白い構図だから、もっとハルに文句を垂れて欲しいかも。
「まあいい。ここで私が、百円の当たりを引けばいいんだろう? プロの力、見せつけてやんよぉ」
しかし、ハルも負けてはいない。今日一番の悪い顔になり、手招きをしながら二人を挑発し始めた。ほんと、子供が絡んだハルって面白いわね。
「とうとう本性を現したな! カオリ、メリーお姉ちゃん、アカ姉をやっつけるぞ!」
「うん!」
「あ、私もなのね」
確かこの勝負、個人戦じゃなかったっけ? いつの間にか、ハル対私達の共闘戦になってしまった。
まあ、いいか。これはこれで、楽しくなってきたじゃないの。なら私も、この空気に乗ってしまおう。
「ハル。ここで私が勝って、プロの座を譲ってもらうわよ」
「おおっ! メリーお姉ちゃん、かっこいい!」
「そうだそうだ! こっちには、メリーお姉さんがいるんだもん! 絶対に負けないぞ!」
「グゥッ……! 確かに、メリーさんの力はまだ未知数! おのれぇ、とんだ曲者が居やがったもんだ」
未知数な私の存在に畏怖し、顔に汗が噴き出したハルが、手の甲でアゴ部分を拭う。すごいわね、ハル。場面や雰囲気に合わせて、自由自在に汗を出せるなんて。
「しかし、ここは結果が全ての世界よ。せっかく、三対一になったんだ。まず、私から引かせてもらうぜ?」
「みんな、アカ姉が引くぞ! 気をつけろ!」
どうやら、魔女系魔王のキャラを変えたらしく。声を男寄りにして、凛々しさが宿る切れ目になったハルが、先行を宣言してヤッタァメンの蓋を開けた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる