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07.賭け方とはったり
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しばらく続けたところ、とうとう客の手持ちのチップがなくなってしまった。
「はい、終了」
ヴァレンが宣言すると、全員が大きく息を吐き出した。
結果は圧倒的にチップを獲得したのがヴァレン。しばらく離れてからブラム、アルン、コリンの順だった。
チップが尽きてしまったのは、客だけである。
「ヴァレン兄さん……役自体はそんなにすごくなかったのに、圧倒的ですね……」
ブラムが感嘆の吐息を漏らす。
「重要なのは賭け方だからね。きみも結構、はったりが上手かったよ、ブラム君。アルン君はちょっと真面目すぎたかな。コリン君はもう少し強気でもよかったと思うよ。ああ、チップに使った飴玉はきみたちにあげるよ。風邪気味のティム君にも分けてあげてね」
和気あいあいとしたヴァレンと見習いたちの横で、どんよりと客は沈み込む。
「どうして……こんなに……」
「だって、あなた弱気すぎ。勝負に参加しなくても、場代としてチップは減っていくんだし。勝てそうなときは大きく賭けて、そうでないときは小さく賭けるっていうのが基本だよ。せっかく良い役が結構きていたのに、さっさと降りてばっかりだったもの」
おそらく、一番良い役が多かったのは客だ。
それなのに、ヴァレンやブラムがはったりでチップを上乗せしていくと、すぐに降りてしまっていた。
「賭け事やるんだったら、あなたはまず、はったりを覚えたほうがいいんじゃないかな。まずは形から、堂々と背筋を伸ばすとか、真っ直ぐに前を見据えるといったように、強気に振る舞う姿を身につけていったらどうだろう」
「なるほど……」
客は感心したような呻きを漏らす。
「賭博場を潰したこともあるというあなたの技は、賭け方とはったりなのですか?」
「……いや、潰していないから。出入り禁止になっただけだし……」
こめかみを指で押さえるヴァレン。
「ただ、賭け方とはったりは基本中の基本。俺が実際に出入り禁止になったときにやったやり方は、主に確率計算。今回はかけらも使っていない」
「……奥が深いのですね……」
「でも、俺がやったやり方までたどり着かなくていいと思う。賭け方とはったりで、仲間内程度の賭け事なら十分通用するんじゃないかな。他にも引き際とかいろいろあるけれど……まず、さっきも言ったとおり、あなたは強気に振る舞うよう心がけることから始めたほうがいいと思う」
ヴァレンの言葉に客は頷き、瞳を尊敬の色に染める。
「じゃあ、次はどうしよっか。とりあえずお勉強したから、やる? いちおうここ、娼館だし」
酒という手もあるが、飲み比べをするような酒の飲み方では、おそらく床入りは無理になってしまうだろう。
今までヴァレンは飲み比べをした後、床入りをしたことは一度もない。全て相手が潰れた。
「えっ……?」
客が目を見開き、ややあって頬を染めて俯く。
「そ……その、実は……初めてなんです……」
「ああ、大丈夫。俺に任せて」
ヴァレンはのんびりと頷く。
白花らしくないとか色気がないなど言われるヴァレンだが、四花にまでなっているのだ。経験のない相手を導くことくらい、お手の物である。
「あの……痛くないですか……?」
「はい……?」
小さな声で尋ねてくる客をヴァレンはまじまじと見る。
顔を赤く染め、大きな身体をもじもじとさせる姿はまるで恥らう乙女のようだ。ごついが。
ヴァレンの頭の中で、しきりに警鐘が鳴り響く。
確かに突っ込む側も場合によっては痛いことがある。しかし、痛いかどうかというのは、一般的には突っ込まれる側の心配だろう。
客から視線をそらし、ヴァレンは見習いたちに向き直る。
「……やっぱり、やめよう。酒を教えるよ。……酒、準備して。早く……お願い、早く!」
「はい、終了」
ヴァレンが宣言すると、全員が大きく息を吐き出した。
結果は圧倒的にチップを獲得したのがヴァレン。しばらく離れてからブラム、アルン、コリンの順だった。
チップが尽きてしまったのは、客だけである。
「ヴァレン兄さん……役自体はそんなにすごくなかったのに、圧倒的ですね……」
ブラムが感嘆の吐息を漏らす。
「重要なのは賭け方だからね。きみも結構、はったりが上手かったよ、ブラム君。アルン君はちょっと真面目すぎたかな。コリン君はもう少し強気でもよかったと思うよ。ああ、チップに使った飴玉はきみたちにあげるよ。風邪気味のティム君にも分けてあげてね」
和気あいあいとしたヴァレンと見習いたちの横で、どんよりと客は沈み込む。
「どうして……こんなに……」
「だって、あなた弱気すぎ。勝負に参加しなくても、場代としてチップは減っていくんだし。勝てそうなときは大きく賭けて、そうでないときは小さく賭けるっていうのが基本だよ。せっかく良い役が結構きていたのに、さっさと降りてばっかりだったもの」
おそらく、一番良い役が多かったのは客だ。
それなのに、ヴァレンやブラムがはったりでチップを上乗せしていくと、すぐに降りてしまっていた。
「賭け事やるんだったら、あなたはまず、はったりを覚えたほうがいいんじゃないかな。まずは形から、堂々と背筋を伸ばすとか、真っ直ぐに前を見据えるといったように、強気に振る舞う姿を身につけていったらどうだろう」
「なるほど……」
客は感心したような呻きを漏らす。
「賭博場を潰したこともあるというあなたの技は、賭け方とはったりなのですか?」
「……いや、潰していないから。出入り禁止になっただけだし……」
こめかみを指で押さえるヴァレン。
「ただ、賭け方とはったりは基本中の基本。俺が実際に出入り禁止になったときにやったやり方は、主に確率計算。今回はかけらも使っていない」
「……奥が深いのですね……」
「でも、俺がやったやり方までたどり着かなくていいと思う。賭け方とはったりで、仲間内程度の賭け事なら十分通用するんじゃないかな。他にも引き際とかいろいろあるけれど……まず、さっきも言ったとおり、あなたは強気に振る舞うよう心がけることから始めたほうがいいと思う」
ヴァレンの言葉に客は頷き、瞳を尊敬の色に染める。
「じゃあ、次はどうしよっか。とりあえずお勉強したから、やる? いちおうここ、娼館だし」
酒という手もあるが、飲み比べをするような酒の飲み方では、おそらく床入りは無理になってしまうだろう。
今までヴァレンは飲み比べをした後、床入りをしたことは一度もない。全て相手が潰れた。
「えっ……?」
客が目を見開き、ややあって頬を染めて俯く。
「そ……その、実は……初めてなんです……」
「ああ、大丈夫。俺に任せて」
ヴァレンはのんびりと頷く。
白花らしくないとか色気がないなど言われるヴァレンだが、四花にまでなっているのだ。経験のない相手を導くことくらい、お手の物である。
「あの……痛くないですか……?」
「はい……?」
小さな声で尋ねてくる客をヴァレンはまじまじと見る。
顔を赤く染め、大きな身体をもじもじとさせる姿はまるで恥らう乙女のようだ。ごついが。
ヴァレンの頭の中で、しきりに警鐘が鳴り響く。
確かに突っ込む側も場合によっては痛いことがある。しかし、痛いかどうかというのは、一般的には突っ込まれる側の心配だろう。
客から視線をそらし、ヴァレンは見習いたちに向き直る。
「……やっぱり、やめよう。酒を教えるよ。……酒、準備して。早く……お願い、早く!」
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