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104話、商店街の有名人
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「さってと。今日の食べ歩きは、ここでしようかしらね」
目に付けたお店は、メイン通りの裏路地を入った場所にある、喧騒があまり届いてこない駄菓子屋。
うん、いい雰囲気を醸し出しているじゃない。下町に佇んでいそうな見た目に、胸が躍ってくるわ。
下屋に入ったので、傘を閉じて軽く水気を切る。傘立てに傘を置き、外よりも気持ちヒンヤリとした空気が漂う店内に入った。
「わあ、いっぱいあるわね」
明かりの薄い店内には、インターネットやテレビで観た物から、初めて見る物が棚に陳列されていて、所狭しと並んでいる。
ザリザリとしたコンクリート剥き出しの床が、またいい味を出しているわね。良きレトロ感を演出しているし、沢山ある駄菓子の光景に合っているわ。
「あら、いらっしゃい」
早速、数ある駄菓子を物色しようとした矢先。奥の方から、おっとりとした声が聞こえてきたので、暗さに慣れてきた視界をそちらに向ける。
薄暗さが更に際立つ、視界の先。のっぺりとした座布団に、ちょこんと正座をした人間のおばちゃんが居た。
なんだか、おせんべいを焼くのが、妙に上手そうな印象を受ける見た目をしているわね。
「お邪魔してるわ。あんたが、ここの店員さん?」
「ええ、そうですよ。あなた、メリーさんでしょ?」
「あら、やっぱり知ってたのね」
「もちろん知ってますよ。噂はかねがね聞いてましたけど、やはり可憐で素敵ですねぇ」
「そ、そう。ありがとう」
この駄菓子屋には、初めて来たというのに。どうやら、容姿まで細々と知れ渡っているらしい。もはや私を知らない人なんて、この商店街に居ないんじゃないかしら。
「それで、今日は何をお求めで?」
「そうねぇ……」
事前に、食べたい駄菓子はピックアップしてきたものの。こうも大量にあると、視線を横に滑らせるだけで、食欲がどんどん移り変わっていってしまう。
私が食べようとしていたのは、『うんめぇ棒コーンポタージュ味』、『ベビースターダストラーメン』、『わさびのり次郎』の三つ。
しかし『酢だこ四郎』、『ジャーキーするめ』や『カルパッス』。『焼どんどん』、『サイダー餅』、『串カステラ』も捨て難い。
小腹を満足させたいなら、ポン菓子の『ニンジン』、『サンダーブラック』、『ポテトフライチキン』、『こぉ~んポタージュ』を攻めるのもアリね。
「もう、全部食べてみたいわ」
「ふふっ。見かけによらず、食いしん坊さんなのねぇ。焦らなくても、お菓子は逃げないですよ」
「うっ……。た、確かに」
そう、おばちゃんの言う通りだ。いくら欲望を膨らませても、ここに並んだ駄菓子は決して逃げ出さない。むしろ、いつでも食べてくれと待ち構えている。
だったら、焦る必要はない。何度もここへ通い、その日に食べたくなった物を食べればいい。絶えぬ欲望の赴くままにね。
「なあ、あれ! メリーお姉ちゃんじゃね?」
「あっ、本当だ!」
「え?」
突如として、室内の薄暗さを吹き飛ばしかねない、明るい声が背中を押してきたので、後ろを振り返ってみれば。
白光を纏う入口に、嬉しそうな笑顔をした男女の子供が、私に指を差しながら立っていた。
嘘でしょ? 一応、色んな人間と会話をしているから、ある程度は顔を知られているけれども。あんな子供にまで、私の存在が周知されているっていうの?
そんな、私に興味津々の二人が、ビチョビチョの傘を傘立てに置き。共に走りながら近づいて来ては、ワクワクした表情で私を見上げた。
「なあ、あんた! メリーお姉ちゃんでしょ?」
「ええ、そうよ。こんにちは」
「やっぱ本物だ! すっげー!」
「わぁ~っ、キレイ~!」
改めて問い詰めてきた子供に、挨拶を返すや否や。二人して目をギンギンにさせて興奮し出してしまった。
私って、子供達の間では、どんな存在として知れ渡っているのかしら? 本物と言われたし……。まさか、都市伝説だってバレていないわよね?
「おれの母ちゃんが言ってたんだ! すっげー美人な人が、商店街によく来るって! 見たらすぐに、あんただってわかったよ!」
「あ、あら、そう。そう言われると、なんだか嬉しいわ。お母さんに、ありがとうって言っておいてちょうだい」
「うん、わかった!」
へえ、私が美人。揚げ物専門店のおばちゃんには、可愛いと言われた事があるけれども。美人っていうのは、初めて言われたわ。
私が美人、ねぇ。人間からしてみると、そう見られているんだ。美人って、どう振る舞えばいいんだろう? とりあえずは、いつもの様にしていよっと。
「それでそれで! ここにいるっていう事は、メリーさんお姉さんもお菓子を買うんでしょ? どのお菓子を買うの?」
両手を握り、小刻みに上下へ揺らす女の子も、キラキラと輝かしい眼差しで質問をしてきた。子供っていうのは、なんとも無邪気なのね。
普段だと、泣き喚いている姿しか見ていなかったから、すごく新鮮に感じるわ。
「とりあえず、うんめぇ棒とベビースターダストラーメン、わさびのり次郎を買おうと思ってるわ」
「あっ! おいしいよね、それ! わたしもよく食べてる! 置いてある場所知ってるから、案内してあげよっか?」
「あら、助かるわ。それじゃあ、案内してちょうだい」
「うん! 来て来て、こっちだよー!」
終始笑顔の女の子が、男の子と一緒に駆け出していく。よく食べているという事は、駄菓子についても詳しいはず。
だったら後で、あの子達のオススメを教えてもらおう。そうすれば、次回ここへ来た時に、迷わず駄菓子を買える。
おいしい駄菓子も食べられるし、一石二鳥だ。とりあえず、今はあの子達を追い掛けないと。
目に付けたお店は、メイン通りの裏路地を入った場所にある、喧騒があまり届いてこない駄菓子屋。
うん、いい雰囲気を醸し出しているじゃない。下町に佇んでいそうな見た目に、胸が躍ってくるわ。
下屋に入ったので、傘を閉じて軽く水気を切る。傘立てに傘を置き、外よりも気持ちヒンヤリとした空気が漂う店内に入った。
「わあ、いっぱいあるわね」
明かりの薄い店内には、インターネットやテレビで観た物から、初めて見る物が棚に陳列されていて、所狭しと並んでいる。
ザリザリとしたコンクリート剥き出しの床が、またいい味を出しているわね。良きレトロ感を演出しているし、沢山ある駄菓子の光景に合っているわ。
「あら、いらっしゃい」
早速、数ある駄菓子を物色しようとした矢先。奥の方から、おっとりとした声が聞こえてきたので、暗さに慣れてきた視界をそちらに向ける。
薄暗さが更に際立つ、視界の先。のっぺりとした座布団に、ちょこんと正座をした人間のおばちゃんが居た。
なんだか、おせんべいを焼くのが、妙に上手そうな印象を受ける見た目をしているわね。
「お邪魔してるわ。あんたが、ここの店員さん?」
「ええ、そうですよ。あなた、メリーさんでしょ?」
「あら、やっぱり知ってたのね」
「もちろん知ってますよ。噂はかねがね聞いてましたけど、やはり可憐で素敵ですねぇ」
「そ、そう。ありがとう」
この駄菓子屋には、初めて来たというのに。どうやら、容姿まで細々と知れ渡っているらしい。もはや私を知らない人なんて、この商店街に居ないんじゃないかしら。
「それで、今日は何をお求めで?」
「そうねぇ……」
事前に、食べたい駄菓子はピックアップしてきたものの。こうも大量にあると、視線を横に滑らせるだけで、食欲がどんどん移り変わっていってしまう。
私が食べようとしていたのは、『うんめぇ棒コーンポタージュ味』、『ベビースターダストラーメン』、『わさびのり次郎』の三つ。
