林檎を並べても、

ロウバイ

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あの春の日

彼への印象について

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「世の中って不公平だよな」

思わずポツリと溢れた言葉に、ソウがわざわざ反応した。言ってしまってからしまったと思ったが、割った花瓶が元に戻らないように、溢れた水が戻らないように。彼の耳には確実に届いてしまったのだ。俺が訂正を入れるよりも先に、彼は言葉を紡ぐ。

「どうしたの?」

どこからどうみても脈絡のない変な発言。そんなもの、無視すればいいのに。きっと彼は、こういう僻みのような言葉を言われないちゃんとした人間に囲まれて育ったのだろう。変なことを突っ走ったことを後悔しながらも、ソウの疑問に答えを渡す。

「どうもしないさ」
「そうなの?」
「ああ」

それでもなお整った顔を不思議そうに変えて、ソウは未だにこちらを見つめてくる。その視線がどこか気まずくて、俺はゆっくりと顔を背けた。これなら、さっきの複数人からの視線のほうがマシだ。不思議とソウの目力は、両手の指の数を超える人数からの視線の量と匹敵するほどの重圧感を持っていた。

「…なんでこっち見てくるんだ」
「ふふ、トキって面白いなって。弄り甲斐がある」

俺が目を逸らしてもなお、ニマニマしながらこちらを覗き込んでくるソウに、ちょっとした不信感が湧く。

変な奴。

俺の頭の中にはその簡潔な三文字が浮かび上がった。
よく分からないが、どんなイケメンでも一つぐらい癖があるのだろう。無くて七癖あって四十八癖なんてことわざがあるぐらいだしな、と高校三年間で無駄に培ったことわざを頭の中で披露してみたりした。
間違っても、さっきみたいに口に出したりはしない。

ちょっと変わったとんでもないイケメン。

ソウの第一印象と言えば、それぐらいだ。
その時限りで交流は終わるかと俺は思っていたが、予想は裏切られるもので、ソウとは長い付き合いになることとなる。
それも途中で形を変えて。
その時の俺はまだ何も知らなかったのだ。
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