137 / 199
135話、立場を有利にさせる交渉
しおりを挟む
「あっ。ふっ、ふっふっふっふっ……」
ハルが『ヤッタァメン』の蓋を開けて、裏を確認した矢先。素の緩い反応を見せたかと思えば、口角を鋭く上げながら不敵に笑い出した。
「数年のブランクが空いていたし。まあ、こんなもんか」
「なっ……!?」
「ごっ……」
「五十円、ですって……?」
魔王の表情に板がついてきたハルが、指で挟んでいた蓋を、私達にも見えるようひっくり返す。その蓋の裏をよく見てみると、銀色の文字で五十円と記されていた。
五十円って、上から二番目の当たりじゃない! まさか、本当に引くなんて夢にも思っていなかった。ハルめ、やってくれたわね?
「まあ、春茜さん。すごいですねぇ」
「あっははは……。正直、私が一番驚いています。うわぁ、マジか~。五十円引いちゃったや」
おばちゃんのやんわりとした祝福に、魔王化を解いたハルが、嬉しそうに素直な感想を述べた。なんだ。狙って引いた訳じゃなくて、たまたまだったのね。
「……おい、どうするカオリ? ここで百円引かないと、アカ姉に勝てねえぞ!?」
「だ、大丈夫だって! わたしたちなら、絶対に引けるよ!」
ホクホク顔のハルとは相反し、絶望の淵に立たされたコータロー君とカオリちゃんは、青ざめた表情で苦し紛れに鼓舞し合い出した。
なんだか懐かしいわね。絶望色に染まった子供の顔を見るなんて、実に数ヶ月振りぐらいかしら? ……じゃない!
今は二人共、私の仲間なのよ。どうにかして、少しでも私達の立場を有利にさせてあげないと。
「ねえ、ハル。今って、あんた対私達の戦いよね?」
「そうそう! ヤッタァメンって、こんな味だった……、え? あっ……。そうだな。それがどうした?」
完全に油断し切っていて、ヤッタァメンを食べていたハルに、突拍子もなく質問してみると、一瞬だけ腑抜けた真顔になり、瞬時に魔王化してくれた。流石はハルね、切り替えが素早いわ。
「なら、私達が当てた額を、足しちゃってもいいかしら?」
「た、足す? ああ~、なるほどぉ……? ま、まあ、プロの私にとって、さほど問題無いハンデだ。よかろう、許可してやる」
どうやら、ハルにとって想定していなかった相談らしく。バツが悪そうな声を発した後、動揺していそうな震えた声で許可をくれた。
「本当!? だったら、おれたちの中で五十円の当たりを二回引けば、アカ姉に勝てるぞ!」
「うん、そうだね! なんだか、また当たる気がしてきたかも!」
けど、二人にとって反撃の狼煙を上げるには、十分な条件だったようで。かつての気力と元気が蘇り、勝ちへの活路を見出したようね。よかった、ハルに交渉してみて。
「流石はメリーお姉ちゃん、ナイスな相談だよ!」
「わたしだったら、何も言わないまま引いてたよ!」
「あんた達。勝負をするのはこれからなんだから、喜ぶにはまだ早いわよ?」
「あっ、そうだった!」
そう。私達は、まだ勝っていない。ハルに交渉をして、立場をほんの少し有利にさせただけの事。
なので、まだ油断してはいけない。本当の勝負は、これからよ。
「それじゃあ、一気に引く?」
私達の顔を交互に見返している、カオリちゃんが言う。
「そうだな、そうしよう!」
「私も、それに賛成よ」
コータロー君と私が賛同すると、カオリちゃんはコクンと力強く頷き。「よーし、なら!」という合図と共に、私達はハルが居る方へ顔を向けた。
「春茜お姉さん、わたしたちも引くよ!」
「ほう? ついに引くか。なら、掛かって来るがいい! まとめて返り討ちにしてくれようぞ!」
気迫がこもった台詞を言いながら、右手を前にビシッとかざすハル。もう、素振りまで魔王ね。
今のハルなら、マントを羽織っていても違和感が無さそうだわ。むしろ羽織って欲しい。
「そんな大口叩いてられるのも、今のうちだからな! カオリ、メリーお姉ちゃん、引くぞ!」
「うん!」
「ええ」
さてと、ああ言ったものの。三人中二人が、五十円以上の当たりを引く確率なんて、たぶん相当低いわよね。
そもそもの話。売られていたヤッタァメンの中に、当たりが残っているのかすら怪しい。下手したら、ハルが引いた五十円の当たりが、最後だという可能性だってある。
いや、引く前から弱気になるのは違うわね。せっかく交渉をして、コータロー君とカオリちゃんの元気を取り戻させてあげたんだもの。
せめて、引く前ぐらいは強気にならないと。ここで私が、百円の当たりを引いて、コータロー君達を勝利に導いてあげるわ!