しかし『酢だこ四郎』、『ジャーキーするめ』や『カルパッス』。『焼どんどん』、『サイダー餅』、『串カステラ』も捨て難い。
小腹を満足させたいなら、ポン菓子の『ニンジン』、『サンダーブラック』、『ポテトフライチキン』、『こぉ~んポタージュ』を攻めるのもアリね。
「もう、全部食べてみたいわ」
「ふふっ。見かけによらず、食いしん坊さんなのねぇ。焦らなくても、お菓子は逃げないですよ」
「うっ……。た、確かに」
そう、おばちゃんの言う通りだ。いくら欲望を膨らませても、ここに並んだ駄菓子は決して逃げ出さない。むしろ、いつでも食べてくれと待ち構えている。
だったら、焦る必要はない。何度もここへ通い、その日に食べたくなった物を食べればいい。絶えぬ欲望の赴くままにね。
「なあ、あれ! メリーお姉ちゃんじゃね?」
「あっ、本当だ!」
「え?」
突如として、室内の薄暗さを吹き飛ばしかねない、明るい声が背中を押してきたので、後ろを振り返ってみれば。
白光を纏う入口に、嬉しそうな笑顔をした男女の子供が、私に指を差しながら立っていた。
嘘でしょ? 一応、色んな人間と会話をしているから、ある程度は顔を知られているけれども。あんな子供にまで、私の存在が周知されているっていうの?
そんな、私に興味津々の二人が、ビチョビチョの傘を傘立てに置き。共に走りながら近づいて来ては、ワクワクした表情で私を見上げた。
「なあ、あんた! メリーお姉ちゃんでしょ?」
「ええ、そうよ。こんにちは」
「やっぱ本物だ! すっげー!」
「わぁ~っ、キレイ~!」
改めて問い詰めてきた子供に、挨拶を返すや否や。二人して目をギンギンにさせて興奮し出してしまった。
私って、子供達の間では、どんな存在として知れ渡っているのかしら? 本物と言われたし……。まさか、都市伝説だってバレていないわよね?
「おれの母ちゃんが言ってたんだ! すっげー美人な人が、商店街によく来るって! 見たらすぐに、あんただってわかったよ!」
「あ、あら、そう。そう言われると、なんだか嬉しいわ。お母さんに、ありがとうって言っておいてちょうだい」
「うん、わかった!」
へえ、私が美人。揚げ物専門店のおばちゃんには、可愛いと言われた事があるけれども。美人っていうのは、初めて言われたわ。
私が美人、ねぇ。人間からしてみると、そう見られているんだ。美人って、どう振る舞えばいいんだろう? とりあえずは、いつもの様にしていよっと。
「それでそれで! ここにいるっていう事は、メリーさんお姉さんもお菓子を買うんでしょ? どのお菓子を買うの?」
両手を握り、小刻みに上下へ揺らす女の子も、キラキラと輝かしい眼差しで質問をしてきた。子供っていうのは、なんとも無邪気なのね。
普段だと、泣き喚いている姿しか見ていなかったから、すごく新鮮に感じるわ。
「とりあえず、うんめぇ棒とベビースターダストラーメン、わさびのり次郎を買おうと思ってるわ」
「あっ! おいしいよね、それ! わたしもよく食べてる! 置いてある場所知ってるから、案内してあげよっか?」
「あら、助かるわ。それじゃあ、案内してちょうだい」
「うん! 来て来て、こっちだよー!」
終始笑顔の女の子が、男の子と一緒に駆け出していく。よく食べているという事は、駄菓子についても詳しいはず。
だったら後で、あの子達のオススメを教えてもらおう。そうすれば、次回ここへ来た時に、迷わず駄菓子を買える。
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