ハルが『ヤッタァメン』の蓋を開けて、裏を確認した矢先。素の緩い反応を見せたかと思えば、口角を鋭く上げながら不敵に笑い出した。
「数年のブランクが空いていたし。まあ、こんなもんか」
「なっ……!?」
「ごっ……」
「五十円、ですって……?」
魔王の表情に板がついてきたハルが、指で挟んでいた蓋を、私達にも見えるようひっくり返す。その蓋の裏をよく見てみると、銀色の文字で五十円と記されていた。
五十円って、上から二番目の当たりじゃない! まさか、本当に引くなんて夢にも思っていなかった。ハルめ、やってくれたわね?
「まあ、春茜さん。すごいですねぇ」
「あっははは……。正直、私が一番驚いています。うわぁ、マジか~。五十円引いちゃったや」
おばちゃんのやんわりとした祝福に、魔王化を解いたハルが、嬉しそうに素直な感想を述べた。なんだ。狙って引いた訳じゃなくて、たまたまだったのね。
「……おい、どうするカオリ? ここで百円引かないと、アカ姉に勝てねえぞ!?」
「だ、大丈夫だって! わたしたちなら、絶対に引けるよ!」
ホクホク顔のハルとは相反し、絶望の淵に立たされたコータロー君とカオリちゃんは、青ざめた表情で苦し紛れに鼓舞し合い出した。
なんだか懐かしいわね。絶望色に染まった子供の顔を見るなんて、実に数ヶ月振りぐらいかしら? ……じゃない!
今は二人共、私の仲間なのよ。どうにかして、少しでも私達の立場を有利にさせてあげないと。
「ねえ、ハル。今って、あんた対私達の戦いよね?」
「そうそう! ヤッタァメンって、こんな味だった……、え? あっ……。そうだな。それがどうした?」
完全に油断し切っていて、ヤッタァメンを食べていたハルに、突拍子もなく質問してみると、一瞬だけ腑抜けた真顔になり、瞬時に魔王化してくれた。流石はハルね、切り替えが素早いわ。
「なら、私達が当てた額を、足しちゃってもいいかしら?」
「た、足す? ああ~、なるほどぉ……? ま、まあ、プロの私にとって、さほど問題無いハンデだ。よかろう、許可してやる」
どうやら、ハルにとって想定していなかった相談らしく。バツが悪そうな声を発した後、動揺していそうな震えた声で許可をくれた。
「本当!? だったら、おれたちの中で五十円の当たりを二回引けば、アカ姉に勝てるぞ!」
「うん、そうだね! なんだか、また当たる気がしてきたかも!」
けど、二人にとって反撃の狼煙を上げるには、十分な条件だったようで。かつての気力と元気が蘇り、勝ちへの活路を見出したようね。よかった、ハルに交渉してみて。
「流石はメリーお姉ちゃん、ナイスな相談だよ!」
「わたしだったら、何も言わないまま引いてたよ!」
「あんた達。勝負をするのはこれからなんだから、喜ぶにはまだ早いわよ?」
「あっ、そうだった!」
そう。私達は、まだ勝っていない。ハルに交渉をして、立場をほんの少し有利にさせただけの事。
なので、まだ油断してはいけない。本当の勝負は、これからよ。
「それじゃあ、一気に引く?」
私達の顔を交互に見返している、カオリちゃんが言う。
「そうだな、そうしよう!」
「私も、それに賛成よ」
コータロー君と私が賛同すると、カオリちゃんはコクンと力強く頷き。「よーし、なら!」という合図と共に、私達はハルが居る方へ顔を向けた。
「春茜お姉さん、わたしたちも引くよ!」
「ほう? ついに引くか。なら、掛かって来るがいい! まとめて返り討ちにしてくれようぞ!」
気迫がこもった台詞を言いながら、右手を前にビシッとかざすハル。もう、素振りまで魔王ね。
今のハルなら、マントを羽織っていても違和感が無さそうだわ。むしろ羽織って欲しい。
「そんな大口叩いてられるのも、今のうちだからな! カオリ、メリーお姉ちゃん、引くぞ!」
「うん!」
「ええ」
さてと、ああ言ったものの。三人中二人が、五十円以上の当たりを引く確率なんて、たぶん相当低いわよね。
そもそもの話。売られていたヤッタァメンの中に、当たりが残っているのかすら怪しい。下手したら、ハルが引いた五十円の当たりが、最後だという可能性だってある。
いや、引く前から弱気になるのは違うわね。せっかく交渉をして、コータロー君とカオリちゃんの元気を取り戻させてあげたんだもの。
せめて、引く前ぐらいは強気にならないと。ここで私が、百円の当たりを引いて、コータロー君達を勝利に導いてあげるわ!
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる